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BORNEO RAINFOREST
ボルネオ島の熱帯雨林の森について
モドル
008 - パームオイル開発に伴う諸問題
09/04/2009

前回から取り上げているマレーシア&インドネシアで生産されているパームオイル。
今回は、生産現場で起こっている様々な問題について紹介させて頂きます。

最近はパームオイルの大規模な農園開発による森林の著しい減少が、欧州などで注目を浴び、 無秩序な生産を批判する声も世界各地で上がるようになってきました。 日本でも以前、某メーカーの洗剤のCMでパームオイルを使用しているから環境にやさしい洗剤です、と いう表現が使われ問題になった事もありますが、残念ながらまだまだ日本では <パームオイル=環境にやさしい>というイメージが浸透しているように見受けられます。

しかし生産現場では下記のような問題を抱えているのが現実です。

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1. 熱帯雨林の森と生物多様性の消失
世界で生産されるパームオイルの9割近くは、 地球上で最も生物多様性が高いと言われる低地熱帯雨林が分布する マレーシアとインドネシアで生産されており、 パームオイル・プランテーション面積は、この約20年の間に マレーシア、インドネシア共に約30倍にも広がっており、 サバ州だけでもここ十数年で少なくても約70万ha以上の熱帯雨林が消失しています。 インドネシアでもプランテーションの7割以上が熱帯雨林の森を転換したもので、 国立公園や、生態学的に価値の高い地域においても不当にプランテーション開発が 行われ問題になっています。森林減少により多数の哺乳動物、爬虫類、鳥類などが消失すると言われており、 サバ州でも僅かに残された森に、オランウータンやボルネオゾウ、スマトラサイなど 多くの動物達が追い込まれており、現状のままでは50年後には野生化のオランウータンや ボルネオゾウ達は絶滅すると研究者が発表しています。


2. 人間と動物達との間での摩擦
森林の減少により飢えた状態の野生動物たちも多くなっており、 食料を求めて農作物を荒らすようになり、農園のオーナーに動物達が射殺されたり、 人間と動物の間のトラブルが頻繁に起こるようになっています。
サバ州では毎年十数頭以上のボルネオゾウがパームオイル・プランテーションのオーナー達により 射殺されていると地元の人に聞きました。ゾウはアブラヤシの実も好んで食べるそうで、 森林の減少により食糧が不足し、パームオイル・プランテーションに侵入し食べるのだそうです。 プランテーションではゾウが侵入しないよう高圧電線を張り巡らせていますが、それにより、 ゾウ達の移動経路が遮断されてしまい、食べ物を求めて移動できなくなったゾウ達が飢えて死んで しまう事も。また最近では食べ物を求めてオランウータンまでもがプランテーションに浸入し、 アブラヤシの実を食べているところが多く目撃されています。

3. 深刻な森林火災
特に深刻なのはインドネシアです。1997年〜1998年にインドネシアで発生した大規模な森林火災は、 パームオイル・プランテーションの整地のための火入れから生じたものであると指摘されています。 この火災により、インドネシアではおよそ200万haもの広大な森が消失し、1000頭以上の オランウータンが焼死したと言われています。インドネシアでは、1997年に、火入れによる整地は 法律により禁止されたのですが、依然として違法な火入れが後を絶たず (整地をするには焼いてしまうのが1番手っ取り早く、コストがかからないからだそうです。) 今もなお森林火災を引き起こしていると言われています。インドネシアの森林火災により、 シンガポール、マレーシアでは人々の健康被害も出るヘイズ(煙害)問題が深刻で、 今も解決されていないままです。


4. 二酸化炭素の大量放出(地球温暖化の加速)
インドネシアでは泥炭地がパームオイル・プランテーション開発の ために焼かれているため、年間20億トンもの二酸化炭素を放出してしまっています。 アジアの泥炭地(低地雨林)には、世界の化石燃料利用料の100年分に 相当する炭素が蓄積されているのですが、これらがパームオイル農園開発のために どんどん放出されているのです。インドネシアの公式統計に基づく 二酸化炭素排出量の国別ランクは世界で21番目なのですが、 泥炭地からの排出量を含めると世界第3位になってしまうそで、 これらの排出量は、英国やドイツの排出量の数倍にものぼり、 京都議定書により 温室効果ガス排出を削減しようとする先進国の 努力を帳消しにしてしまうほどの量だそうです。
CO2削減!温暖化ストップ!と言うのなら、先ずは世界中がインドネシアでの 違法伐採&泥炭地のパームオイル・プランテーション転換の問題を協力し て解決していかなければならないのでは・・・。 この問題は、インドネシア、マレーシアだけで済む問題ではありません。


5. 土地をめぐる紛争/地元住民の権利の侵害
プランテーション開発にあたり、土地をめぐる紛争がインドネシアでもマレーシアでも 後を絶ちません。代々そこで農業を営んできた先住民族の土地が、何の説明もないまま、 何の保証もないまま開発されてしまう事も多く、先住民族と開発業者の間で衝突が起き、 死傷者も多数出ています。 また、森林に依存し生活をしてきた先住民族の経済や文化、彼らのコミュニティ社会の 不安定化などの影響も問題になっています。このような紛争はインドネシア、サラワク州で 多く起こっています。


