vol.1『ゼロの鼓動』-overhead_run-

登場人物
デュイ・P・ブレイカー=この物語(wake_up_your_mind's-jesus-)の主人公。大東流合気柔術を使う少年で、前世の記憶を保っている
ゼロ・T・ニュークレオン=骨破拳と鐘巻流小太刀の達人、人化した元・毒小人
雨宮雪羅(amamiya_setsura)=ブルー(blue=third)という存在。幻斗が未来に託した人類の最終形態?
深山初音(miyama_hatsune)=永劫の時を生きる蜘蛛神
八神葵(yagami_aoi)=蜘蛛神・銀の血を引く少女
ミカル・W・グルーブ=ユキコ(real=second)の一人娘、6才らしい
後は省略。どっとはらい

オリジナルとアナザーの闘いから8年後---
この世界に、平穏で何も起こらない時代が訪れていた。
人々は特殊能力を使う事も無くなり、ゼロすら己を鍛錬することを忘れつつあった。

しかし、W・グルーブ邸から変化が起こり始めた。
キョウコが、何者かに殺害されたのだ。
夫は、なんとか無事に保護された子供を連れて実家へ帰った。
ユキコは、キョウコの復讐に燃えていた。
雪羅に、キョウコの記憶を通して、手がかりを教えて欲しいと頼んだ。
「realの前で、thirdの力を使える訳ないじゃん。また、おなか殴るよー」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」とユキコは本気で怒る。
「うるさいなー、私だって忙しいんだからっ」
雪羅は、言い捨てて部屋に閉じこもった。
ユキコは、そんな雪羅を見ながら、彼女の複雑な心境も考えて、自分から言ってくれるのを待とうと思う。
「キョウコおばちゃん、いなくなったの?」
小さな娘のミカルに聞かれて、ユキコは微笑んでみせた。
「ユキコ、警察に任せよう、、じゃなきゃ危険すぎる」
後ろからやってきた夫が、ミカルの頭をなでながら言った。

雪羅は、部屋でベットに転がりながら、事件のことと大切な人のことを考えていた。
現在、高校の1年生でごく普通の学園生活を送っている。そう、送っているハズだった、、彼氏のゼロと幸せな家庭に満足していた。
過去形になった時に、違った世界に踏み込み始めていたのだろう。

数日後、W・グルーブ邸は度重なる激震に襲われることになる。
ミカルの6回目の誕生日。
ゲーセンで長時間かけて取ったぬいぐるみを手に、家路を急ぐサラリーマンの姿があった。
ユキコの夫である。
(喜ぶぞー、ミカルの好きなケツァルクァトルスノルトルビのぬいぐるみだもんな)
近道して、普段は通らない路地を通った時、後ろから頭部に激しい衝撃を受けた。鉄パイプで強打されたらしい。
倒れた路面に、血が広がっていく。
「なんやこれ、俺らが欲しいのは。金じゃっ」
ぬいぐるみが、蹴飛ばされてドブに落ちた。
最後にユキコの夫が見たのは、財布を奪い逃げていく悪ガキとその女の姿だった。
悪ガキ共は、これが初犯じゃなかった。
「お金は渡しますから、お願いだから助けて下さい」と言われても、
「顔を見ておいて、助かると思ってるんじゃねーよ。バカ」
「そうだな、殺すしか!」
と当たり前のように、何度も人の命を奪ってきたのだった。

ユキコは、ケーキを買って帰るところだった。
今度は、ユキコの前に一人の男が立ちはだかった。
その男っていうか少年は、中学生くらいだろうか?
端正な顔立ちに金髪の長髪と蒼眼を持ち、白いTシャツに履き古したジーンズ、手にはオープンフィンガーグローブを付けている。
「覚えているか?忘れていただろうな?身内の死に直面した気分はどうだ?、、それはケーキか?しかたない、俺が届けてやる」
「何っ?何ですって!?」
突然のことであることと『身内の死』と聞いて、ユキコは驚いた。
「realの力で、俺の心を見ろ!、、死んでもらう。悪いな」
ユキコは、言われなくてもそうしていた。
そして、この少年に殺されようと覚悟もしていた。
荷物を地面に置いて、目を閉じ胸の前で手を組む。
少年は、錐状の凶器でこめかみを突き刺しユキコを殺した。

その後、少年はケーキ箱を持ってその場を立ち去ろうとしたが、ひっくり返して落としてしまいぶち撒けてしまう。
ユキコの夫を殺害した悪ガキ共が、激しくぶつかってきたからだ。
悪ガキ共は、少年の傍に横たわるユキコの死体を一瞥しながら、再び走り抜けて行った。
遠くから、警察らしき声が「待て」とかどうとか聞こえてくる。

「、、て、たまるかっ」
と吐き捨てながら、少年も悪ガキ共の方向へ走った。
追いついた時に、エンジンのかかったままの宅配便の車を見つけて一緒に乗った。
運転する少年に、いかにも頭の悪そうな格好をした悪ガキ共が話し掛ける。
「お前も悪のようやな。しばらくは、お互い協力しようや」
「助かったよ!これで逃げられるー」
少しのドライブの間に、悪ガキ共は得意がって今までやってきた悪事をベラベラと話してきた。
こずかい稼ぎにやったとか、憂さ晴らしに殺したりしたとか、、。
2人の名前は、タクヤとシオリと言うらしい。
それなりにまともな顔をした悪いアベックだった。
「んで、お前名前は?」
「ジゼ、、茂だ」
少年は、本名のデュイではなく、適当な名前を言っておいた。

茂なのか、、シゲルでいいのか?って感じで続く