其の拾『開kaihou放』
目が覚めたピエルーは、大きな教室へ入っていた。
(魔王様を殺したのか?、、はっ、沙羅沙は?まさか?!)
ピエルーは、幻斗を見た。
イスにかけて眠りこける青年は、弥勒菩薩のように微笑んでいた。
(俺以上の力を持った人間は、雨宮伽羅迦・その娘の沙羅沙、そしてこの嘉神幻斗。、、幻斗、俺がその薹霊であることの辛さから開放してやるよ)
ピエルーは、魔の宿る体で幻斗を抱き寄せ、その強大な力で吸収しはじめた!!
(薹霊も寝てたら赤子同然だな、、、俺が、この世を制する。これは人間が決めたことだ。はははっ)
一方、刹羅は、、
(キツイぜ!あのオッサン、、この状態で走ったってのかよ。内臓が全部抜けちまったような感じだ、、まったく荒業だな。死んじまうぜ、こりゃ。って、もうすぐだけどさ)
刹羅は、ゲレ造をなでながら木の影に置いた。そして、なにげに周りを見まわしてみる。
「あ、ボタンがある」
押したら、地面が開いた。(ま、えてしてこういうものだな。開いたら行くしか!だし)
『そこから、私のところまで直通だよ』幻斗のそんな声が、聞こえた気がした。
「お父さんの名前は、伽羅迦。職業は、考古学者、、」
痛みをこらえながら、ゴンザレスは話し出す。
「しゃべらないで、、私が誰かを呼んできますから、、」
と言うものの、沙羅沙はしゃがみこんでしまったまま動けない。
それが分かっていて、ゴンザレスは険しい顔を無理に笑顔に変えるのだった。
「私は、母国ブラジルであの人と出会いました。確か3つの宝玉を探しに来た時だっけ、、」
「離せぇーーっ、離せよっ、、!?」
深雪は、自分の頬から涙が流れていることに驚いていた。
再び刹羅は、、
地下道を歩きながら、幻斗との会話を思い出していた。
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「例えば、失敗を繰り返し堕落していく人間がいたとする。いままでに、導こうと力を貸そうとしてやっても、ダメだった奴だ。そんなのがいたら、救いの手を差し伸べるか?、、俺は差し伸べない!放置プレイって奴さ」
「答えはYesさ。俺は、差し伸べる」
「残酷だな、刹羅は」
「あぁ、その方が面白いだろ?イエスキリストは、人類全員に罪の償いを求めています。みたいな」
「刹羅は、人間らしいね。やっぱ」
「だから、違うってば」
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(『今は、お前が面白い』って感じか、、)
刹羅は、必死に重い足を引きずって、ゆっくりと進んでいた。