ヤドカリの秘密

田中 有規子

自然の摂理は、人がいかに自然体で生きる事が難しいか教えてくれます。そして、人が自然体で生きようとする時に、心のやさしさを取り戻せるかもしれない. . . と思いますが。

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多分、多くの人が知らないヤドカリの秘密。

春、友人からもらったヤドカリ君があまりにも水槽の中であばれ回るので、これはきっと新しい宿を探しているのだろうと、小さい貝殻から大きいのまで、4種類ほど用意してやったのです。(子供の頃、こうしておくと、ちゃんと宿換えをしていましたから)ところがこのヤドカリ君、何が気に入らないのかいっこうに宿換えをしてくれずタダあばれて運動でもしていたいのかと放っておくことにした。でもエサはよく食べるし(友人はエサはあまり食べないと言っていたのに...)なんだか少しずつ大きくなっていくようで . . . このヤドカリ君、貝殻が窮屈で窒息しないかと心配でたまらなくなってきた。

そんなある日、急に動かなくなって、朝起きてみたら胴体から半分に切れて死んでしまっていたのです。

イエ、死んでしまったと思ったのです。バカなヤドカリ、サッサと宿換えしないから、ホラやっぱり死んじゃったじゃない。あんなに貝殻入れてやったのに、好き嫌い言うからと私。末っ子は末っ子で二日程前に「ヤドカリの実験」等と言って、理科の観察記録の為にエサをいろいろに変えてやったり、ツツイたりしていたので、私に「小さい生き物はストレスだけでも死ぬから」と言われたのを信じて、自分が殺してしまったと内心気に病んでいる様子。「お墓作らなくっちゃね」と言うと「もうちょっと置いておいて」 . . . . . と10日程たったある夕方、何気なく水槽に目をやると「ギョッ」突然ヤドカリが2つになっている。何が何だかわからない。死んだと思った死骸のヤドカリと、何やらワケのわからない貝殻から這い出しそうな新顔のヤドカリ!!「エ――ッ。どうして?子供が生まれたの?エ――ッ。どうして。ネネネ!!」大声をあげて子供たちを全員集合させてしまった。「ネこれ何?ネ何?」私の頭の中はパニック。

4人の知恵をふりしぼって.....「エッ。もしかしてこれって抜けがら?ヤドカリって脱皮するの?」末っ子がよくよく古い頭と足のカラを見ると、中はカラッポ。死んでいたら中にお肉が詰まっているハズ。「そうか、脱皮するのか、いい子、いい子。」まだ頭と足のカラが出来上がっていないヤドカリの回りで大騒ぎ。「ヨカッタもうそっとしておいてあげようね。」

翌朝、昨日のままのヤドカリ. . . . まさか. . . . ウソよね . . . .ネェ、動いて、子供たちが起きてきて「どうしたの?」「動かない...」「ママ、大騒ぎして大声だしすぎちゃったのかな」「ソウダヨ」みんなが責める。「ウン、でもね、カラを全部作るエネルギーがなかったからよ。」と小声で言い訳した。

自然のやさしさと厳しさを思いっきり体で教えてくれたヤドカリ君でした。

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