家族いろいろ

武島 美香

「長男の君に贈るエール」を書いたのは、あれはもう6年前だろうか、その長男も15才、今やハイスクールのフレッシュマンとなった。時折、彼には気付かれないように、彼の顔をじっと見てみる、イアに骨っぽくなっている。本人曰く「俺、この頃やつれてんだ」等と言うが、やつれているんしゃない、男の顔になってきたのだ。「ヤダ、私の生んだ子、こんなにゴツゴツしてなかった」と目の中でつぶやく、お風呂から上がって下着をつける時、見てはいけないような、見てしまった!と思うようなものを発見する。ミドルスクール時代、ちょっとしたイジメやケンカ等という問題にぶつかり、友達も少なく何事にもそれ程積極的ではなかった彼は、ハイスクールをどこにするか自分で決めた時点で、気持ちがフレッシュになったのか、スポーツにも精を出し、ギターに夢中になり、友達とも楽しそうにつき合っている。
男の子は自分で殻を脱いでいくのだと思う。寝起きの悪い朝のちょっとエラソーな態度…… 「アンタ、チョームカツクノヨネ」等怒ってみるけれど、フレッシュマンになった君を、心の中の新しい窓から私ものぞいている。―――ガンバレ!!とやっぱりエールを贈っている。

次男坊物語に登場した彼は、いまひとつ背がのびないような気がする。しかし、分厚い健康的な身体、XLのTシャツ、内折が流行りのGパンを外折に3つ位折り返し、彼はまだカッコマンではない。でも13才、8th Gredeなりの成長をしていると見える。わが家に歴然と輝くたったひとつのHigh Honor Roll成績4.0に対してもらえるリボン飾りのような物……何しろ4人もいる子供の中で、成績バツグンなどという状況には行き当たったことがないのだから、彼がそれをもらって来た時、私は成績いい子を持つ世の中の親に気持ちっているものが分るような気がしたのだ。「ヤッタネ!任天堂64買ってあげちゃうもんね」とはしゃいだ母親だった。家庭教師とか、親のヘルプとか無縁だったから、彼が得たものは評価してあげたいと思った。そして、この度は、階段2つ位踏み外しちゃったかなという成績……。でも私はこちらの方を評価してあげたい。
努力をしないで成績が悪かったとき、頑張って努力が実ったとき、頑張たけれど結果はいま一つだった時、私には3つ目の時が大切と思える。今の成績の悪さは、ただ何も知らず悪かった時とは違う、彼がそのことをよく知っている、それが大切だと思う。成績ならずともだ。「ママねえ、学校の勉強なんかより、いろいろなことを知っている方がずっと役に立つよ」と言う。「学校の勉強だって大事なのよ」と返事をしながらも「フンフン、いい事言うじゃない、そう雑学ってのは、生きるのに必要なのよ。だから本をたくさん読むのよ」と思う。でも彼はマンガばかり読んでいる。「マンガはいいよお」と言いながら……。ま、いいか、今はしばし目をつぶっていてやろう。マンガだって悪くない。やがて世の中のいろいろな事を知りたくなった時、彼は自らマンガじゃない本のページをめくり、自分の中のページもめくるだろう。

三番目、たっと一人の娘。いつか花咲くShinoと書いた娘もまもなく11才、Discovery Zoneで弟と遊び、ご機嫌な彼女を私はまだまだ……とみくびっている。でも私の知らないところで、彼女は爽やかにつぼみをふくらませている。ハロウィーンの日、学校のパレードでhandicap classの友達と手をつないで歩く娘の姿を、私は誇らしく眺めている。

もうやめなきゃと思いつつ、「あ、そうなんの」と言わず「ア、チョ―なの」と返事をしたくなる末っ子6才の男の子、4人目の理屈抜きのかわいさは、私自身が4人目で"こうして愛をもらった事"を今になって確認させてくれる。

サラリーマンの渡世人(やくざ)、と書いた夫は今も変わらず、Unitedに乗って飛んでばかりいる。出張から帰ってきた翌日は、子供達にせがまれて食事をしようといわれ、いいよ!と機嫌良くOK。ビールのジョッキーをかたむけ、いつも機嫌のいい夫が更にゴキゲンだ。食事が終り、帰宅してからも息子達を相手に大きなお腹に息を切らしながらレスリングなどして遊び、寝る前に突然「明日またボストン」と言う。エ―ッ?!「ママ、家族の写真頂戴よ、出張に行くと淋しいんだからさ」酔ってもいるから、甘えてせがむ。「イヤダ、なんかこんなの……もう帰ってこないみたい」急に感じた小さな不安に、夫とは反対に無口になった私は、ゴソゴソと荷作りをし、小さなアルバムに、私の見事に(?)横たわる写真や子供一人ひとりの写真を入れ、ついでにお守りも入れようと思い立つ。たしか、どこかの神社のお守りがあったはず……等と探すが見つからない、とりあえずこの際かまっちゃいられないと、4人目が生まれた時、彼にもらったお札を入れる。家内安全とか、何とか……ちょっと方向が違うかなと思いつつ、「ま、神さん許してくれはるやろ」という心境。
夫婦って面白い、そして繊細。ちょっとした言葉のやりとり、しぐさ、相手に対する反応等、無意識にしていることでも、ひとつ間違うと自分から、そしてほんの小さな事から幸せを壊す事だってある。夫婦ならずとも人間みなそうかもしれない。注意深くはいられない自分の性格……でも人を感じる気持ちを乾かさないでおきたいと思う。
気をつけて行ってきてね。Unitedさんたのんまっせ!

そして私―――思えば恥多き人生だった。なんてまだ終っちゃいない。日々暮らしの中で、喜怒哀楽いろいろやってくる。トイレの便器洗ってて跳ね返った水が、顔にピチャと当たり「何で私がこんな目に合うのよう!?」とそんなことでも情けなく思えたり、更年期と騒げば、抗年期とかからかわれ「所詮、女の身体の内部まで男は見えないものさ」とちょっと枯れていく心境だったり、「うん、頑張らなくちゃあ、私がやらないで誰がやる」と40代人生盛りのような気もしてみたり、忙しいがお蔭様元気にくらしています。
家事、子育て、人付き合い、そして力不足ながらも社会の中で少しはやるべき事も立場もある今の私、年と共に強くもなり、もろくもなり、知恵をつけ、反面ずるくなり、人に優しくなったかと思えば、きつくもなり、相反するたくさんの自分に流され、動かされ……まだまだ人間これからの私です。
お蔭様で、みんな、みんな元気に暮らしています。
家族、いろいろ彩りながら……。

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