1996年11月ごろのこと
私は、とあるメーカに勤務している。ここでは、以前はコンピュータを開発していて、私もその一員だったのだが、バブル経済崩壊後、コンピュータを作るということはしなくなった。すこしずつ仕事の内容が変ってきた。
それ自体は、それほど困ったことではないのだが、私の所属する組織自体がおもしろくなくなってきた。やはり、私としては新しいものに挑戦する、新しいものを作る、新しいものを取り入れる...といったことをやって行きたい、が、そういうことはあまり求められていないのが悲しい。
というわけで、仕事は忙しくても、頭は暇なわけである。あまり、頭を使うような仕事もない。
そうこうしていた1996年の9月ごろ、インターネットで偶然「翻訳者募集」というWebページを見つけた。そのときには、「あぁ、そんな職業もあるのね」と思ったぐらいだった。
しかし、11月ごろになって、再び「何かおもしろいことはないかなぁ..」と思い始めた。実は、私は今までに2年ほどの海外滞在経験がある。かといってそれほど英語が得意なわけではないが、翻訳ぐらいはできるだろうと、軽く考えてしまった。
ちょっと試しにWebで、翻訳に関するページを探してみた。このころは、まだ、それほど翻訳関係のWebページはなかったが、いくつか見つけてサンプルなどを見てみた。「うーん、これならいけるかも」
結局一番最初に見つけた「翻訳者募集」のところをよく読んでみることにした。
この会社のWebページを読んでいると、翻訳者は登録制で、仕事があるときに連絡があって仕事をもうらうようだ。私は翻訳についてはまったく素人で業界のこともよくわかっていなかったので、そんなものかと思った。とりあえずは、特にどこかに出勤する必要などなくSOHOで仕事ができるようだ。メインの仕事は会社があるので、どこかに出勤するようなことはできない。
と、だいたいの説明を読んだので応募してみることにした。
応募方法だが、2段階に分かれていた。
という感じだ。とりあえず、適当なところを選んでメールしてみた。しばらくすると、1次審査は合格なので2次審査用の原稿を送るとのこと。これもメールで送られてきた。それを訳してメールで送り返した。また、しばらくすると合格した旨のメールが送られてきた。こう書くとわりと簡単に合格したようだが、送られてきた原稿の内容はけっこう真剣に調べた。とくに知らない言葉(専門用語)などあったのでいろいろな媒体で調べた。
合格した後は、自分に関するいろいろな情報を登録してもらうためにメールした。いろいろな情報といっても、住所、氏名をはじめ、翻訳の得意分野、翻訳料の希望などだ。
翻訳料といっても、どのぐらいが相場かとかまったく知らないので、特に希望はなし、としておいた。
[to be continued...]