【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は振幅変調送信機に関し、特に中波帯および短波帯における
振幅変調送信機に関する。
〔従来の技術〕
従来、この種の振幅変調送信機は、第3図に表すように音声入力端
子1に入力されたアナログ音声信号を搬送波周波数を標本化周波数
として多ビットデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器3と、
このアナログ・デジタル変換器3に標本化周波数信号を供給する標本
化周波数発振器2と、アナログ・デジタル変換器3から出力された多ビ
ットデジタル信号を入力として制御信号を出力するデコーダ4と、この
デコーダ4から出力された制御信号によりオン・オフ制御される複数た
とえば10個の高周波増幅器51、52…510と、搬送周波数信号を高周波
増幅器51、52…510それぞれに供給する搬送波周波数発振器6と、高
周波増幅器51、52…510の出力信号を合成する出力合成回路8とを有
している。
この振幅変調送信機では、音声入力端子1に入力されたアナログ音
声信号の振幅に応じて複数の高周波増幅器51、52…510の動作数が
変化する。この複数の高周波増幅器51、52…510の出力を階段状に出
力合成回路7で合成することにより、出力端子8から入力音声信号に
応じた振幅変調波が出力される。
第4図は例として音声入力端子1に三角波9を入力した場合の出力端
子8に現れる出力波形10を表すものである。なお、第4図は実際の出
力信号波形の負側を略した図である。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述のように従来の振幅変調送信機は、搬送波周波数と比較して低
い周波数の信号を搬送波周波数発振器6とは別の標本化周波数発
振器2で発生させ、標本化周波数としていた。すなわち、従来の振幅
変調送信機では、搬送波周波数に対して標本化周波数の方が低く、
搬送波周波数の周期Tcと比較して標本化周波数の周期Ts1の方が長
い。そのため周期Ts1の期間中に搬送波の極大値が2回以上同一振
幅で入る場合が発生し、入力した音声・映像信号に正しく対応してい
なかった。このため、従来の振幅変調送信機では、不必要な高調波
が発生し歪率が高くなるという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、不必
要な高調波の発生を防止し、歪率を低減することができる振幅変調送
信機を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の振幅変調送信機は、入力されたアナログ信号を搬送波周波
数を標本化周波数として多ビットデジタル信号に変換するアナログ・デ
ジタル変換器と、このアナログ・デジタル変換器から出力された多ビッ
トデジタル信号を入力として制御信号を出力するデコーダと、このデコ
ーダから出力された制御信号によりオン・オフ制御される複数の高周
波増幅器と、この複数の高周波増幅器と前記のアナログ・デジタル変
換器に搬送波信号を分配して供給する高周波分配器と、この高周波
分配器に搬送波信号を供給する搬送波周波数発振器と、前記複数の
高周波増幅器の各出力信号を合成する出力合成回路とを備えてい
る。また、本発明の振幅変調送信機は、前記アナログ・デジタル変換
器は音声入力端子を有し、この音声入力端子にアナログ音声信号が
入力されるようになっている。
このような構成により、本発明の振幅変調送信機においては、標本化
周波数と搬送波周波数が同一となり、1つの標本化した振幅と1つの
搬送波の振幅が1対1で一致する。このため、不完全な振幅を持った
合成出力が発生せず、高調波の発生が防止されるとともに、歪み率
が減少する。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例に係る振幅変調送信機の構成を表すブロ
ック図である。ここに、第4図と同一構成部分は同一符号を付してその
説明を省略する。
本実施例の振幅変調送信機では、高周波増幅器51、52…510と搬送
波周波数発振器6との間に高周波分配器13を備えている。
複数の高周波増幅器51、52…510は、共通の高周波信号源である搬
送波周波数発振器6より高周波分配器13を通じて搬送波信号が供給
されるとともに、デコーダ4より出力される制御信号によりそれぞれオ
ン・オフする。
一方、アナログ・デジタル変換器3には音声入力端子1に入力された
アナログ音声信号とともに高周波分配器13の出力が標本化周波数信
号として入力される。このため、アナログ音声信号はアナログ・デジタ
ル変換器3で標本化量子化されて、デコーダ4に入力される。このデコ
ーダ4では、多ビットデジタル信号をアナログ音声信号の振幅に応じて
複数の高周波増幅器51、52…510のオン・オフ動作を制御するための
制御信号に変換する。このデコーダ4から出力された制御信号で各高
周波増幅器51、52…510が動作し、これらの出力信号を出力合成回路
7で合成することにより出力端子8から入力信号に応じて階段波状の
振幅変調高周波信号が出力される。
第2図は例として音声音声入力端子1に三角波14を入力した場合の
出力端子8に現れる出力波形15を示すものである。
このように本実施例の振幅変調送信機では、一連の動作中、標本化
周波数と搬送波周波数が同一であるため、第2図に示すように、標本
化周波数の周期Ts2と搬送波周波数の周期Tcも等しくなる。このため、
Tc2期間中には、必ず搬送波の極大値が1回発生するだけである。こ
のことは、標本化信号と搬送波信号の位相がずれていても同じであ
る。したがって、1の標本化した振幅と1つの搬送波の振幅が量子化
誤差を除き完全に1対1で一致し、不完全な振幅を持った合成出力が
発生しないので、高調波の発生を防止できるとともに歪率を減少でき
る。
なお、第5図に示したように搬送波周波数よりも標本化周波数を高くと
ると、さらに歪等が減少すると思われるが、搬送波周波数の周期Tcが
標本化周波数の周期Tc3よりも長くなるため、無駄な標本化が行われ
るだけで、歪、高調波は減少しない。ここで、第5図は、第4図の送信
機の音声音声入力端子1に三角波11を入力した場合の出力端子8に
現れる出力波形12を示すものである。
また、本実施例の振幅変調送信機では、搬送波周波数発振器6とは
別の標本化周波数発振器が不要になるので、送信機のコストを下げ
ることができる。さらに、アナログ・デジタル変換器3は標本化周波数
が高くなると、一般的には高価になるが、搬送波周波数以上のアナロ
グ・デジタル変換器を使用せずに済むので、送信機のコストが必要以
上に増えることはない。
〔発明の効果〕
以上説明したように請求項1および2記載の振幅変調送信機によれ
ば、搬送波周波数発振器から供給された搬送波信号を、高周波分配
器により複数の高周波増幅器およびアナログ・デジタル変換器にそれ
ぞれ入力させるようにしたので、標本化周波数と搬送波周波数が同一
となる。したがって、1の標本化した振幅と1つの搬送波の振幅が一致
し、不完全な振幅を持った合成出力が発生することがなく、高調波の
発生を防止できるとともに歪率を減少できる。
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