五月雨
ある日, 本心が降りてきて
ずぶ濡れな僕に「つまらない」とこう言った
それが聞こえなかった僕は
雨に打たれながらずっと傘を探し續けていた
本心は雨に打たれながら僕の後をずっとついてきた
別に何をするでもなくまるで雨に打たれるのが
嬉しいかの樣に笑いながら
ふと空を見上げると電線には一匹の小鳥
悲しそうに泣いている
突然降り始めた五月の雨は
僕等には冷たすぎた
この雨が降り始めた頃皆と飛び立てなかった小鳥は
一人で飛び立とうとして深い傷を負ってしまう
もう大好きなあの娘ともあの空を飛び回る事も出來ず
何も出來ず悲しくて死んでしまう
結局雨がやむまで傘を見つけられなかった僕に
本心は泣きながら小さな傘を差しだしてきた
何も言わず受け取る僕を見て
「つまらない」とこう言った
雨の中でひとりぼっちの僕と
群からはぐれて傷ついた小鳥
突然降り始めた五月の雨は
僕等には冷たすぎた
やっと雨がやみ明るい光が空から差し み始める頃
小鳥は土の上に冷たい體で橫たわっていた
あの日あの時あの場所にあの雨さえ降らなければ
小鳥は今頃皆と一緖に大空を飛び回っていたんだろう