有事法制について誤解されている2、3のことがら
誤解5 有事法制がないと日本が攻撃されても自衛隊が反撃できない
真実 現行の自衛隊法でも反撃は出来ます。有事法制(自衛隊法改正案)で変わるのは、
総理大臣が出動命令を出すことを防衛庁長官が予測すると、自衛隊は個人の土地・家屋を含めた日本の国土を
自由に使って陣地をつくることができるようになる、武器も使えるということです。その土地や陣地は米軍に提供することも、政府は否定しません。
現行の自衛隊法でも、武力攻撃があった場合だけでなくそのおそれのある場合にも、
内閣総理大臣は自衛隊に出動を命ずることが出来ます。
内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、
わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認(衆議院が解散されているときは、
日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下本項及び次項において同じ。)
を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。ただし、特に緊急の必要がある場合には、
国会の承認を得ないで出動を命ずることができる。(現行の自衛隊法 第七十六条第一項)
防衛庁長官は、出動命令が出されると予測される場合は、出動待機命令を出すことができます。
長官は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測
される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、
自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる。(現行の自衛隊法 第七十七条)
さらに、海上保安庁も自衛隊の指揮下で防衛にあたります。
内閣総理大臣は、第七十六条第一項又は第七十八条第一項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、
特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。
(現行の自衛隊法 第八十条)
もちろん武力行使も出来ます。
第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。
(現行の自衛隊法 第八十八条)
自衛隊法の改正で変わるのは、防衛出動命令が予測される段階から日本の国土を自由に使えるようになることです。
現行の自衛隊法では、出動命令が予測される段階では防衛庁長官が「出動待機命令」をだしますが、改正案では予測の段階でも、
「自衛隊の部隊を展開させることが見込まれ、かつ、防備をあらかじめ強化しておく必要があると認める地域があるときは」内閣総理大臣の承認を得て
陣地などの防衛施設を構築できるようになります。(自衛隊法改正案 第七十七条の二)そのために土地を使用することはもちろん、展開予定地域内
で武器を使用することも(自衛隊法改正案 第九十二条の三)できるようになります。
自衛隊は防衛施設構築のためという理由で、海岸、森林、公園、都市、道路などにかんする法律を守らずに行動できるようになります。適用が除外されたり特例が認められ
たりする法律を列挙してみると、以下のようになります。
消防法、医療法、漁港漁場整備法、建築基準法、港湾法、土地収用法、森林法、道路法、土地区画整理法、
都市公園法、海岸法、自然公園法、道路交通法、河川法、首都圏近郊緑地保全法、近畿圏の保全区域の整備に関する法律、
都市計画法、都市緑地保全法
さらに、参議院特別委員会での外務大臣とのやりとりで、この土地や防衛施設を米軍に提供する可能性もあることがわかりました。
2003年5月20日の委員会議事録
○筆坂秀世君 (前略)有事三法案の一つ、自衛隊法改正案では、予測事態の段階で陣地を作れることになっていますね、法案では。
この土地は米軍に提供することが大きな目的の一つになっているんじゃないですか。
(中略)
○筆坂秀世君 去年の五月七日、川口外務大臣がこうおっしゃっていますよ。「今後の検討課題の、どういう分野でということでございますけれども、
対米支援、あるいは日本政府が米軍へ陣地として使用される施設・区域をより迅速に提供ができるような、あるいは緊急通行についても今後検討して
いく必要がある」とあなた答弁されているじゃないですか。
○国務大臣(川口順子君) 先ほど申しましたように、米軍に対してどういう支援を行っていくかということはこれから検討していくと
いうことを申し上げたわけでして、そういう意味では検討の課題の一つであると思います。必要であれば日米地位協定に従って考えてい
くということで、委員の御質問の、それが米軍への地位、自衛隊がその基地を、施設を求めて、それを米軍に渡す、貸す予定ではないか
という御質問については、そういうそのような具体的なことを今申し上げているわけじゃなくて、
これは具体的な今後の検討課題であるということです。