好きな映画
最近全くと言っていいほど映画を見ていない。
昔は「スクリーン」「ロードショー」「ぴあ」を愛読していたので、それなりに流行りの映画を観ていた。
スケジュール帳にはノルマのごとく今月観る映画のリストを作成していた。 しかしそれは80年代の話であって90年代以降は数えるほどしか映画は見ていない。 悲しい事にその多くは子供向けアニメ映画なのである。
ひねくれた性格のため、ラストが「みんな仲良くハッピーエンド」という作品はあまり好きでない。 どちらかと言うと人生の不条理を感じさせる作品が好きだ。 また死と隣り合わせの状況を描いた作品も好き。
10代の頃は邦楽から洋楽へ音楽の好みが変化したが、映画もそれまでのたのきん映画、アニメ映画(松本零士もの)からフランスのヌーベルバーグ作品、アメリカンニューシネマ作品、その他名画を観るようになった。
ヌーベルバーグ作品では「気狂いピエロ」「勝手にしやがれ」「太陽がいっぱい」に圧倒された。 アメリカンニューシネマは「真夜中のカーボーイ」と「卒業」で走るダスティン ホフマンに感動。 「ローズマリーの赤ちゃん」では妊娠するのが怖くなった。「明日に向かって撃て」「俺たちに明日はない」の壮絶なラストは悲しかった。 イギリス映画では「時計仕掛けのオレンジ」。 暴力シーン満載のトリップ映画だがスタンリー キューブリックの描く世界に次第に感化されていく自分が怖くなった。 イタリア映画では「ベニスに死す」「ひまわり」「地獄に落ちた勇者ども」など。 ビスコンティの貴族的な美的感覚と退廃的香りのする映像に酔いしれた。 どの国で製作されたかわからないがオリビア ハッセー主演の「ロミオとジュリエット」は現代的な解釈がされており古典ものとは違う味わいがあった。
このような映画は全て60年代から70年代に製作されたものなので、上映している映画館を探すのも一苦労だった。 情報誌ぴあをチェックして上映しているところを探すのだが、ほとんどが早稲田、大井町、水道橋の小映画館ばかり。 リバイバル作品なので上映場所はイマイチ不便な所が多かったが鑑賞料金が安かったのが唯一の救いだった。
ゴダールの「気狂いピエロ」は一番好きな作品だ。 60年代の作品だが非常に洗練された映像で今観ても全く古臭くなくとても新鮮に感じる。 ゴダールは難解なストーリーやセリフで有名だが、この作品も例に漏れずそうである。 作品自体が小説やなんらかの引用から成り立っており、一度見ただけでは何がなんだかさっぱりわからないのだ。 まずはパンフレットを購入して前もってストーリーを理解しておく必要がある。 この映画の主人公はアンナ カリーナとジャンポール ベルモンドだが、アンナ カリーナの存在感は強烈でこの映画は彼女のために製作されたと言っても過言ではない。 天使と悪魔が共存しているような彼女の一挙一動に観ている側は翻弄されてしまう。 彼女の意図している事は何なのか?
映画のラストで彼女はジャンポールに殺され、ジャンポールは顔に爆弾を巻き付け自爆してしまう。そして最後の映像では海に落ちて行く太陽が映し出され、ランボーの詩の一章が朗読されているのだ。 こんな風に。
もう一度探し出したぞ。
何を? 永遠を。
それは太陽と番った
海だ。
この映画を見る為に同行してくれた友人Nさんは「何がなんだかさっぱりわからなかった」とひどく怒っていた。 わたしは不思議な余韻がいつまでも残り、後に一人で何度か映画館に出掛けたものだ。 今はCGによる映像処理、大袈裟なアクションなどでその時は一時的に楽しめても、もう一度観たい!と思わせる作品は非常に少なくなってきていると思う。
今一番観たい作品は「イージーライダー」。 なぜか未だにこれだけは観ていない。 他のアメリカンニューシネマはほとんど観ているというのに。 いつか観る日を楽しみにすることにしよう。 最後のお楽しみと言う事で。
13/10/2002