真世紀創造U
嘉神幻斗=元・薹霊であり今は人間。長身でロン毛のにいさん
空羅=幻斗の親友
デュイ・P・ブレイカー=薹霊。大東流合気柔術の達人な少年
八神葵=その彼女
鴛鴦(enou)=悪くて強い人
一人の男が黙々と腕立てをしている。
美形なのだが、ロン毛なのでワカメ星人?のようだ。
「、、、198、199、200」
終わったらしい。
渾身のトレーニングだったので、終わった後も力が入っているようだ。
とりあえず、顎を振り上げて髪を上げる。
腕をグルグル回して、肘を伸ばして、肩を伸ばしてストレッチをした。
(200回したからって、願いも何もないのにな)
幻斗は、そんな風に心で呟いた。
草葉の陰(違)で、その意味を分かる男が幻斗を見ていた。
(男の中の男だな、、幻斗)
と、思う一方で、新団体旗揚げのコマに使おうと思っていた。
すっかり平和ボケになってしまったデュイを、歯がゆく思う男がいた。
鴛鴦と呼ばれる冥府の王だ。
(でも、薹霊には叶わないので、恋人を壊すっぷー)
言葉はカワイイが、2メートルを超す大男だ。
白人で銀髪、雰囲気はラルフみたいなナイスガイである。
でも、悪い人なので、デュイの居ない間に、葵の友達や親兄弟をクリーチャー化させて、葵にけしかけちゃった。
面影を残す化け物を、葵は涙ながらに倒したけど、、精神崩壊を起こしちゃったっぽい。
(謎の声:酷いことするなー)
デュイが帰った後には、床にへたばり失禁して口からヨダレを垂らす葵がいた。
見開いた目は、涙を流すものの二度と焦点が合うことはなかった。
(俺の大切な、、葵)
デュイは庭の大木を背に座りながら、壊れてしまった葵を後ろから抱き締め続けた。
ちょうど前世で、彼女の整理痛を和らげる為に優しくおなかを温めた日のように。
新緑の春も、夏の日も、落ち葉の降る秋も、冬の雪に埋もれても、、ずっとずっと抱き締めていた。
デュイの前に鴛鴦が現れた。
「あーぁ、可哀想に、、お前が留守にしていたせいで、彼女が壊れてしまったな。どうする?デュイーッ」
言い終わると、鴛鴦は正体を現しながら、デュイに突進した。
白いスーツは、弾け飛び真っ赤な鬼の身体があらわとなった。
頭には、猛牛を思わせる角が生えている。
それも全身も、ダッシュのスピードで見えなくなる。
デュイは、微動だにしなかった。
もはや、彼には守るものもなかったからだ。
炎を纏い、炎王というべき鴛鴦の身体が、デュイの目前に現れた時、黒いシルエットが間に入った。
「汝、切人懺悔せよ」
(がががががががっ、、)
鴛鴦の必殺技をガードした空羅は、すかさず相手の腹部へ発頚を放った。
「ぐぅぅぅぅっ、、」
鴛鴦はガードしながら、10メートルほど滑った。
「猿の分際でーっ、、君、炎火と舞え」
鴛鴦が炎に包まれてダッシュフックを繰り出す。
空羅、うっかりしゃがみガードで燃やされ、、
「我、下天照覧せり」
燃えるワンツージャンピングアッパーカットを食らった。
派手に燃えた。
カラータイマーが点滅さ。
鴛鴦、仕上げに空羅をバックから持ち上げて、投げ捨てようとした。
空羅は、その瞬間を逃さなかった。
足をフックして堪えた後に、前方回転しての膝十字固めだ。
鴛鴦、ロープに届かずにたまらず「ギブアップ」した。
(謎の声:プ、プロレスだったのか?)
その名勝負にも、デュイは眉も動かすこともなかった。
しかし、、お構いなしにメインのゴングは鳴らされる。
薹霊を捨てて人間となった幻斗が、デュイへ襲いかかった。
朽ち果てかけた葵の亡骸ごと蹴りを入れようとした時に、デュイが立ち上がった。
それを見て、幻斗は距離を取る。
構えは、両手を目の前で上下に開ける極真空手のスタイルだ。
その目は、死をも恐れぬ葉隠れ武士の目だった。
デュイが先に蹴りを出した。
幻斗はガードして、突きを出す。
すかさず、腕を取りサンセットスプラッシュで投げつけた。
鈍い音を発てて、幻斗の右肘は折られた。
デュイは、そのまま腕ひしぎ逆十字に移行する。
幻斗は、悲鳴を出さない。
左手でデュイの身体を掴み脱出し、逆にマウントに移行した。
そのまま左手で、デュイの顔面にパンチを打ち込む。
一発がクリーンヒットして、デュイは薹霊の力を解放した。
「さぁ、、無に帰ろう」
デュイの身体が白銀に輝き、、前方の幻斗の左腕を消滅させた。
空羅の悲鳴が起こった。
「よせっ!、、」
だが、距離を取った幻斗の見せた微笑に、それ以上言えなかった。
(刹羅への償いをするというのか、、)
空羅は、自分の中の刹羅の記憶と幻斗が重なるのを見た。
左腕からの夥しい流血の中、幻斗が最後の攻撃に入る。
「うおぁぁぁぁぁっ」
咆哮を上げ、幻斗は突撃した。
低い姿勢で肩口からぶつかった。
デュイは、気合に飲まれて避けられなかった。
幻斗は、倒したデュイの頚動脈に噛みついた。
ガードが間に合った為、深い傷ではなかったが、、血が噴出した。
デュイは幻斗を殴り飛ばす。
ダブルノックダウンから、なんとか起き上がる二人。
デュイは、あの技をかけようと、、しかし、幻斗は膝から崩れ落ちてダウンした。
幻斗が担架で運ばれて行った。
自力で花道を去るデュイに、空羅は声をかける。
「デュイ、お前の男気、しっかりと受け取ったぜ。だけどな、俺達は何度頭を下げてもいいから、、デュイ、闘えーっ」
と言ったそうな。
♪届かない叫びの中で、何を信じればいいの
深く落ちてゆけば、伸ばしたこの腕の先に、君が見える