ロシア(旧ソ連)関係レポ船事件



総 論

第11幸与丸事件 第18和晃丸事件 第35功洋丸事件
第12誠良丸事件 第五日東丸事件 第65秀栄丸事件




総 論

ロシア(旧ソ連)関係レポ船事件
 「レポ船」とは、ロシア国境警備隊等の情報機関員から、だ捕、罰金、臨検等の際に働き掛けを受け、又は利益を得る目的で自ら進んでロシア国境警備隊と連絡を取り、我が国の政治、外交、防衛等の各種情報(資料)や電気製品等の金品をロシア側に提供する見返りに、ロシアが実効支配している北方領土周辺海域の領海において、ロシア側の承諾の下に、銃撃やだ捕を受けることなく安全に操業できることを認められた漁船のことをいう。
 昭和52年の200海里規制に藉口して、旧ソ連(平成3年12月にロシア連邦に国名変更)は、日本漁船に対し、だ捕攻勢を強めるとともに、形式的かつ軽微な違反に高額な罰金を科するなどしてレポ船団を微募し、密漁を容認するなどして、アメとムチを使い分けながら、各種情報を収集していた。
 レポ船の検挙は、平成3年11月の「第65秀栄丸」事件以来ないが、ロシア連邦国境警備庁は、旧ソ連時代の組織を引き継ぎ、依然として対外諜報活動を任務としているほか、「レポ船」工作は、その時々の国際情勢や日ロ関係などの諸要因が反映するといわれることから、対日情報の一手段として、伝統的手法により水面下で「レポ船団」を形成しているものとみられる。


レポ船事件


 第11幸与丸事件 ●昭和49年12月4日北海道警察検挙
 この事件は、
  「第11幸与丸」船長 A
が、ソ連国境警備隊の指示により、我が国の情報やテープレコーダー・等の物品をソ遂に提供していたレポ船事件である。
 Aは、北方海域において漁業を営む者であるが、昭和47年5月、択捉島沖合で操業中、ソ連国境警備隊の警備艇に横付けされ、ソ連主張額海内での安全操業の見返りとして、沖縄返還に関する記事の掲載された新聞の持参を指示された。
 その後、昭和49年11月末までの間に計11回にわたってソ連と接触し、
 o 北方墓参団名簿
 o 根室のカニ・雑刺網操業船名簿
の要求を受けて提供したほか、テープレコーダー等を不正に持ち出していた。また、北海道に駐留する自衛隊の規模、隊員名調査の指示を受けるなど、徐々にその要求はエスカレートしていった。ソ連側との連絡は、他の乗組員を船倉に閉じ込め、Aのみがブリッジで接触する方法をとっていた。
 北海道警察釧路方面本部は、昭和49年12月4日、Aを逮捕した。Aは、昭和50年5月15日、根室簡易裁判所において、検疫法、漁業法違反で罰金5万円の判決を受けた。


 第18和晃丸事件 ●昭和55年1月9日北海道警察検挙
 この事件は、
  漁業経営者 A
  「第18和晃丸」船長 B
らが、ソ遂国境警備隊の指示により、我が国の情報や露文タイプライター等の物品をソ遂に提供していたレポ船事件である。
 Aは、昭和42年8月、国後島沖で密漁中ソ遂国境警備隊にだ捕され、2年の懲役刑を受けてサハリンの刑務所に収容された。Aは、それまで一四回だ捕されていたが、5回目のこのとき初めてソ遠の情報機関員から身分や経歴等「レポ船主」としての適格性を詳しく調査された上、「レポ船主」になることを求められた。Aは、ソ遠に対する協力を誓約した後、刑期半ばの昭和43年8月釈放され帰国した。
 その後、Aは、防衛年鑑、政府発行公刊資料、新聞のほか、北方領土返還運動、右翼の動向、自衛隊の装備や演習の状況、治安機関の動静についての情報収集を指示され、これらの情報、資料をソ連に渡していた。また、昭和54年9月25日と30日ので回、第28和晃丸でひそかに色丹島に行き、その際、北海道内で購入した露文タイプライター等の物品を不法に輸出した。
 さらに、Aは、自ら操業する漁船のほか、他人の漁船についても自この指揮ドにある漁船としてソ連から安全操業の保証を取り付け、これらの漁船の船主から漁権高の約110パーセントをりベートとして納めさせていた。そのりベートは、昭和52年から54年までの間に9000万円近い額に上り、このうち約三分の一をソ連に上納していた。
 北海道警察釧路方面本部は、昭和55年1月9日、Aらを逮捕した。Aは、昭和55年年4月14日、根室簡易裁判所において、検疫法、北海道海面漁業調整規則違反で罰金20万円の判決を受けた。

