扉を閉めて、少し歩いたところだった。
、、前方に紫水が居た。
「空羅よ!何故、、私に、神に歯向かう?」
「俺の意思が突き動かすからだ。お前が神を名乗るなら、俺は悪魔と名乗ろう」
紫水の問いかけに、空羅が答える。
一触即発。
(キュィーーーン=落下音)
紫水が呪文を唱える。
空羅は回りこもうと、旋回しつつダッシュした。
しかし、放たれた影のスピードが上回っていた。
空羅を影が捕らえる瞬間、、アホが降ってきた。
空羅を押しのけたシャチョキャラットが、今週の生け贄っぽい。
「メーデーメーデー、、おろ?何だこの手は、くすぐったい、あぉ、あーぉ、あぁ、おーいぇーっ」
アホは、喘ぎながら影に引き摺り込まれていった。
「、、ふぅ、危ないところだったぜ」
「もう邪魔は入らんぞ!お前に生きる道はない」
至近距離だった。
「激・閃光拳っ」
紫水は、振りかぶった両手で光球を打ち出した。
「おおおぉぉっ」
空羅も、発頚で凌ごうとする。
ビリビリと空間が震撼した。
完全に押され、灼熱が空羅の身体に触れた。
だが、フォースの力を爆発させたのか、、巨大な光球が消滅していく。
皮ジャンの左胸に穴が開いていたのは、コインの力が荷担したのだろうか。
紫水は、間髪入れずに影を放った。
空羅は、影に捕われる。
しかし、、
(うおおぉぉっ、、、、)
亡者共は、声を上げて手を伸ばすものの、空羅を引き込むことができなかった。
空羅がフォースの力で、亡者共にもビジョンを見せたからだ。
紫水は、それに正直驚いていた。
空羅は、全力でたたみかけることにした。
(今しかない!行くぞ、俺の全ての力よ。全てを、、絶望の『望』を信じる)
空羅の拳と紫水の拳が、激しく交錯した。
突きと捌きが繰り返された。
その短い時であったが、紫水と空羅は記憶を重ね合った。
(何の為に、滅ぼすのか?)
(真に新しいものを作るために、全てを灰塵と帰す)
(全てをか?理解できたのは自分だけじゃないはずだろ?)
(、、、空羅、お前とは闘いたくなかったのかもしれん)
(まだまだ、闘い足りないもんな)
(だが、最後の闘いなんだ。決定権は勝者にある)
(どいつもこいつも、勝手に最後にしやがってっ。これで良かったのかよ?本当に)
(ジジイになれば、分かるだろうぜ)
二人は、距離を取った。
最後の最後の攻撃を繰り出す為に。
「さらばだ、空羅」
「最後になんてさせるかっ」
空羅の脚は、大地と一体化するが如くめり込んでいた。
紫水は、宙へ浮かびながら、天空を見上げ両手を翼のように少し広げる。
薹霊という存在は、、問いかけていた。
『沙羅沙は、生き残る為に見ず知らずの男性の命を犠牲にした。それは、極限状況に於ける自己防衛であるから、殺意の領分から外れるのか?』
『忠春は、深雪を助ける為に男性を斬り殺した。全滅するよりも、少数が助かるならば当然の行動であるか?』
『幻斗は、理想の世界を造る為に多数の異界の者の命を奪った。人類が存続すれば、他の種族などどうでもいいか?』
『沙羅沙は、呪縛のかかった深雪を殺した。どちらかが死ぬのであれば、仕方の無い判断だったといえるか?』
『人類に絶望した刹羅は、敵に高等な生物の創造を望んだ。それは生命への冒涜ではないのか?』
『幻斗は、親友を自分の理想とはかりにかけて見捨てた。意思を貫く為には、どんな犠牲もしかたのないことか?』
『幻斗は、人類を粛清する為に世界を無に帰そうとした。神の力を得たならば、それは責められる行為ではない?』
『幻斗は、新旧の人類を同時に配置し、どちらが残るべき種であるかを試した。神として当然の行為であるか?』
『デュイは、復讐の為にユキコを殺害した。理由によっては人殺しも正当とされるものか?』
『デュイは、罪を重ねた男女に裁きを下した。粛清は、人類の尊厳を守る為に必要か?』
『初音は、下卑を惨殺した。彼らは、罪を犯したから殺されても仕方ない?』
『ゼロは、強くなる為とはいえ空羅を殺害しようとした。人類からエゴは排除すべきものであるか?』
『デュイもまた、葵を守る為にゼロを殺害した。自分or親友or恋人、これは正しき選択であったのか?』
『鴛鴦がデュイへ抱いた感情による行動で、葵は精神崩壊を起こすことになった。嫉妬という感情は、人類には不要であるか?』
『幻斗は、デュイとの戦いで刹羅への償いをしようとした。死をもって償うという感情も、人類には不要ではないのか?』
『紫水は、大いなる力を得たことで、守ることと失うことの判断が出来なくなった人間に過ぎない。神などではない?』
『空羅・幻斗・デュイ・ゼロ・葵も、強大な力を持つものを敵と判断した。殺意が生じたのであれば、正義ではなく悪意ではないのか?』
薹霊、、それは精神体なのだろうか
一瞬の静寂の後に、紫水と空羅の巨大な気がぶつかり合い、審判は下されていった。