#3 「恋人」

   恋人と別れた友だちが言っていた。
   一番つらいことは、その日あったくだらないことを報告できないこと。
   ちょっと考えたくだらないことを話せないこと。

   日常を過ごしながら、自分たちはイロイロなことを見たり、聞いたり、考えたりする。
   そしてそのことをなんとなく、脳のニューロンの間に挟みこんでいたりする。
   自分たちのニューロンの間には、たくさんの話が詰まっているということになる。
   いつまでも話を詰めつづけることは、多分しんどい。

   恋人とはそのニューロンの間に詰まった話を吸収してくれる存在なのかもしれない。
   もちろんそれだけではないのだが。
   しかし、友だちに言うにしては難すぎたり、逆にオチがなかったりする話。
   そういう場合には、自分の言うことに耳を傾けてくれる存在が必要なのだ。

   無条件に自分を受け入れてくれる存在、というとかなり考えが甘いけれど。
   それに親ともまた違う存在であるわけだし。

   そういう観点から「恋人」を考えると心あたる節が私にもある。

   私にとってこのHPこそが恋人なのでは?
   という疑惑である。
   私はこのページ上に自分の日常や考えをこうやって公開している。
   それは、誰も読んでいないかもしれないけれど、読んでるかもしれない。
   誰も受け入れてくれてないかもしれないけれど、受け入れてくれているかもしれない。

   誰かに受け入れてもらっていたのなら、涙が出るくらいうれしい。
   その人の前でひざずいて、足に抱きついて大きな声で泣けるくらいに。
   でも、実はその”受け入れ”はどうでもいいことなのかもしれない。
   こうやって考えたことを、文章で表したりすること自体が重要なのだ。

   話が随分とそれて来てしまっているが、私にとって、恋人に話をすることと
   HPを更新するという行為は等価なのだろう。
   といっても実際はどうなのか分からないけれど。

   恋人とか本当に懐かしい響きだ。
   

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