第18和晃丸事件



 第35功洋丸事件 ●昭和57年12月29日北海道警察検挙
 この事件は、
  「第35功洋丸」船主 A
          船長 B
らが、ソ連国境警備隊の指示により、我が国の情報をソ連に提供していたレ水船事件である。
 Aは、北方海域において漁業を営む者であるが、昭和三七年以降、ソ連国境警備隊と連絡をとり、ソ連主張領海内での安全操業の見返りとして、自衛隊の配備状況等の情報を提供していた。
 北海道警察釧路方面本部は、昭和57年12月29日にBを、昭和58年4月1日にAをそれぞれ逮捕し、Aは、昭和58年4月13日、釧路簡易裁判所において、検疫法違反で罰金1万円、Bは、昭和58年3月17日、釧路地方裁判所根室支部において、北海道海面漁業調整規則違反で懲役1年、執行猶予4年の判決を受けた。


 第12誠良丸事件 ●昭和59年12月6日北海道警察検挙
 この事件は、
  漁網修理業 A
  「第12誠良丸」船長 B
らが、ソ連国境警備隊の指示により、我が国の情報や露文タイプライター等の物品をソ連に提供していたレポ船事件である。
 Aは、北方海域において漁業を営む者であるが、昭和56年6月ころからソ連国境警備隊と連絡をとるようになり、ソ連主張領海内での安全操業の見返りとして、昭和58年8月までの間に8回ソ連と接触し、
 o 自衛隊の配備状況や演習動向
 o 政府要人の来往状況
等の情報を提供したほか、露文タイプライター等を不正に持ち出していた。 北海道警察釧路方面本部は、昭和59年12月6日、A及びBを逮捕した。昭和59年12月16日、根室簡易裁判所において、Aは漁業法違反で罰金15万円、Bは検疫法、漁業法違反で罰金10万円の判決を受けた。



 第五日東丸事件 ●昭和60年9月18日北海道警察検挙
 この事件は、
  「第五日東丸」船長 A
らが、ソ達漁業規制局の指示により、我が国の情報をソ達に提供していたレポ船事件である、
 Aは、北方海域において漁業を営む者であるが、昭和60年5月、国後島沖合で操業中、ソ達漁業取締船からボートで乗り移ってきたソ達漁業規制局監督官と密会し、ソ達士恨領海内での安全操業の見返りとして、
 o 北方領土返還運動の動向
 o 根室漁業協同組合所属漁船の動向
 o 目ソサケマス交渉に伴う根室漁民の反応
 o 目ソ親善協会会員の動向
等に関する情報を提供した。
 また、その10日後、ソ達漁業規制局監督官から、ソ達主張領海内に設置されていた根室市の漁民所有のカレイ刺網の引揚げを指示され、この刺網150反及び網にかかっていたカレイ約100万円相当を窃取していた。
 北海道警察釧路方面本部は、昭和60年9月18日、Aを逮捕し、Aは昭和61年4月25日、釧路地方裁判所において、窃盗、検疫法違反等で懲役1年6月、罰金10万円の判決を受けた。



 第65秀栄丸事件 ●平成3年11月27日北海道警察検挙
 この事件は、
  「第65秀栄丸」船長 A
らが、ソ連国境警備隊の指示により、我が国の情報や電気機器をソ連に提供していたレ水船事件である。
 Aは、北方海域において漁業を営む者であるが、昭和63年ころからソ連国境警備隊と連絡をとるようになり、ソ連主張領海内での安全操業の見返りとして、右翼団体等の情報を提供したほか、パソコン等の電気製品を不正に持ち出していた。
 ソ連との連絡は、直接洋上で接触するほか、無線を通じてラジカセで暗号音楽を流して知らせるなどの方法をとっていた。
 北海道警察釧路方面本部は、平成3年11月27日、Aを逮捕した。平成4年2月25日、釧路地方裁判所において、Aは北海道海面漁業調整規則違反で懲役5月、執行猶予4年、罰金10万円の判決を受けた。