| シカゴの現在時刻と気温 | ||
エッセイ… 『アンタッチャブルのこと』 |
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| 私を風の街へと導いた大きな要素となっている映画『アンタッチャブル』は、「実話に依拠した虚構」ということになる。主人公のエリオット・ネスと、彼が追うアル・カポネは実在の人物で、エリオット・ネスが率いて“アンタッチャブル”と綽名された、買収を撥ね付けたグループが活躍し、アル・カポネを脱税で有罪に追い込み、彼をアルカトラス監獄へ送り込んだというのは史実である。「実話に依拠した虚構」は、誰の言かは忘れたが“小説よりも奇なり”と言われる事実の設定などを拝借し、非常に面白いドラマを見せてくれる。 『アンタッチャブル』については、日本でも嘗て放映されたテレビシリーズもある。私自身は残念ながら観ていないのだが、そうしたものが醸し出していた雰囲気とも相俟って、悪名高いギャングの領袖に立ち向かうエリオット・ネスは、犯罪に立ち向かう捜査機関として高名なFBIの捜査官か何かと思われがちである。が、彼は財務省の役人だった。史上殆ど例を見ない禁酒法について、密造酒や密輸品をを売買するなどの違反者を取り締まる任務にあたっていたのは財務省だった。日本では、最近由緒ある名称だった“大蔵省”が財務省に切り替えられたが、米国の財務省も、連邦政府の歳入・歳出に関連した事務や、連邦準備銀行などと連携した金融政策などを扱う場所である。米国財務省の一寸変わった役目を思い起こすと、彼らは大統領などの要人警護任務にあたっているシークレットサービスを指揮下に置いている。 これから映画を観る人の楽しみを奪うような野暮な真似にも繋がるので、作中のディーテールを語ることは“最小限”に止めたいが、エリオット・ネスは捗らない仕事に失意を覚えながら帰宅する途中、誇り高き老警官ジミー・マローンと出会い、彼を誘って4人の“特捜班”を結成する。が、実際には、エリオット・ネスは日本の役所で言う課長とか主幹というような立場で、ワシントンから十数名の部下を引き連れてシカゴに乗り込み、淡々と仕事をした。手段を選ばずに敵対組織を排除した-警察の手入れを装って敵対組織のアジトに制服着用の部下を送り込み、壁に向かって立たせて後ろからマシンガンを掃射して全員を殺害したという“ヴァレンタインデーの虐殺”事件などが知られる…-と伝えられるカポネ一家と対峙する危険な任務に取り組んだ訳だが、任務期間中に命を落とした者は居なかったらしい。静かな殺気を滲ませる、悪の領袖たるカポネは、劇中では荒っぽい言葉遣いをし、暴力も振るうが、実際の彼に会っている人たちには「物静かな紳士」という印象を残している。カポネの部下でフランク・ニッティという殺し屋が登場し、ジミー・マローンをマシンガンで殺害してしまい、更に映画の終盤で自身も絶命してしまう。が、彼は実際にはカポネが収監された後の組織を引き継ぎ、長くシカゴの暗黒街に君臨した。 というようなことだが、信じる正義を大切にし、それを護ることに矜持を持つというようなテーマを教えてくれたのは、「実話に依拠した虚構」の方である。映画で協力を一旦断ったジミー・マローンが、エリオット・ネスを訪ねて教会へ連れ出し、「とことんやるのがシカゴの流儀だ…エリオット…おまえはそれでもやるか…」と訪ねるシーンがある。好きなシーンである。何か新しいことを始めようとする都度、このシーンを思い浮かべる。こういう作品の舞台である「強くて偉大である」シカゴは、私を掴まえて離さない… |
| 2002年3月6日 管理人 タシケント |