第9話『モリガン』

 「死ぬんじゃよ〜!!」
昭兎は滝壷に立っていた。なぜかって?だって修行の旅に出たんだもの。
「えやっ!!」
昭兎は叫びながら滝壷を脱出した!
「ひきき・・・もう修行は終わり!!」
はやっ。こうして昭兎の修行は三時間で終わった。
ちなみにここはゲームショップドリームドリームから歩いて30分の山奥だ。
「きしり、もう美由紀さんの顔をみてないと元気がでないんじゃよね〜」
修行の成果はまったくでてなかった。
だがそのとき〜!
「だぁぁぁからおまえは、アホなのだぁぁぁぁぁぁ!!」
「えっ」
昭兎の上から声がしたかと思うと次の瞬間昭兎は地面に5メートルほど埋まっていた。
「うごっ、いきなりなにするんじゃよ〜!?」
「修行が足りんと言っておる」
「きしいししし!!お前なんなんじゃよ〜!!」
「お前ではない!!師匠と呼ばんか!!」
ひゅっ
ごすっ!!
「ウボァー」
男のまわし蹴りをうけた昭兎はなぜか溶けていた。
「ひどいっす!!」
「甘いわ!!わしのもとで修行するのだ!!」
「いやじゃよ〜」
「くらえーい」
「タスケテー」
こうして昭兎はなすすべもなく、謎の老人の修行を受けるハメになったのだよ・・・はやいな!!

 「昭兎君が旅にでてからもう一ヶ月が立つのね・・・」
ここはゲームショップドリームドリーム。
店長である相田美由紀がしみじみと呟いた。
「はやく帰ってきてくれないかしら・・・わたしには昭兎君が必要なのに・・・」
昭兎が聞いたらひゃっひゃっひゃとかいいそうなセリフである。
「昭兎君が帰ってきてくれないと経営できないのよお店」
・・・そうだった。ここドリームドリームではどのソフトを入荷するかとか、このソフトは何本くらい入荷するのかとかいったことはすべてゲーマーの昭兎が行っていた。
いわば美由紀さんは店のマスコットみたいな存在なのだ。
したがってドリームドリームは経営不信におちいっていた・・・というわけではないのだ実は。
美由紀はロリ好きの昭兎が惚れるくらいステキなおねいさまなので、一度この店にきた客は美由紀めあてに今度からはこの店に買いに来る。
美由紀が「あら〜、ちょっとわからないわ。どうしましょう」
といっても「このソフトはですねー」と客のほうがおしえてくれたりするのでなんとか今はもってる。
が、新作ソフトの入荷が遅れていた。
「わたしにはなにを入荷したらいいのかわからないのよね・・・」
とまぁ、そんな感じだ。
(にゃあ、僕ならいろいろ教えてあげられるんだけどにゃあ・・・)
昭兎の心の友、シロネコのシロは思った。
シロは昭兎と付き合う内にゲーム通になっていたのだ。
(でも僕の言葉を理解できるのは昭兎だけなんだよにゃー)
そうだった。なぜか昭兎はきししし!!
そのとき!!
「ただいま帰りました」
「昭兎君!」
「にゃああ!」
昭兎が帰ってきた!!
「お帰りなさい昭兎!!まってたのよ?」
そういって美由紀は昭兎を抱きしめた。が。
「やめてください美由紀さん・・・幼女ならまだしも・・・」
「え・・・ご、ごめんなさいね」
昭兎は確実に変わっていた。それは今の態度で明らかだ。
「どうしたんだにゃ?昭兎」
「なにが?」
「いつもなら美由紀さんに甘えるところだにゃ」
「そんな過去の話をもちださないでくれ、むしずがはしる・・・!」
「にゃ!?す、すまないにゃあ」
ちなみにはたからみてるとにゃあにゃあいってるネコに話し掛ける変なメガネ兄さんだ。
(いったいこの一ヶ月の間になにがあったんだにゃ・・・)
「ねえ、昭兎君。お店のことなんだけど・・・」
「ああ。やっときますから美由紀さんは適当に休んでいてください」
「そう?なにか手伝うことはないかしら・・・」
「ないですよ。いいから休んでいてください。いても邪魔なだけですから」
次の瞬間、店内は凍り付くほどの雰囲気で満たされた・・・。
そして永遠ともおもえる沈黙を破ったのは、シロだヨ。
「あ、昭兎お前なんてことを・・・!!」
「なにが?僕は本当のことを言ったまでだけど」
そういった昭兎の顔はひどく冷たかった。
「にゃ・・・どうしたんだにゃ昭兎!お前なんか変だにゃあ!!」
「そう?べつにふつうじゃよ〜」
「なんだにゃ?わけわかんないにゃあ!!」
バリーーーン!
シロは混乱のあまり窓を突き破ってとんでいった!
「あ、昭兎君」
「まだいたんですか?ここはやっときますから」
「う、うん。ごめんね・・・」
それだけ言い残すと美由紀は奥へとはいっていった。
その後ろ姿はひどく寂しそうだった・・・。
「からあげ、からあげ」
昭兎はからあげからあげ言っている。
そのとき〜!
「いらしゃいませ・・・」
昭兎はとまった。なぜなら幼女だったからだ。客が。
「ひゃっひゃっひゃ!!いらっしゃいじゃよ〜!!なにをお求めかにゃ?」
「あはは、変なお兄ちゃん!!」
「きししし!!お兄ちゃんってもっとゆって!!」
昭兎の態度は美由紀のときとはおお違いだった。
そんな様子を奥から影にかくれてじっとみているものがいた。
もちろん美由紀である。
(昭兎君・・・)
そしてもうひとつ、昭兎をみているものがいた。昭兎のめのまえで。