#10「中田英寿」
もうすぐワールドカップ。
私は中田英寿がすごく好きだ。
理由はとにかく、「視野の広さ」につきる。
サッカーの試合中、自分や相手の位置をよくわかってパスを出すこと。
今の自分の立場や地位を第三者的によく理解して、ビジョンをもっていること。
彼は前のワールドカップが終わって、イタリアに場を移した。
彼はそこで、サッカーを覚え、イタリア語を覚えた。
さらにその上、日本では学べないたくさんのことを覚えたに違いない。
そして、このワールドカップでは「nakata.net cafe」というプロジェクトを立ち上げるに至った。
たくさんの海外からの訪問者のために、情報を行き来させるための場。
私自身が海外を旅行したときに、必要なのはとにかく「情報」だった。
電車の臨時便があるとか、どこのスーパーが遅くまで開いているとか。
日本にいたら当たり前に入ってくるような情報が、とにかく大切なものだった。
彼も、そういう外部から来た者にとっての「情報の価値」をよく理解していたに違いない。
もし、私にそれだけの経済力があっても同じことをしたと思う。
その情報交換はお互いに有益なものとわかるからだ。
一時的には、その時情報をもらったものが得をするように見える。
けれど、あとから情報交換をする術を知っているだけで、
次に旅行をするときには、今度は助けてもらえる可能性も大いにありうる。
だから非常にお互いにとって有益なのだ。
彼は本当に、「考えている人」だと思う。
私は彼のマスコミに対してそっけない、こびないところが好きだ。
けれど、喜んでNHKイタリア語講座に出演していた。
彼自身はイタリア語の勉強に受講していて、いつか出ることを楽しみにしていたとか。
好きなこと、必要なことを自分で取捨選択する、その能力。
サッカー選手の寿命は短い。30歳を超えたら選手としては難しい、くらいになる。
それから後のことを考えて税理士の資格を取るための勉強をしてたところ。
彼はサッカーに対して本当に真摯で一直線だと思う。
その一方で、つねに他の道や可能性を見ることを忘れていない。
その一本道にのぼせていない。
そんな姿がいつも私の目を惹きつけてやまない。
これからも、彼にはイタリアでおいしいワインを飲んだり、パスタを食べたり。
休みがあればアムステルダムに飛んだりしながら生活を楽しんでほしいと思う。
もっと、日本の若い人がしなやかに、柔軟に海外で活躍してほしい。
できれば私もそうなりたい。だからあこがれてやまない。
とにかく、彼はそいう意味で先駆者、パイオニアだ。
位置的にはイチローや小野の一歩前で、オノヨーコや緒方貞子の一歩後ろくらい。
でも、やっぱりこの時代の突破に見えて仕方がない。
だから私に、彼は漠然とした希望を抱かせるんだろう。
これからもそのスタイルで、自分の思う方向へ流れて行ってほしいと思う。
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