vol.3『蜘蛛神伝説』-atlach=nacha-
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その昔、とある山に蜘蛛神・銀が棲んでいました。
それは、幾千の時を生きる圧倒的な力を持った存在。
数年に一度、村では生娘を生贄として差し出す習慣となっていたそうです。
生贄は銀の餌となり、大概は喰われたと聞きます。
そんな長い時間の中で、どういう理由かで贄(ニエ)として、生かされた者も居たらしいです。
贄(ニエ)とは、妖かしの術で絡めとられ、精気を提供し続ける存在でした。
銀は、人と会う時には擬態を使い人化しました。
そして、銀は永い時間の中で一人の少女・初音と出会いました。
不思議な感情を与えられた銀は、純粋な心を持った初音と生活を始めます。
銀は、退屈な永遠の中に一つの光を見つけた思いがしたのか、初音にも後に自分と同じ蜘蛛の体を与えました。
ある年に生贄の娘を届ける道中で、村人数名はその娘を犯そうとしたことがありました。銀は、娘を助けて村へ返しました。
しばらくして、娘は身ごもっていた銀の子を出産し、銀も我が子の成長を見る為に、頻繁に村へ降りました。
成長した初音は、嫉妬と永遠の孤独を過ごす不安に支配され始めます。
そして、それに耐えきれなくなった時、村に下りて銀の子やその母親を惨殺してしまいました。
そんな話が、遥か昔にあったといいます
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ちょっとした山の中腹に位置する公立の東牛高校があった。
2年のとあるクラスに、金髪の少年が見える。
デュイであった。
デュイは、金持ちのぼんぼんと友達だった。
なにやら、高校生なのに一人暮らししていてヨサゲな生活していたから、そこら辺の奴とは訳が違ったようだ。
金くれるし美味いもの食わしてもらえるし、こんなにいい友達はいない。
休憩時間に、教室の隅で何だか溜まって話し込んでいた。
「デュイ、女抱かしてやろうか?汚れたのでよかったらさ?」
「コガネイ、俺は女には興味ねぇよ」
「まぁ、いいから夜中について来なって」
デュイは、最近この学校がどこかおかしいと感じていた。
おかしい?何が?って感じであるが、何がだかは分からないでいた。
ゼロと雪羅も同じ高校だった。
ゼロは2年、雪羅は1年だった。
もっとも、ゼロは人間の年はワカンナイから、見た目で決めたといういい加減さだったらしい。
キョウコに続いて、ユキコ夫妻が殺害されて、続いて雪羅が行方不明になり1週間が経っていた。
したがって、現在W・グルーブ邸に住むのは、マーク・ゼロ・ミカルの3人という寂しさだ。
ゼロは、ずっと続けていた空手部も辞めてしまい、一生懸命に雪羅を探してる毎日だった。
夜になって、デュイはコガネイに誘われて、学校の体育館へ行った。
そこでは、男子生徒4人が一人の女生徒を犯していた。
コガネイは、半笑いで言った。
「デュイ君、感想は?」
「何だ?、、これは」
デュイはちょっと面食らった、こいつらは何をしているのか?と。
「お仕置きをしているんだ。金も儲かるしね」
一人はビデオカメラを回しながら言う。
「これを見たら、お前の親は喜ぶだろうなー」
デュイは、落ち着いて考えを巡らせていた。(こいつ、、金持ちのぼんぼんじゃなくて金を稼いでいたのか)
「デュイ、お前にもやらせてやるぜ。共犯なんだしさ」
デュイが、次の行動を決めた時、ゼロが倉庫へ入ってきた。
「貴様ら?!、、クソがーっ」
「やべぇ」
「誰だっ?!」
ゼロが、皆殺しにせんばかりの勢いで一人に拳を振りかざした。
デュイが反射的にその腕を蹴り上げる。
それを見て、コガネイはニヤリと笑った。
「やるなっ、、ん?」
次の瞬間
(どがががーん)
轟音と共に扉が弾き飛ばされた。
そして、、
(ビュィッ、ズビュッ)
ゼロとデュイには、一瞬白い光が駆けずるのが見えた。
扉の外から、白い着物姿の影が現われた。
「下衆」
そう呟いたのは、ぞっとするような雰囲気を持つ綺麗な女だった。
すらりとした長身に腰までありそうな黒髪、妖かしの光を帯びた赤目が美しく光っている。
「な、、(何ものだ?)」
「ボーッとしてる暇はナサゲだぜ」
俊敏に身を交わしたゼロとデュイ以外の男は、完全に白い糸に絡め捕られていた。
衝撃のせいで、あるものは腕がもげ、あるものは脚が不自然に折れ曲がっている。
ゼロは、自分の左腕とデュイの右足の糸を小太刀で断ち切る。
(ズバッ、ズバッ)
白い着物の女・初音が、ジロリと2人を睨み見た。
(来るっ!狙いはさっきより減った『7→2人』、、次は避けられるのか?)
(ビュワッ、ヒュイッ)
しかし、2人は攻撃を間一発で避けられた。
初音はというと、違う方向を向いていた。
その先の扉には、楯のような変わった弓を構えた巫女姿の少女が見える。
背は普通だが、ショートカットの色白で、端整なフランス人形よりも美しげで、どんなモデルよりも綺麗に見えた。
ただ、その金色の瞳は焦点が合っていなかった。
その少女・葵は、運命に突き動かされていたのだろう。
デュイは、目を見開いていた。
その目からは涙がこぼれている。
「あれは、、あの娘は」
ゼロは一瞬不思議そうにデュイを見たが、すぐに我に返った。
「何をしている、逃げるぞっ」
肩を叩き、腕を引っ張って出口へと駆け出した。
葵は剣のように変形した弓を持ち、初音へ突進するところだった。
その葵を、後ろ髪を引かれるように見るデュイ。
ゼロもつられて見た。
そして、今まで初音の影になり見えなかった位置に、雪羅の姿を見つけた。
「、、何やってんだよ!」
今度は、逆にデュイがゼロを引っ張っていた。
役者は揃った、、次回「無敵への道」にご期待下さい。