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ボルネオ島の熱帯雨林の森について
モドル
009 - サバ州の森
23/05/2009

さて今回は、現在残されているサバ州の森について書かせて頂きます。

サバ州はボルネオ島北東部に位置しており、州面積は北海道と同じくらいとなっています。 (左記地図の赤色部分です。)
州都 Kota Kinabalu (コタキナバル)には、ボルネオ唯一の国際空港もあり、日本からの直行便も 就航しているため、気軽に来れるネイチャーアイランドとして近年人気の観光地となっています。

1970年代前半は、州面積の86%が熱帯雨林の森で覆われていましたが、日本企業による木材の 大量伐採により、原生林(元々あった森)はたった5〜6%程しか残されていません。 また伐採後に広がった二次林も2005年頃は州面積の60%ありましたが、今度はパームオイル農園の 開発により日々森が減少し、今は50%を下回ったと言われています。

近年、インドネシア領(カリマンタン)、サラワク州でも、大規模な森林伐採&農地転換により、 森が恐ろしいほど失われており、ボルネオ全体で豊かな生態系を残す森は僅かしか残されていないのですが、 そんな中にあって、サバ州には既に絶滅したジャワゾウの子孫としてその希少さが注目されている ボルネオゾウや、絶滅寸前のスマトラサイ、ボルネオ・オランウータンや、 ボルネオテナガザル(ボルネオ・ギボン)、ボルネオ固有種のテングザルや、バンテン牛、 サンバーディア(水鹿)やマレーグマ、そして幻と呼ばれているウンピョウなどなど、 ボルネオの中でも他には見られない多種多様な生態系が僅かに残されています。
しかし、迫り来るパームオイル・プランテーション開発の波に、貴重な生態系が崩壊の危機に直面しています。



上記はグーグルアースの衛星画像(サバ州上空)です。
熱帯雨林の森(濃い緑色)の部分が、僅かしか残されていないのが一目瞭然です。
薄い緑色は全てパームオイル・プランテーション。

多くの生き物たちは、プランテーションで分断されてしまった狭い森の中に閉じ込められています。
研究者によれば、今のままでは多くの動物達は子孫を残せず(遺伝子学上)数十年内に絶滅するそうです。
(血が濃くなるので生き残れないそう。)

プランテーション開発から、この貴重なボルネオ島の生態系を守ろうと、サバ州政府が 保護価値のある土地を森林保護区や野生生物保護区に少しでも指定しようと努力しており、 サバ州内での保護区は、私が移住してきた2004年に比べると確実に増え続けています。 2004年当初、サバ州内の保護区は13%しかありませんでしたが、 2007年には15%、現在は17%まで拡大しています。


◆ サバ州内の保護区紹介 (2009年5月現在) ◆


● 海洋保護区
 ・ シパダン(12ha)
 ・ ランカヤン(30,000ha)
 ・ マンタナニ・クチル(61ha)
● 森林保護区(Yayasan Sabah)
 ・ ダナンバレー自然保護区 (43,800ha)
 ・ マリアウ・ベイスン自然保護区(39,000ha)
 ・ インバック森林保護区(30,000ha)

● 国立公園(Sabah Parks)
 ・ クロッカーレンジ国立公園(139,919ha)
 ・ キナバル公園(75,370ha)
 ・ トゥンクアブドゥル・ラーマン公園(4,020ha)
 ・ タワウヒルズ公園(27,927ha)
 ・ タートルアイランド(1,740ha)
 ・ ティガ島(15,864ha)

● 野生生物保護区(野生生物局)
 ・ キナバタンガン野生生物保護区(27,800ha)
 ・ クランバ野生生物保護区(20,682ha)
 ・ タビン野生生物保護区(122,539ha)

● 森林保護区(森林局)
 ・ ウル・スガマ森林保護区(17,650ha)
 ・ キナバタンガン森林保護区(40,471ha)
 ・ デラマコット商業保存林(55,083ha)

● Virgin Forest Reserved(原生林保護区)
 ・ 計 90,386ha


上記のようにサバ州には、いくつかの森林保護区や野生生物保護区が残されているのですが、これらの保護区 が繋がっていないため、多くの野生生物たちは限られた狭い森の中に閉じ込められた状況になっています。

中でも深刻な状況なのが、サバ州を東西に流れる、州最長のキナバタンガン川流域です。
動物達の多くは、この川沿いを移動しながら暮らしてきたのですが、川岸の森は開発してはいけないという 法律があるにも関わらず、残念ながらあちこちでパームオイル・プランテーションが開発されており(私有地も たくさんあるため)、この地域にある10の野生生物保護区(Kinabatangan Wildlife Sanctuay)、 そして8つの森林保護区がプランテーションによりパッチワークのように分断されてしまっています。

