Janis Joplin
1943年1月19日生−1970年10月4日没
あたしはステージで2万5千人と愛し合えるのに・・・、それからたった一人でホテルに帰るのよ
1970年に入ると、60年代に一斉を風靡したアーチスト達が相次いで亡くなる悲劇が起こりました。その中の一人がジャニス ジョプリンです。 麻薬の過剰摂取のためハリウッドのホテルの部屋で亡くなっているのを発見されました。
同年9月に亡くなったジミ ヘンドリクスと同じ27歳の若さでした。
わたしは高校時代に60年代ロックの洗礼を受けました。 周りの友達がその当時流行りの音楽に夢中になっている時、それに逆行した形で60年代ロックにのめりこんでいました。 わたしが気に入って聴いていたものはほとんどが男性のバンドでしたが、唯一紅一点だったのがジャニス ジョプリンです。初めて「Summertime」を聴いた時、身体に電流が走るような衝撃を受けました。最初のギターのイントロ、それからジャニスのボーカルが入るところは今聴いても感動して鳥肌が立ちます。 この作品は1968年、ジャニスが25歳の時のもので、ガーシュインの名作を彼女独自のブルース解釈で歌い上げたものです。
その昔、ベット ミドラーが映画「ローズ」でジャニスらしき人物を演じました。 内容は一部違っているものの、ジャニス ジョプリンの伝記映画でしょう。あの映画を見てもわかるように、ジャニスの人生は孤独、薬、アルコールで埋め尽くされていたように思います。 彼女はどんなに有名になっても、名声を得ても孤独からは逃れられませんでした。 全米で名前が知られるようになったあと地元の高校の同窓会に出席しますが、そこでも心から彼女に接してくれる友達はいなかったようです。
彼女は66年にテキサスからサンフランシスコへ移り、Big Brothers & The
Holding Companyに誘われ、そこのリードシンガーになりました。 そして翌年の1967年にあの伝説のロックコンサート「Monterey International Pop Festival」に出演します。 ステージでシャウトしながら熱唱する姿は観客から大喝采を受け、その後バンドと彼女の名前は全米中に知られるようになりました。 このバンドでは名作「Cheap Thrill」を発表しましたが、バンドの中でジャニスだけに焦点が当たるようになるにつれて、バンド内で不和が生じ、68年、ジャニスはバンドを脱退します。
彼女のステージはテレビで観たことがありましたが、その衣装がとてもカッコよいのです。 手首にはいくつものブレスレット、首には長いビーズらしきネックレス、髪の毛にはカラフルな羽の髪飾り。 60年代末の雰囲気を見事に感じさせるスタイルではありますが、アクセサリー(決して高価ではない)をジャラジャラつけて熱唱するその姿は、まさにロッククイーンでした。 決して美人ではありませんが、ステージで唄う彼女は美しく輝いていました。 その瞬間は誰もが彼女に恋し、彼女もそれに応えます。 しかし一旦ステージが終了すると一人淋しく残されるのは彼女だったのです。
わたしがジャニス ジョプリンを聴きはじめたのは17歳の時で、自分と周りの友達との間に見えない壁のようなものを感じ初めていた多感な頃でした。 元々親に相談するようなタイプではなかったし、かといって仲の良い友達に打ち明けるような話題ではなかったので、一人でこのもやもやした気持を抱え込んでいました。 そんな時にジャニス ジョプリンに出会い、彼女の唄声にショックを受け、彼女の境遇に共感し、彼女の短かった人生に涙したものです。
ジャニスは1曲熱唱するごとに完全燃焼していたように思います。 だから今聴いていても全く中途半端な印象は受けないし、すがすがしく思えます。 しかしながら完全燃焼したあとにその埋め合わせをするのに必要だったのが、彼女の場合アルコールとドラッグだったのかもしれません。
ビッグブラザーズ&ホールディングカンパニーを脱退したあと、やっと念願の自分のバンドFull Tilt Boogie Bandを結成しましたが、名作「Pearl」のレコーディング中、ハリウッドのホテルで亡くなっていたのを発見されました。 彼女の側には封を切る前のマルボロ、手にはそのつり銭4ドル50セントが握り締められていたようです。 「Pearl」にはビルボードで1位になった「Me & Bobby McGee」が収録されていますが、どの曲も完成度がとても高く捨て曲は一切ありません(断言)。 ただ後にCDで発売されたものにはボーナストラックとして何曲か追加されています。 わたしとしては追加せずにオリジナルのままでだしてほしかったです。 ジャニスが急死してしまった為にボーカル抜きで収録された「Buried Alive In The Blues」など傑作が多く収録されていますが、中でもわたしが一番好きな曲は「Get It While You Can」です。 一番多感な頃にこの曲に出会えて本当によかったと思っています。
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