夜空の希望 - ふたご座流星群



2004年12月14未明、最も見えやすくなるという。今年は月明かりもなくみやすいらいしい。

その日の夜はオーストラリアから一時戻ってきている友人と渋谷のバーで軽くビールを飲んだ。
同じ分野を海外で学んできたため、話が合う。しかも、生意気で偉そうな自分の意見がスーッと言えてしまう。

飲み終わり、大学に戻り、もう一仕事しようとするがなかなか頭が働かない。
<今夜は流星のピークだっけ>
なんとなくいつもより10分ほど早く切り上げて、キャンパスの中を上を見上げながら歩く。
<雲は少しあるけど、光害のないところだったら割りとみえるんじゃないかな。>

いつもより少し早かったせいかまだ急行があった。それでも、いつもように満員の中に押し入り、揺られる。
<ふー、なんとかしなきゃ>

駅から、スーと耳を切り抜けるような冷たさの空気の中を、肩をすぼめ手をポケットに入れ歩く。
もちろん、上、空を見て。
<きれいに星はみえるんだけどな。どっちかな>
いつも歩きなれた道をゆっくり期待して。

普段どおり道沿いに曲がり家に向かうが、ふと、
<あっちに公園があったな。中学校をまわって帰るか>
と、今来た道を少し戻り公園にむかう。
中学の卒業式の時、その公園の上まで階段を上って、そこで解散した。
<何年前だ。>
<あの時は公園を造ったばっかだったけ。>
いくつかのベンチは朽ち壊れていたが、公園はきれいに整備されていた。
今夜はやけに外灯の明るさが目に付き、邪魔に感じる。
座って空をみるが明かりが気になり、落ち着いて見れない。

階段を降り、その下の中学校に入る。
<変わってないな>
少しは周りの明かりが空間に溶け込み希薄する。
その瞬間、そこの空間は自分が中学の時のまま。
グランドのいつもの場所にサッカーゴールが立っている。
おそらくあの時と同じサッカーゴールなのだろう。
あっちこっちが痛んで、錆びが目立つようになっていた。
ずーっと、グランドに立ってんだからな。
<強えーな>

ポールをポンポンと手のひらでたたき。
あの時のようにポールに背をつけて、スーと下がり地面に座る。
鞄から眼鏡を出し、頭をポールによっかけて仰向けになって、空をみる。

"スー"
と左上を右から左にきれいに輝く銀色の光が駆け抜ける。
一瞬だ。
でも、なんか時が止まっている。
いつも間にか、頬が緩んでいる。
なんなんだろう。
力が抜け、ホッとうれしい。
1時半過ぎ。
いつも休憩していた下駄箱の階段に移し、もうちょっと粘ろうと。
今度はなかなかみれない。
そんなにあまくはないか。
でも、今まで首から肩にかけて張っていた痛みが抜けている。
不思議だな。

帰るか。
中学の時、毎日通った道を。
なんとなく変わった感じはするが、同じだ。

もう少し、希望を期待して夜空の先を見て坂をゆっくり上る。


2004.12.14.
山内潤一郎