其の弐『沙羅沙を追って』

結界により、完全に遮断された空間があった。
かつて小学校だった場所に、何が起こったのか?と、誰も不思議がることはなかった。一般の人達は、突然立ち入り禁止地域に指定されてから、近づこうとも話題にしようともしなかった(なかよく井戸端会議でもするょね?普通)。何であっても、それがごく自然で当たり前の事となる。これも、魔の力が作用している結果なのだろう。
新聞に載ったり数分前に朝のニュースでもやってたにも、、関わらずだ。

しかし...
雨宮の人とそのオマケは、違ってたみたいである。
「あぅぅ、うずうずしてきたっ。ゴン、結界をムイいて!私も行ってくるっ」
言ったのは、ピンク系のTシャツにショーパン(Tシャツはヘソ出しで、ショーパンは短くてちょいおしりが見えてます)がやたらめったらに似合って可愛らしい娘だ。
「なんとー!深雪は絶対にダメね。つーか、ゴンって中山じゃあるまいし。さらにオマケとはなんだー」
ゴンは、困ったように答えた。
「ん?オマケなんて誰も言ってないような。っか、大丈夫だょ!家宝の護身刀を持っていくから。ネックレスは、おねぇに持たせたから無いけどさ。何だ、、あぁそれならよしっ!みたいなー」
普段はアワアワしているが、今日はちょっぴり真剣な眼差しである。2時間くらい前に、彼氏を探しに行った姉のことが、かなり心配になっているようだ。
「せめて、明日まで待ってからにしては?明日にはジ、、」
ジジイ(伽羅迦=深雪たちのお父さん)が来るからと言いかけたゴンだが、途中で遮られちゃったみたい。
「あー、そうなの?へぇー」
「...分かりました」
ゴンは、深雪に何だか弱みを握られているらしかった。
「っか、遊びに行くのじゃないのだから、厚底みたいなのを履いちゃダメまりMAXっ」
「あっと、いけないいけない。ついつい」
下駄箱でも日常のナニゲない会話、、どこか緊張感のない深雪であったりする。
(厚底みたいなのは諦めて普通なブーツにしたが、しっかりベストみたいなのを羽織りテンガロンハットみたいなのを被ってましゅ、、共に赤いの)

学校に着いて、ゴンザレスが剥いてる間に深雪はなんとなく聞いてみた。
「そうそ、こんな結界を張ったのは誰ぇ?」
「ヌーダラサン、クンヨムアブ...(呪文)おし、開いた!早く通り抜けるネ」
「あ、、よしっ!」
深雪は、疑問のまま急いで通り抜けた。
「んと、結界を張ったのは刹羅、、ってもう遅いか」
ゴンザレスは、結界が閉じてからつぶやいた。

『さて、おねぇの後を追ってきた!まぁ、おねぇは力が強いけど、私には1000の技がある。合流したら、2000万パワーズだね!』
などと、深雪が思ってるのはつかの間だった。
「た、助けてくれー」
「うおぉぉぉっ、、」
右方向より、一人だけ生き残っていたであろうオッサンが、深雪を見つけて向かって歩いてくる。
その後方から、いくつもの人影がいかにもおかしな動きで追っかけてきた。
生存者のオッサンは傷付き消耗しているご様子で、なかなか追っ手を振り切れないようだ。
さらに怨念を含む叫び声は、地上からだけでなく上空からもしていた。
深雪が見上げると、沙羅沙が倒したはずの怪鳥が、骨や肉が見えたまま復活している。
「うげぇ!?あれって、、(どう見てもアンデットさん。こりゃ、やり過ごすしか!早いとこ、あの校舎の中に逃げ込まなくちゃだわ)、、おねぇ、来たょ。っか、助けて!ねぇさまーーっ」
超アワアワでようやく走り出そうとする深雪の肩に、オッサンの助けを求める右手がかかった。
その時
「いくぞ!奥義、忠春斬りぃ」
「みぎゃーーーっ」
何者かの二段攻撃(左右の袈裟斬り)で、生き残りのオッサンはもーサックサクって感じー。
「ん?」
振り向いた深雪のパッチリおめめに映ったのは、苦悶の表情を浮かべながらスローモーションで崩れ落ちるオッサン、、そして、ポケモンのヤドランに髪の毛を付けたような男だった。スーツ姿で、柄に何やら見覚えのある家紋が入った刀を持っている。怪しさ超ガモガモっ
「そ、それは葵のご紋!さては時代劇の人だね?」
「半分正解です。いや、危ないところでした、お嬢さ、、アウチッ」
ヤドランは、後ろから来たキノコルゲ、、いや、ゾンビに肩口を噛まれたらしい。
「が、頑張ってね。忠春さん?だっけ」
深雪は、ちょっぴり顔を引きつらせながら、おててで軽くバイバイちた。そして、すたたたたっ
忠春のおかげで、深雪は逃げられたみたいさ。
(カチャッ=刀を裏返す音)
ゾンビに睨みをきかす忠春、、彼は『俺は今最高にかっこいいっ』と思っていた。
しかし、脳みそが腐って食欲しかないゾンビ達には全くもってムイミダス。
「おのれぇ、世を松平トミー忠春と知っての狼藉か!天に代わって成敗してくれ、、アーーォッ」
松平トミー忠春、、大奥で乱世の限りを尽くし、それにも飽き足らず旅に出た。
浮世の鬼を成敗する為に、、たぶん