キキモカきりんはテキーラがのめない
E親と子
最近やたら耳につく、Kelly Clarksonの歌、「Because Of You」。あまりにも気になるので、
歌詞を読んでみた。不幸な子供時代を過ごし、未だに傷ついている大人の歌だった。
−−−あなたのせいで自分や周りの人が信じられない
あなたのせいで傷つかないように安全なやり方をするようになってしまった
わたしはまだ幼かったのだから
あなたはわたしに寄りかかるべきではないことぐらい分かっていたはずなのに
親は子供に寄りかかって生きるべきではない、と思う。
自分の人生がうまくいかないことの責任を子供にとらせたり、自分がやるべき仕事を子供に
押し付けたりしてはいけない。他人に対してしてはいけないことのほとんどは、子供に対してもやってはいけない
ことだと思う。
わたしは以前塾講師をしていてたくさんの親子を見た。そして、「すごくいい子だな、と思う生徒の
お母さんはみんなすばらしいお母さんだ。すばらしさは違うけれど、どんなお母さんにも共通して
言えるのは、わたしがどんなに経験のない頼りない
先生だとしても、決して見下したりしないことだ。」と以前の日記に書いたことがあるけれど、
結局は同じことだと思う。どんな相手でも一人の人間として尊重できる人は、
子供に対しても基本的には同じなのだろう。もちろん赤の他人と子供とは全く同じではないから、
時にはガツン!と叱ったりすることも必要だろう。でも、そういうことと、子供を小さな人間として
尊重することは両立しうることだと思う。
そして、不思議な力に導かれるように、同じようなテーマの映画、「誰も知らない」をみた。
主演の柳楽優弥くんがカンヌ史上最年少で
主演男優賞を受賞したことでよく知られている。実際にあった子供置き去り事件をモチーフにしているが
、お涙ちょうだいの暗い映画ではない、とどこかで読んだ。
なのに、実際にみてみたわたしは、ものすごーーく落ち込んでしまった。その時は泣かなかったが、
暗い気持ちで寝付いた後目が覚めてしまい、しくしく泣かずにはいられなかった。立ち直るのに丸3日かかり、
それでも悶々として、思ったことを吐き出さずにはいられないくらいに、精神的打撃を受けた。
確かに、あまり悲惨な部分を強調せず、家族のきらきらした瞬間をとじこめたような場面が多い。
泣く子もでてこない。
それでも、わたしには柳楽優弥くん演じる長男の明の悲痛な叫びがずっと聞こえた。どうして僕たちを
捨てるの、学校に行きたいよ、友達が欲しいよ、野球がやりたいよ、お母さんに甘えたいよ、と。
この映画はあまりにも中途半端に終わってしまうので、この後どうなったか知りたい(このお母さんは
ちゃんと罰されたのか?)という思いからネットで検索したら、実際の事件はこれよりもずっと悲惨で
悲しいことがあったというのを知り、より落ち込んでしまった。
そして、「育ててもらうことを当たり前だと思って感謝の気持ちを持たない現代の子供たちにみせて
やりたい」という誰かの書き込みを読んで、アホか、と思った。
子供を家族として受け入れることを決めたなら、育てるのは当たり前じゃん!そして、「子供は親とは別の人格で、
子供には子供の人生がある」、そのことだけは決して忘れてはいけないと思う。だから、子供は親の所有物でも
虚栄心を満たすアクセサリーでも老後の保険でもない。ということは、子供を
育てるということは完全なボランティアだ。見返りを求めてはいけない。でも、心をこめて育てれば
必ず大きな喜びがもたらされる。
親が子供を一人の人格として尊重し愛情を込めて育て、かつ親が自分の人生をしっかり生きているなら、
何も言わなくたって子供は親のことを尊敬するようになる。そういうものだと思う。
わたしにとってこの映画からのメッセージというのは明白で、「親がどんなに非常識で理不尽でも、
子供はそれを受け入れて生きていくしかない」ということだ。明がどんなに「学校に行きたい」とか
「お母さんは勝手だ」と正しいことを言っても、親の絶大なる権力には歯が立たない。置き去りにすると
いう犯罪を犯すまではいかなくても、理不尽に子供を押さえつける親はどこにでもいるだろう。そういう
親こそこの映画から教訓を得るべきなのだ。子供にとって親とは絶対的権力を持つ神にも
等しいもの。でも、どんなに理不尽なことをされても、この置き去りにされた子供たちは、
お母さんが大好きで、彼女の帰りを待ちわびている。
でも、親も人間だから、その時の気分で子供にあたることもあるだろう。理不尽なことを要求して
しまうこともあるだろう。
でも、過ちを犯してしまったのなら、子供に詫びて償えばいいのだ。子供を一人の人間として
尊重するならそれぐらいのことはできるだろうし、そういうことができる親の品格の高さを、
子供は尊敬するようになるだろう。幼くて分からなかったとしても、子供が大きくなった時に、
必ず思い出し理解すると思う。
わたしも今は1歳5ヶ月息子がかわいくてベタベタして暮らしているけれど、「早く自立せいよ〜」と思っている
部分もある。
親の務めは、子供が自分の力で自分の道を歩けるように導いてあげることだと思っている。
そのためには、2つ大事なことがあると思う。ひとつは、自分や周りの人を信頼できるように、
めいっぱい頑張れるように、たっぷり愛情を注いであげること。もうひとつは、実際に社会で生きていく
ための実戦力として、教育を受けさせてあげたり、社会のルールを教えること。だから、子供は
遊ぶことと、勉強することと、甘えることが仕事だと思う(年齢によって比重は変わるだろうが)。
そう思うと、このすべてを奪われていた明は本当にかわいそうだ。わたしは何度も、明を抱きしめ
こう言ってあげられたらどんなにいいだろうと思った。
「よく頑張ったね、もういいよ、明日から生活のことは心配せずに学校に行って、思いっきり
勉強したり、友達と遊んだり、野球をしてもいいよ」と。
Kelly Clarksonの「Because Of You」の歌詞を読むと、「大人になってからは自分の責任。人の
せいばかりにするな」と思う人もいるかもしれないが、そんな簡単にいかないから、苦しいんだと思う。
実際、「誰も知らない」の明のモデルになった少年は、わたしと同じくらいの年。きっと彼は
今でも戦っているに違いない。
Feb 22, 2006
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