6. 農薬汚染&水質汚染&土壌浸食
パームオイルの生産には、先進国では使用を禁止されているパラコートという除草剤などの農薬が使用されています。 これらの農薬は近隣の川や海などにも流出し、汚染された川では 魚達が死んだり、土壌汚染も見られ、農作物が育たなくなったりと、 周辺の生態系の影響や、食物連鎖への影響も懸念されており、 プランテーション労働者だけでなく周辺住民へも健康被害をもたらしています。 パラコートは毒性の強い除草剤なのですが、軽作業であるこれらの農薬散布は 女性労働者が行う事が多く、鼻血、皮膚病、爪の障害や、潰瘍などの発生、 不妊や奇形児などの問題も生じていると言います。


7. 労働問題
パームオイル・プランテーションで働いているのは近隣諸国から出稼ぎに来ている労働者が殆どなのですが、
低賃金で過酷なノルマを課された労働、危険で劣悪な労働環境、 児童労働、健康被害、不法労働者の搾取(貧困国からの人身売買問題を含む)や、 多発する事故など、多くの問題を抱えています。
マレーシアでは、パームオイル・プランテーションでの労働は、もっとも事故の多い セクターとなっています。


8. メタンガス大量発生 (地球温暖化の加速)
パームオイルの製造過程で出る廃液および残渣から大量のメタンガスが発生し空気中に放出されています。
メタンは炭酸ガスの21倍もの温暖化効果を持っています。そのメタンガスが、 マレーシアのパームオイル産業から年間20万トン以上放出されています。炭酸ガスに換算すると 年間400万トン以上もの温室効果ガスが放出されていることになります。

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と、長文になってしまいましたが、そのくらいの問題を抱えています。
これでも「環境にやさしい植物油」と言えるでしょうか・・・?言えないですよね・・・。

もちろん<パームオイル自体>は海や川に流れ出た際、環境負荷の少ない成分です。
年間を通して安定供給が可能で、食品に使っても風味を損なわないなど、様々な利点もあります。
このパームオイル産業のおかげでインドネシアもマレーシアも潤っているのも事実です。
たくさんの人々がおかげで仕事を得て暮らしている、とても大事な産業でもあります。

パームオイルが悪いと言いたいのではありません。パームオイル産業が衰退すれば良いとも思ってません。
上記のような問題を解決しないまま、やみくもに生産し続けるのは問題かと思うのです。
これでは70〜80年代の無秩序な森林伐採の繰り返しに過ぎません。
生態系は一度崩壊すると元に戻すのは不可能に近いです。失われてからでは遅すぎます。

しかし、2004年8月、 パームオイル生産者、製造関係者、小売業者、金融機関などパームオイルに関わる様々な機関が参加して 持続可能なパーム油生産のための国際日整理団体 RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)「持続可能なパーム油のための円卓会議」 がスイス(チューリッヒ)に設立されました。

日本ではまだまだ参加企業が少なく知名度もありませんが、 環境への負荷の軽減、絶滅危惧動物の保護、農園での労働環境の整備や人権の擁護などなど、 会議を重ねるたびに厳しい環境保護の基準が制定され、現在では、 原生林および保護価値の高い土地で開発を行ってはいけないという条文も盛り込まれ、 持続可能な循環型社会の実現に向けて活動が行われています。

今後は、日本企業もどんどんRSPOに参画し、RSPO加盟のパームオイル生産者からのパーム油のみを 使っていくといった広がりに期待。木材のFSCマークのようにパームオイルにもRSPO認証マークを つけ、消費者もそのマークの入ったものを選ぶなど、日々消費している消費者も一体となって、 持続可能なパーム油産業の設立を目指していければ良いな、と思います。

<メモ>
パームオイル。 日本では現在年間およそ60万トン近くがマレーシアから輸入され消費されています。
その80〜90%近くが食用に使われています。 インスタントラーメン、マーガリン、スナック菓子、レトルト食品、冷凍食品、加工食品に使われる油、 ファーストフードの揚げ油などです。 残りの10〜20%近くが洗剤やシャンプー、石鹸、化粧品やインクなどに使われています。

輸入量の90%(食用分)を人口で割ると、国民1人あたりのパームオイルの消費量は年間3.7kg。
パームオイルの生産量は1haにつき年間3.83トンですので、 日本人は1人につき、年間およそ10平方メートル(10m x 10m)の森を消費している計算になります。

1t=1000kg。1ha=10,000u。
3.83トン(3,830kg)÷3.7kg=1,035。
1ha(10,000u)÷1,035=9.66u。

2008年度の日本人の人口は約1.3億人。
日本人だけで13万haものマレーシアの森を食べている事になります。
13万haと言うと、東京ドームが4.6haらしいので、130,000÷4.6=28.260・・・。
東京ドームの2万8千倍です。しかし・・・、それでも想像がつきません。
私たちはそれほど広い森を破壊して作られたパームオイルを消費しているわけです。

「こんなところにも!?」と驚くほど、様々な製品に使われているので、 パームオイルを使わない生活を送るのは、ほぼ不可能です。 また、使わなければ上記の様々な問題が解決するというワケでもありません。
ただ、インスタント食品に頼った食生活を見直し、食事はきちんと安心食材を購入し、 手料理をする。
添加物だらけのインスタント食品やスナック菓子を控える事は、体にも良い事です。
本当に環境や体によいのは、手作りの安心料理。そして油でも、紙でも、洗剤でも、水でも、電気でも、
無駄遣いは控え、大切に使うことで全体の消費量を抑える事なのではないか?と思います。

家族の健康につながる毎日の食事の用意を担っている主婦の皆様。
どうか日々の食事でインスタント食品や冷凍食品に頼り過ぎず、
安心食材を使って良い食事を出来るだけ用意していきましょう。
家族の健康も、環問題も、台所から繋がっているそうです。

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