松本ちえこ妊娠騒動


今のご時世ならば、人気アイドルの妊娠、できちゃった結婚は、そう珍しくもない事でしょう。 しかし、歌謡曲が全盛だった頃の昭和の人気アイドルたちにとっては、異性との交際はご法度でした。 なぜならば、異性との交際=即スキャンダルにつながることを意味していたからです。 外見がワイルドなアイドルでさえ、異性関係においては清いままであることを要求されたのです。  

わたしは、子どもの頃から芸能情報には人一倍関心がありました。 芸能人の話題を扱っていたテレビ番組(アフタヌーンショー、3時のあなた、3時にあいましょう)はかかさず見ていましたし、スポーツ紙の3面記事もかかさずチェックしていました。 しかしながらその当時は、アイドルの恋愛ニュースはまったくなかったと断言できます。 山口百恵と三浦友和のカップルは別として(沢田研二とザ・ピーナツのエミさんもありました)、トップアイドルの異性関係のニュースは見たことも聞いた事もありませんでした。 そのため、松本ちえこの妊娠騒動は、かなり衝撃的な事件でした。 

インターネットで、「松本ちえこ、妊娠」で検索をかけて調べてみました。 20数件のサイトが検索と一致しましたが、わたしのようにあの当時の事を覚えている方も多かったものの、こと細かく詳しく書かれているサイトはありませんでした。 理由としては、松本ちえこのアイドルとしての位置づけが今ひとつ弱かったこと(B級)、今のようにインターネットもなく、その手の情報はテレビと週刊誌くらいでしか得られなかったこと、が考えられます。

松本ちえこは資生堂のバスボンシャンプーのCMで一躍人気者になりました。 CMの内容はうろ覚えで確実ではないのですが、CM最後の場面で、彼女がバスタブから立ち上がり、胸が見えそうで見えないような演出だったと思います。 歌手としては「恋人試験」や「ぼく」がヒットし、人気アイドルの仲間入りも果たしました。 当時小学生だったわたしの周りでは、ファンの人はいませんでしたが、わたしより年上の人には人気が高かったようです。 高校生だったいとこのお兄さんは「松本ちえこ、かわいいんだよな〜!!」と言っていました。 

この妊娠疑惑騒動は、彼女の人気が一段落した頃に飛び出したような気がします。

人気アイドルの妊娠疑惑ですから、マスコミが黙っているはずはありませんでした。 瞬く間に週刊誌やテレビのワイドショーでも大きく報じられ、一大センセーションを巻き起こしたのです。 妊娠となると当然「お相手」が存在するわけですが、それは一体誰だったのか? わたしの記憶が間違っていなければ、その相手は「あのねのね」の清水邦明さんと報じられていたと思います。 また、疑惑釈明会見も行われなかったことも、妊娠疑惑をさらに一層強くしてしまったような気がします。 「お相手」と噂された清水邦明さんは、騒動の渦中でものらりくらりとした感じで、否定もせず肯定もせずのようなスタンスを取り続けていました。 そのせいか、わたしは清水邦明相手説を長年信じていて、松本ちえこの妊娠もあながち嘘ではないだろう。。と思っていたのです。 この妊娠疑惑騒動で、松本ちえこの人気は急降下。 しばらくしたら、彼女の姿はブラウン管から消えてしまいました。

  あるサイトでは、「あの時の妊娠疑惑は婦人科の病気だったらしい」と書いてありました。 それが事実だと思います。 今と違って、未婚の女性が気軽に産婦人科を受診できるような時代でもなかったこと、宇多田ひかるさんのようにマスコミに対して自身の婦人科系の病気のことを発表できるような時代でなかったことも、このような疑惑を生んでしまった原因だと思います。 あの当時、彼女の妊娠疑惑騒動を「そんなはずがない」と思っていた人も多かったでしょう。  わたしが思うには、「大人しそうな顔をしながら、実は裏の顔を持っている」というタイプの女子が、松本ちえこさんのイメージとぴったりだったことも、妊娠疑惑が一気に広がってしまった要因だと思っています。 クラスに一人はいましたよね。 それほど美人でもないのに、裏では結構男性関係が派手な女の子。 地味そうで、実は結構遊んでいる女の子。 「松本ちえこ」のイメージって、そんな感じのアイドルだったと思うのです。 そのためか、悪い噂程度で終わるはずだった疑惑も、彼女から漂ってくる「なんとなくどこかで何かやっていそう」というイメージのせいで、噂に火がついた瞬間に爆発してしまったのだと思います。

彼女が表舞台から姿を消してしまってから何年か経ったあと、テレビの深夜映画で彼女が出演しているのを発見しました。 その映画は宇宙戦艦ヤマトでお馴染みの松本零士さん原作の映画で「 元祖大四畳半大物語」という作品でした。 この映画には演歌の前川清、金妻でブレークする前の篠ひろこ、ガッツ石松らも出演しており、松本ちえこの役柄は同じアパートに住んでいた女の子だったと思います。この映画では、彼女と主人公の濡れ場がありましたが、これがとーーってもいやらしくて、びっくりしてしまいました。 「ベッドシーン」ではなく、あえて「濡れ場」と書いたのは訳があります。 カビ臭い4畳半の部屋に敷いてあるせんべい布団の中でのHだったからです。 このシーンがもう実にリアルで。。。 それまで大あくびしなら見ていましたが、ここで目が覚めました。 なんというか、演技くさくなくて、自然で上手いな、と変に関心してしまったのです。 わたしが松本ちえこに対して感じていた「地味だけど、裏では男関係が派手そう」というイメージは、意外と当たっていたのかもな。。とこのシーンを見ながら感じました。

彼女のヒット曲『恋人試験』の歌詞の中で、「0点とる人許さない 100点とる人大嫌い 知っているのにわざと間違える 65点の人が好き」という箇所、松本ちえこ自身にも当てはまるような気がしました。