Almost Famous


誰にでも大事にしまっておきたいもの、大切にしておきたいものがあると思いますが、
この映画「Almost Famous」は、わたしをそんな思いにさせる素敵な作品です。

日本語タイトルが「あの頃ペニーレインと」なのですが、どうしてそのまま原題を使用しなかったのか残念でなりません。まあ、それは置いといて。 ご存知の方も多いと思いますが、この作品はキャメロン クロウ監督が音楽雑誌ローリングストーン誌の最年少ロックライターとしてロックバンドの取材をし、記事を書いていた頃の物語です。 主人公をウィリアムとし、その時に出会ったバンド、ペニーレインをリーダーとする所謂グルーピーではなくバンドをこよなく愛しその音楽も愛するBand Aidの女の子達、ウィリアムに影響を与えた大人達、を絡めて、ウィリアムがひとまわり大きく成長していく物語だと思います。

また60、70年代ロックを愛する人にはたまらない場面も多く登場し、さすがロックに強いキャメロン クロウ!とわたしをうならせたBGMの選曲はどれも渋いものばかりです。 特に印象的だった場面をいくつか挙げてみます。

☆ウィリアム少年のお姉さんがスチュワーデスになるために家を出る時に流れる曲がSimon&Gerfanklの「America」。 旅立ちにふさわしい曲だと思います。

☆ウィリアム少年がお姉さんから譲り受けたレコードを聴き、ロックの世界に目覚める時にかかるのがThe Whoの「Spark」。 なんて心憎い選曲だ!と感心しました。わたしもこの曲でロックに目覚めたかったですね。 また『Tommy』のLPレコードジャケットにお姉さんからのメッセージが添えてあって、そこには「Tommyを聴く時にはキャンドルに灯をともして聴くこと。 あなたの未来が開かれるはず」と書いてあります。今度わたしもろうそくに火をつけて聴いてみようかな(笑)。

☆ペニーレインとラッセルが初対面し、握手を交わすシーン。 ここでペニーレインはラッセルに恋をしてしまうのですが、その時のペニーレインのややはにかんだ表情がとっても素敵です。

☆バンドメンバー、Band Aidの女の子達が移動バスの中でElton Johnの「Tiny dancer」を合唱するシーンがありますが、ここは映画の中で一番感動的で大好きな場面です。 もちろんわたしも一緒に唄います。

☆それまでのバス移動から飛行機での移動に代わるシーンがありますが、その時にバンドメンバーが飛行機に向かって歩いていく時にかかる曲がジミ ヘンドリクスの「Voo Doo child」。 この名曲をこんな使い方をするなんてもったいな気もしますが、キャメロン クロウ監督さすが!です。

この映画ではStillwaterというバンドが登場します。 ウィリアムはこのバンドが大好きで彼の部屋にはバンドのポスターが貼ってあるのですが、これはAllman Brothers Bandの「At Filmore East」のポーズとうりふたつなのです。ABBファンのわたしとしてはもうこれだけでたまりません。 ラッセルというギタリストが登場しますが、彼はデュアン オールマンと全く同じポーズで左側に座っています。ラッセルを演じた俳優さんがまたなんとなくデュアンに似ていてこれまた嬉しかったりして^^。 Stillwaterは俳優が演じている架空のバンドですが、ピーター フランプトンからロック道の教えを受けただけあってそのライブシーンは本物のミュージシャン顔負けの迫力ある演奏を聴かせてくれます。

ウィリアムにロックジャーナリストとしての教えを説き、時には適切なアドバイスを与える伝説のロック ライターレスター バングズ。 彼はウィリアムに「ロックライターとして成功したいのならばロックミュージシャンとは友達にはなるな。 常に真実を書く事、時には無慈悲になることも必要だ」と諭します。そして今ロックは重大な危機に直面していると警告します。時は1973年、ロックが次第に産業化していくことを危惧していたのでしょう。

その他では、Tシャツ問題で一悶着起こすシーンがありますが、そのTシャツにプリントされたメンバーのポーズは、まさにFreeのアルバムジャケットとうりふたつ。 まあ、こんな細かいとこまでいろいろ凝る事ができるのは、キャメロン クロウ監督ならではでしょう。

とにかく70年代ロックを愛する人には必見の映画です。
よくありがちなロックミュージシャンとグルーピーの話=暗い、と思われがちですが、この映画に限ってはそんなことは全くありません。見終わった後には爽やかな気持にさえなります。登場人物全員が愛すべきキャラクターなのです。

18/12/2001