其の拾壱『融yuhgou合』

刹羅は、幻斗と同じ時を過ごした頃を思い出していた。
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「生きる価値の無い生は、無意味だと思うか?俺は、無意味だと思うな」
「いや、意味はあるよ。そう、誰かも言ってたな『死にたいと思うような奴は、サバンナの肉食獣のエサにでもなれば、生態系の役にたつ』ってね。それ以前に、どうしようもなくダサいけどさ」
「お、珍しく意見が一致したな」
「してないって。たぶん」
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「うぐああぁぁぁぁっ」
右腕が吹き飛ばされて、刹羅は激痛で現実に引き戻された。
「次は足だ。気絶しちゃ困るぜ!ってな。やぁ、愉快愉快っ」
ピエルーは、無表情な仮面の下で残忍に笑った。
(そーまとー見ちまったぜ。2回見れるから、ラッキーかな)
刹羅は、激痛の中ですこしだけ苦笑した。

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今から少し前、刹羅は幻斗の部屋に辿り着いた。部屋には、幻斗ではなくピエルーが、イスに腰掛けていた。
当然、刹羅は用心深く足を進める。
「なんだ、貴様は?」
「それよか、幻斗はどこだ?」
ピエルーの問いかけに、刹羅は重ねて問いかけた。
(伽羅迦の甥か、、普通の人間だな)
「俺が、食ったよ。消化しきってから、人間全てを粛清しに行こうと思ってるのさ。」
「うむ、それは可哀想だな、、、お前が」
ピエルーは、刹羅にいくつかの魔法を放った。だが、全く効かなかった。
「?!魔法が、、貴様、アンデッドか?」
「あぁ、ちょい前からなっ(時間制限ありだけどさ)」
「なら、攻撃魔法で粉々にしてやるさ。ははっ」
そして、刹羅の左腕は吹き飛ばされた...
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両腕はもう無い。顔を支えに、体をくの字にして片ヒザを着く。
「、、なぁ、俺も吸収しやがれ!幻斗だけなんて、ズルイぜ」
そんな風に言う刹羅を、ピエルーは嘲笑う。
「ふん、虫けらが何を言うかなぁ。バカか」
やっと立ち上がり、数歩進むも前のめりに倒れる刹羅。腕がないことでバランスが取りにくいのだろか。それとも、おびただしい流血により力が抜けているせいなのか。
「そっちに行くから、、」
「来なくてもいいぞ!無理するな」
次に左足が、吹き飛ばされた。

(まるで、虫のようだな、、イモムシだ)
激痛に耐え、体と右足で動こうとするが、ほとんど進めない。
「お前、人間が嫌いなんだろう?それに替わるもっと高等な生物を創造するんだ。いいな」
必死で前に進もうとし、訳分からんことを言う人間を、ピエルーは不思議な生物を見るように見ていた。
「ナニカで書いてたな、、人は言葉で嘘をついて争いを起こす。だから、人は進化して心で分かり合える存在になるだろう。そしたら次は、心で嘘をつける人間が現れて、、。そんな気の遠くなるような時間を、一生懸命に重ねていくしかない。それでも、、それでも、永遠の世界は作れないってね。」
、、残る右足が吹き飛ばされた。
「ぐああぁぁっ、、」
刹羅を度重なる激痛が襲う。記憶を保つのが辛くなってきただろう。
「?!お前は、何なんだ?」
「人間だよ(お前の嫌いな)、、うああぁぁぁっ」
さらに、下腹部が吹き飛ばされた。

(もう、何分もモタねぇな)
「あぁ、あぁぁっ、、何だ、、」
ピエルーは、首を激しく何度も振った。仮面が取れて、前方の地面に落ちる。
それが呪縛であったかのように、ピエルーは刹羅にゆっくりと近づいていた。
「苦しめて、済まなかった、、最後に言い残す言葉は?あるか」
酷く焼け爛れた顔から、澄んだ目が見つめていた。
「うぅぅぅっ(痛ぇんだよ。まったく)」

ピエルーの人に対する憎しみが少しだけ薄れた頃、薹霊の力が急激に加速度を増して目覚め始めていた。