Sid Vicious
1957年5月10日−1979年2月2日

Oh we're so pretty, Oh so pretty, (We're a) VACANT
どうだい、俺達はイカスだろ でも中身はカラッポだぜ!【Pretty Vacant】


レコード時代に買っておけばよかった・・と今でも強く後悔しているのがThe Sex Pistolsの「Never Mind The Bollocks. Here The Sex Pistols」です(日本語タイトルは"勝手にしやがれ")。 当時はジャケットが黄色でとても目立っていましたが、CDではなぜか赤っぽくなっていました。この年齢になるとさすがにピストルズのCDを買う気は起こりませんが、もし10代の多感な頃に聴いていたらどのように感じていたのかなあとよく思います。

そのピストルズのベーシスト、シド ビシャス。シドこそが本物のキチガイで、本物のピストルズだった、ことは多くの人が認めていると思います。演奏テクニックが特に優れている訳でもなく、ロックを語る上での重要人物でもないのだけれども、パンクの王道を極めた、と言うか、これぞパンクスと言った目茶苦茶でアナーキーな人生を全うしたことで今でも一部のファンからはカリスマ的存在として崇められています。ボーカルのジョニー ロットン(ジョン ライドン)も挑発的なパフォーマンスでかなり過激でしたが、シドと比較するとジョニーさえもが「そこら辺にいる普通の人」に見えてしまうのです。

シドを語る上で欠かせない人物、それはシドの恋人だったNancy Spungenで す。シド以上に狂暴でジャンキーだったナンシー。この二人はお神酒徳利のような関係で、互いに罵り合い、傷付け合いながらもほとんどいつも一緒に行動していました。この二人の凄まじい、かつ救いようのない絶望的な関係は、映画「Sid & Nancy」で観ることができます。そもそもわたしがシドのことを書こうと思ったのは、昔この映画を観たからでした。それまでは知識として、シドはジャンキーで、恋人を刺殺し、最後は自らもドラッグ中毒死したとんでもないヤツ、くらいの認識しかありませんでした。また、それ以上彼の事を知りたいとも思わなかったし、知る機会もないと思っていました、この映画を観るまでは。

この映画は1986年イギリス製作で、シドをあのゲイリー オールドマン、ナンシーをクロエ ウェブが演じています。特にゲイリー オールドマンはシドにそっくりで、斜めから見た顔がとても良く似ていてるのです。この映画は、かなりシド寄りに描かれているので、本当のところはどうなのかわかりませんが、わたしはこの映画でかなり彼の見方が変わってしまいました。映画でもシドはジャンキーでどうしようもない人物なのですが、一方、どうしようもなく弱くて、どうしようもなく寂しがりやで、どうしようもなく愛に飢えていた一人の孤独な若者の姿がそこにありました。ステージではアナーキーを気取った「Sid Vicious」、それ以外ではパンクファッションで身を固めた孤独な若者「John Ritchie(本名)」だったのです。

シドを愛した人間はナンシーただ一人で、ナンシーを愛した人間はシドただ一人でした。ヘロイン中毒でぼろぼろになりながらも、いつも二人で身体を寄せ合い孤独から身を守ろうと必死でした。けれども、精神的、肉体的に極限状態に来ていた二人は、ふとしたはずみでケンカをし、シドはナイフでナンシーを 刺してしまいます。そしてナンシーの死。
シドにとってナンシーとは、恋人であり、ジャンキーであり、世間から孤立した同志のような存在でした。時には母のような優しさと愛情もシドに与えました。そのナンシーが死んでしまった(殺してしまった)のです。

ミュージシャンとしてのシドは、それほど、否、ほとんど評価されていないと思います。ミュージシャンとしてよりも、そのハチャメチャな生き方の方で評価(?)されているのだと思います。シドはナンシーの死後、自殺未遂を図り、ついにはヘロイン中毒死してしまうのですが、世間の人々になんらかの影響を与えた人物というのは時代の変わり目に亡くなることが多いような気がします。シドは1979年2月に亡くなりました。77年にピストルズに加わってわずか2年めのことです。70年代最後の、ある意味大物であり、一世を風靡したシドの死でした。

シドの「My Way」はフランク シナトラの同名の名曲を一部歌詞を替えて唄っています。その歌詞はとても痛快で、思わずニヤリ。

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