今、夜が一番明るい時期。
静寂の中、私は思いっきり深呼吸をして、泳ぐ。一息で泳げるだけ泳ぐのが私のいつものやり方。息も絶え絶えに滴り落ちる水を払いのけ、顔を空に向けながら深呼吸をする。酸素が体の隅々まで一瞬のうちに行き渡るのが良く判る。相変わらず辺り一面は何の音もしない。遠くに電車の音が聞こえてきた。蛍は益々、元気に飛び交っている。下から上昇する時、光を放つ事が良く判る。芝生から、湧き出るように光っている。空にはこうもりらしい鳥も音もなく、パタパタと羽をはばたかせて右に左に忙しそう。高く聳え立つ木々の葉っぱは、あくまでも優しく影絵のように風に揺れている。 何故か、時間が止ってしまったような錯覚を感じる。自分がここにいる事さえ不思議に思えてくる。自分はここで一体何をして、何を考えているのか。
幻想的な夜の入り口で途方もなく、最果ての空に想いを馳せてみる。そこにも、様々な人達がそれぞれの人生を送っているに違いない。時を越え、遥か遠くの空を眺めながら想う事は結局人は、その人らしい生き方しか出来ない。それは、もしかしたら、もう生まれる前から決まっていて、どうしようもない運命に逆らえず、その中で人間はさまよっているのだろうか?そしてこの私も。 取り止めのない想いを胸に秘めながら又思いっきり、深呼吸をして魚になった気分でもう一泳ぎ。 7/7/1999
管理人
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