望みの彼方

ダルジィ=農家の娘
鴛鴦=味噌好きのでっかいナイスガイ
?=幻斗の血縁者?

『ここに変わらずにあるものなんて
何ひとつないよね』と自分の在り方にふるえてた
けれどきっと、そうじゃなくてね
どんなコトやどんなモノにでも
入口は数多くあっても、そういつも出口はひとつなんだ♪


私(ダルジィ)は、記憶が無かったの。
ブルー系統のワンピースを着た女の子でした。
気が付くと、、青い空の下、だだっ広い田舎道を歩いていた。
まるで、広い世界のどこかにある大切なものを探しつづけて、それが何なのかも分からずにいるような感覚だった。
大切なもの、、物なのか人なのだろうか?
探し物が見つかっても、目を逸らすのかな?
それとも、大切なものを失ったから、記憶を閉ざしたのだろうか?

そんな風なことを考えながら、ひたすら歩いた。
夜になった頃に、山での遭難者が小屋を見つけたように、牧場に辿り着いた。

パパとママは、優しかった。
疲れ果てた私は、温かいスープ・お風呂・暖かいベッドを与えられた。
優しさに飢えていた私は、安らぎの中で生きていく喜びを感じていた。

それから、しばらくして鴛鴦がやってきたの。
彼も同じような放浪者だったのかな?
いつも、優しく見守ってくれていた。
「いつか、記憶が戻ればいいね」って。


敵はダルジィを狙ってくる。
俺(鴛鴦)は守らなければ、、どうやって、どうやって守ればいい?
明日にも、ここを出なければいけない。
お父さんとお母さんにも、でないと被害が及ぶ。
もっとも、世界が滅びるなら、そんなことは関係ないのだけど。
いや、、明日じゃダメだ!ダメなんだ。

鴛鴦は、ダルジィを連れてこの地を去ることを、お母さんとお父さんに
告げて、日が暮れる前にダルジィと共にある地を目指した。
(あの男なら、あの男なら、世界を救うことができるだろうか?)
隣町から乗った車で空港まで行き、飛行機で目的の国へ着いた。
(もうすぐだ、もうすぐ合流できる)

午前5時過ぎ、、山道に入った時だった。
後ろから、美しい声が発せられる。
「薹霊、、その力で私を止められるか?」
声の主は、真っ赤なコートで身を纏った長身美形ロンゲ男だった。
幻斗に瓜二つであるが、刺々しく圧倒的な威圧感が違った。
背中には、大剣が背負われている。

鴛鴦は身構え、ダルジィは怯えて後ろへ下がった。
「来やがったか、、ダルジィ、記憶を取り戻さなきゃいけない時が来たようだ。下がっててね」
「えっ、、私が記憶を?!」
鴛鴦が、一瞬だけ目をダルジィに向けた瞬間だった。
小声で呪文を唱えていた敵の足元から、実態のない影がダルジィの足元へ移動する。
それに気付かない鴛鴦が、炎を纏った拳で突撃を開始した時、、
「きゃぁ、、何?イヤーッ」
ダルジィの悲鳴が聞こえた。
影から伸びた無数の手が、ダルジィを影に引き摺り込もうとしていた。
「ダルジィー、目覚めるんだ!お前の力を解き放てっ」
振り向いた鴛鴦に、敵はジャンプ後にビームを打ち腕を振り上げた。
虚を突かれた鴛鴦は、攻撃をもろにくらってしまう。
山の木々は、道が出来るように一文字に燃えた。
(ぐぅぅぅ、、)
衝撃と打撃にダウンする時、ダルジィの身体が影に引き込まれていくのが見えた。
ダルジィの身体が消えた時、影から強大な力が上空へ放出され続けた。
それは、稲妻が落ちた映像を巻き戻しスロー再生した感じに似ていた。

「貴様ーっ」
鴛鴦は正体をあらわして、敵に突進した。
一瞬で、大切な人を失った悲しみと怒りの炎が身体中を包み込む。
敵は、他の方向を見ながら、鴛鴦の攻撃を軽く捌いた。
炎の攻撃も、届いた瞬間に気で打ち消される。
「薹霊の力も、、消え去ったか。期待外れだったな」

敵は子供をもてあそぶように、攻撃を受け流しながら考えていた。
(この世に唯一、選ばれし者は存在してしまった、、。
死の宣告と、それに伴う僅かな徒労、いつからかそれが、私の日課となった。
誰に誉められることも望まず、いつも力に飢えていた。
そして、、辿り着いたのは-殺戮の独叡-
この呪われた外法にただ一人浸って、、いつか、己れのこれからも不透明となった。
そして、私の精神は宇宙との同調を始めてしまった。
1秒は千年となり、1分は億年となった。
速度さえも感じそうな焦燥感、現実のものとは信じがたい苦痛。制御不可能な、自分の自分自身に対する暴虐の中、、、宇宙の意思を聞いた。
”イマコソ、コノヨニ、ハカイノトキヲ”
自分の神の力を通して、裁きが下されようとしていた。
止めなければならない、、。
暴走する自分に自ら命令することも、もはやままならなくなってしまうのだろうか。)


「君、炎火と舞えっ」
敵は、硬質なバリアのようなもので、鴛鴦の攻撃を跳ね返した。
自らの技を受け、もんどりうってダウンする鴛鴦。
「貴様、何者なんだ」
「絶対神、、紫水」
つぶやくように敵は応えた。
鴛鴦は突進し、両腕を振りかぶり最終奥義を放った。
「食らぇ、アトミックヒート、、?!」
紫水は、ストレートを放つように片腕で光球を放った。
「閃光拳っ、、?!」

互いの技が交錯する直前に、二人は遠くから近づく三つの気を感じた。
(遅かったじゃねぇか)
(、、我がクローンと仲間たちよ)

鴛鴦は、灼熱に焼かれながら数歩後退した。
「紫水っ、、地獄で待つ」
鴛鴦が燃え尽きても、、光球は、それが自分の居場所であるように、その場に留まり燃え盛っていた。
紫水は、悲しげな表情で目を閉じ、三人の気が到着するのを待っていた。