phase5『Fatal_fury』守るべきものとは
ふらふらと家へ帰る道で、キョウコは棒立ちのユキコを発見した。
「、、何やってるの?いったい」
聞かれても、ユキコは口や瞼さえ動かせなかった。
瞬きも出来ない為に、双眸からは涙が溢れていた。
(あ!瞬間催眠術ね。ユキコはrealだから、、気絶しなかったって訳か)
「もう、しょうがないなぁ、、」
キョウコは、自らの傷付いた重いからだにユキコを担ぎ歩き出した。
キョウコを逃がし、追っ手との闘いを一人で受けた空羅は、やっとのことで決着をつけ終わっていた。
激戦の連続で負傷個所が増えていた。
しかし、全て致命的なものではなかった。空羅の反射的な体裁きが攻撃の見切りをしていたのだ。
(段々と敵のレベルが上がってきてやがるぜ!だが、俺自身もレベルが上がっていくのを感じる)
「へへっ、やっと見つけたで」
そこへ、痩身の青年モンドだ。距離にして、15m程離れた場所で話し掛けてきた。
(何だか、こいつの目は妖しい光があるな。そして、全てに隙が無い)
即座に、空羅が何らかの危険を感知する
「見とれたか?目が綺麗やって良く言われるねん、、あれ!?(消えた)」
「どこを見ている」
空羅はモンドの後方、10mに回り込んでいた。
「何っ、、早いなぁ。さすがは噂に聞く空羅さんや(けどな、光の速さには勝てへんよ)」
「そう、この距離だと一瞬さ。瞬きした瞬間にお前は負ける」
緊迫した空間は、まるで時間が止まったようだった。
(ガサッ)
「切っ」
小動物が音を立てたのを合図に、静寂を破ったのはモンドの裂ぱくの気合だった。
とある山頂にある修行場で、気合いと打撃音が絶え間なく続く。
幻斗とゼロが組み手をしているのである。
「俺と空羅の闘いがメインを張れないなら、時代は昔と何も変わりゃしないんですよ。これからの試合は、全部俺色に染めてみせます」とゼロ
「期待してるぜ!天才。俺も次元の壁を破ってみせる」と幻斗も呼応
(だって、敵は恐ろしく強いぜ、、あの2人は)
幻斗は、2人の顔を思い浮かべた。
「考え事をしてると、一本頂きますよ」と不敵なゼロ
「そうはいくかよ」と笑顔の幻斗
激しい戦闘だが、2人とも楽しそうに己の手ごたえを感じていた。
何としても、2人には強くなる必要があったからだ。
善も悪もない、生き残りを賭けた闘いの為に。
「!?ん、なんや、、切っ」
(なんで効かんのや、、どんな動物にだって効いてたんやで)と焦燥なモンド
空羅は、力強く一歩一歩モンドとの距離を詰めていく。
「そういや、お前毒を受けたんと違うんか?」とモンド
「全てのものは、争う為ではなく調和する為にある!お前の意思に調和しただけだよ。それと、毒は『自然に』浄化されてしまったさ」と当たり前のように空羅
「(化け物や、勝てへん、、、こいつには勝たれへん)こ、殺すんか?俺を」
モンドは、戦意を喪失して怯え始めていた。
「今度、それを悪いことに使ったらな」
やれやれという表情で言って、空羅はW・グルーブ邸ではなく、敵から聞き出していた本拠地へと向かった。
(ザバーン)
「ぶくぶくぶくっ、、ぷわぁ、おえっ、マズーーッ!」
池ではしゃぐユキコを、キョウコはちょい離れて見守っていた。
ってか、放り込んだのはもちキョウコだけど。
(パクパクパクパクッ)
「ひぎぇぇっ、きもー、、ちゅーか、冷たいって!さぶーーぃ」
(バシャバシャ)
水しぶきを上げて、やっと脱出したユキコ。
「おねぇ、何すんねん!でっかい鯉に食べられそうになったやんけー」
「、、口悪なったね。何年か前は花も恥らう乙女だったのに」
「うっさいわい!天然の青汁飲んでしもうたねんで、あんたも飲むかっ?こらぁ」とキレキレのユキコ
「そうは言うけど、金縛りのままよりいいでしょ?ほら、帰るよ」
そう言いながら、キョウコはさっさと踵を返していた。
W・グルーブ邸では、公開処刑が続いていた。
ゴンザレスの前に、傷つき倒れるマークがいる。
「うぅ、、(なぶり殺しってこのことですね)」
「ふん、いつもながらお前の根性ってか精神力には感服するね(ユキコが帰って来るまで、もたさなきゃダメだから手加減しないとな)。お前は、ユキコの前で死んでもらう。それから、ユキコを殺す!って筋書きさ」とゴンザレス
(ガツッ)
マークの顔面に蹴りが入った。
「ぐぅっ、、!?キョウコさん、ユキコ」
言われて、ゴンザレスも遠方に2人の影を認識した。
「やっと、帰ったか。よかったな、今楽にしてやるぞ」とゴンザレスが改めて死刑を宣告する
(殺される、、私の後は、キョウコさんもユキコも。少しでも、少しでもダメージを与えなければ)
マークの目に、今一度光が宿った。
なんとか、方膝を付き立ち上がりかける。
「私には、まだ最後の必殺技が残ってるんだっ」とマークのつぶやき
ゴンザレスが、大技のモーションに入った時だった。
「神罰です!、、ん?」
マークは、渾身の力を込めて上空へハイジャンプした。
しかし、、限界だったのでそのまま気絶した。
「げーーーっ、空中で気絶してる!マークっ」
叫びながら駆けつけたユキコに、ゴンザレスの乱舞技が炸裂した。
「ああぁぁぁぁっ」
「Realの癖に、甘ちゃんだな」とゴンザレス
その側をキョウコが、ダッシュで通り過ぎた。
落下してくるマークを、キョウコは見事にキャッチする。
「ぐぅぅっ」
しかし、マークを受け止めた負荷が衝撃となって襲いかかった。
全身の骨が軋む!キョウコも戦闘のダメージと加算して満身創痍になってしまった。
ユキコには、乱舞の最後の技であるクロー攻撃が襲いかかっていた。
(ビシュビシュビシュッ)
ゴンザレスの爪が両肩に食い込むごとに、血が噴き出す。
「ユキコーッ!」
キョウコは、マークを傍らに寝かせてから、ユキコを助けようとする。
ゴンザレスに捕まったユキコは、力が抜けてゆくのを感じていた。
「アイスストー、、」
ゴンザレス、右手で例の如くキョウコの位置に竜巻を発生させる。
左手は、ユキコの頭を掴み宙吊りにしてだ。
キョウコの発した氷は、竜巻で無数の氷柱となり逆にキョウコに襲いかかった。
「きゃぁぁぁぁー」
胸部を切り裂かれて、キョウコは跳ね飛ばされる。
ゴンザレスは、キョウコをゆっくり一瞥してから、ユキコを傍らへポイと放り投げた。
「さぁ、Realよ!もっと俺を楽しませてくれ」
(お前も死ぬのだ、深雪が死んでお前が生きているなんて、不公平だからな)