↓下記はキナバタンガン沿いの野生生物保護区 LOT1〜LOT8までの地図(上空画像)です。



黄色部分が Kinabatangan Wildlife Sanctuary (野生生物保護区)で、オレンジ部分が原生林保護区です。
水色部分がキナバタンガン川です。

キナバタンガン川周辺も、ほとんどパームオイル・プランテーションが進出しているのがお分かり頂けると 思います。このように野生生物が暮らしていた森が、あちこちで分断されているのです。 パームオイル・プランテーションに囲まれて、昔のように長距離間を移動できなくなってしまった 動物達は、明らかに飢えています。
少なくなってしまった僅かな森では十分な食料が得られず、食べ物を求めてパームオイル・プランテーションに 浸入しアブラヤシの実を食べたり、地元住民の農園の作物を食べたりするようになり、 害獣扱いされ銃殺されたり、罠にかかり致命的な傷を負うなど、人間と動物達の間で痛ましい衝突が 頻繁に起こるようになりました。


↑パームオイル・プランテーションに入り込み、無我夢中で実を食べるボルネオゾウ。

上記のようにキナバタンガン川流域では、森が分断され縮小してしまった事で、高確率でボルネオゾウや、
オランウータンなど人気の動物達の姿を目撃できるようになり、スカウ村やビリット村で行われている リバークルーズが観光客の間で人気となり、多くの観光客が訪れるようになりました。 野生のボルネオゾウやオランウータンに遭遇し、感動的な体験をし、思い出深いボルネオでの ご旅行をたくさんの方々が楽しまれています。

しかし…。
どうか皆様、ただ野生の動物達に会えた事を喜んでお終いになさらないで下さい。キナバタンガン・エリアで 私たちが目にしているのは、狭い森に閉じ込められてしまい、絶滅の危機に日々近付きつつある動物達の 姿なのだと言う事を、是非、たくさんの方に知って頂きたいと思います。

そして彼らの命を奪っているのは、私たちが日々、消費しているパームオイルという植物油が原因だと いうことも是非お知りになり、ご帰国後、お買い物の際に、買おうと手に取った製品の成分表に 「植物油」または「植物性油脂」と書かれていないか見てみて下さい。

私たち日本人は年間1人につき、約4リットルものパームオイルを消費しています。 4リットルのパームオイルを生産するには、100平方メートルのパームオイル畑が必要です。 1億二千万人の人口全員の1年間に必要なパームオイルを生産するには127万8千haと、想像も出来ないほど 広大なパームオイル農園が必要となるのです。日本のパームオイル輸入量は現在は年間約60万トン。 その殆どがマレーシアから輸入されています。
中には、このキナバタンガン川周辺のプランテーションで生産されたものも含まれていることでしょう。

彼らと出会い、素晴らしい感動を与えてもらったなら、年間約4リットル消費しているパームオイルを 生産するのに必要な100uの森を、是非、彼らにお返ししてあげてみて下さい。
彼らに出会えなくても、この地で生産されているパームオイルを私たちは日々消費しているのですから、
消費した分の森を彼らにお返ししてあげましょう。

今、サバ州野生生物局と、BCT(BORNEO CONSERVATION TRUST)などより、パームオイル・プランテーションにより 分断されてしまったキナバタンガン川沿いの土地を買い戻し、動物達が昔のように自由に移動できるように、 「緑の回廊」を作ろう!というトラスト活動が行われています。

分断されてしまった森と森とを繋ぐことが出来れば、数十年後に絶滅すると言われているこの地域の オランウータンやボルネオゾウ達は絶滅の危機から回避することが可能になります。

現在は、LOT1〜LOT3〜パンギ森林保護区の間が繋がるよう、これらの間の土地購入を目指しています。
詳しくは下記、「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」のサイトをご覧下さい。

NPO法人 BCT (ボルネオ保全トラスト)ジャパン

皆で消費した分のパームオイルを生産するのに必要な面積の土地を、少しずつでもお返ししていけば、
緑の回廊は必ず実現することが出来ます。だけど皆が消費するばかりのままでは、森を繋ぐどころか、
今後もどんどん奪い続け、いずれは動物達も死に絶え、ボルネオの豊かな自然も失われてしまうことでしょう。

何も難しいことはありません。
使った分だけ<緑の回廊の土地購入資金>として少しお返しするだけです。
そうすることで、パームオイル産業(人)と野生生物(自然)との共生、必ず実現できる事だと思います。
緑の回廊プロジェクト、是非、皆様もご参加下さいね。

モドル

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