一段と厳しくなった米国移民法
桧木陽子
私の所属するジャパンクラブ(永住権保持者でつくる親睦と相互扶助を目的にした組織)から、先の新福祉法につづいて、またも今年の4月1日より施行される移民法の改正条文を知らせてきました。今回の移民法改正は在留邦人に大きな影響がありますので、まだご存知ない方のためにジャパンクラブの了解を得まして『話の種』にも掲載させていただきました。当地にお住まいの日本人の方々に関連すると思われるいくつかの条項は次の通りですのでご参考としてください。
(以下抜粋)
96年9月30日にビル・クリントン大統領は*Illegal Immigration Reform and Immigrant Responsibility Act*という名の改正移民法に署名し、同日施行されました。これは過去10年間で改正されたもののなかでも、もっとも厳しい法律であると言われています。
(1)査証の取得(本改正法第632条)
I-94(出入国記録カード)が期限切れとなればその時点でビザも失効する。これは1996年9月30日以前に発給された非移民ビザにも適用される。 この失効したビザを更新するには、在留邦人の場合は、一旦日本に帰国して日本国内に所在する米国大使館又は総領事館にて再発給を申請しなければならない。(今後日本以外の国「カナダ、メキシコを含む」で新規のビザを取ることはできない。)
(2) 滞在期間を越えての滞在(overstay)(本改正法第301条)
1997年4月1日以降、所持しているI-94(出入国記録カード)が期限切れとなった者は渡米した日より3年間、1年以上不法滞在していた者は`10年間、米国への入国を認めない。ただしI-94の期間満了前に、滞在期間の延長願い、又はスティタスの変更願いを移民局に提出し、その間不法就労に就いていない者は、滞在許可が失効しても申請中の滞在期間は最高`120日まで不法滞在期間の累計から外される。 尚、18才以下の者は、再入国禁止条項を免除される。
(3) 外国人学生(本改正法第625条)
(ウ) 公立の小学校又は公立のAdult Education Program(成人向け講座)にて勉学する者へのF-1ビザ発給は行わない。
(ロ) 公立中。高等学校(Secondary School)にて勉学する者の場合、 F-1ビザが発給された場合でも有効期限は1年以内とし、教育費を払わなければならない。
(ハ) 私立の学校で勉学するためにF-1ビザを取得した者は、公立の学校へ転校する場合は、ビザの発給条件違反とみなされる。(公立のAdult Education Program及び公立のAdult Education Language Trainingを含む)但し、公立のSecondary Schoolへの転校の場合、在校期間が一年未満でかつ学費の納入を行った場合を除く。この様な転校等によってビザの発給条件を度々違反した者についてはビザの再発給を5年間行わない。尚、625条の実施 は改正法制定日から60日後。(96年12月以降)
(ニ) 1996年9月以前にF1ビザを取得している大学留学生に関しては、この改正法は適用されない事になっているが、所属大学で確認するようにしてください。
(22) 就労資格の検証(本改正法第412条)
就労資格の有無を調べる為に使われる書類の中から米国帰化証明書、米国市民権証明書及び外国人パスポートを削除する。よって、就労資格の検証のために従来使われていた外国人パスポート及びI-94フォームの代わりに移民局により、Employment Authorization documentを取得するか、Social Security Card及び運転免許証の提示が必要となる。本条件の条項の実施は1997年9月30日以前の司法長官の定める日。 以上が皆様に関係ある主な条項と考えられますが、本件は米国の移民法改正の問題ですので、個々の邦人の滞在資格につき疑問や不安があります場合には、各人において移民局なり弁護士に相談されるようお勧めいたします。
何よりも大切なことは不法滞在者にならないことですので、ご自分の在留資格(I-94)が有効か、特に入国時にどの様なスティタス及び期間が付与されたか、よくご確認の上、期間内に所定の延長手続きを忘れずに行うことが肝心です。
次に移民法改正が永住権保持者へ与える影響としましては、今回の改正では直接適用される部分は特に見当たりませんが、移民法の運用強化に伴って起きると思われる点を移民法専門家にお聞きしましたので要点をお伝えします。
《問》―何故,移民及び非移民に対して移民法が改正・運用が強化されたのですか。
答―主な理由は、連邦議会が移民を減らす方向に進んでいるということです。そのプロセスとして各国にある米国大使館や領事館のビザ申請に対する審査が厳しくなりかつビザが発行されるまでの期間が長くなりました。又、これまで以上に色々な書類の提出を求められるようになりました。 特に非移民ビザの場合は、担当係官は提出書類を良くチェックし、申請者が、いづれは母国に帰るかを見極めます。チェックする材料としては、申請者の経済的なバックグラウンドや、米国での家族関係などで、少しでも帰国の意志がないと思われるフシがあると、ビザの申請は却下されます。
《問》―配偶者を母国から呼ぶ場合も永住権の取得は難しくなっているようですが。
答―永住権保持者と結婚した人は、最低でも4年くらいは待たないと永住権が取得できません。 配偶者になる人にアメリカ市民権があっても難しいケースがあります。配偶者ではなく、家族でもそうです。兄弟が永住権を取得しようとした場合、最短で10年くらい待たないと取れません。優先順位がありますので、長い人で19年という人もいます。日本人の場合は短くて10年でしょうか。申請中は取得できるまで本国で待っているか、別のビザを保有してアメリカ国内で待つことができます。
永住権が取得できる優先順位によりビザが与えられる人数が限られているためです。ところが投資を目的とした永住権取得でしたらこれは非常に早くできますが、それでも家族全員が永住権を取得するということは大変難しいですネ。
《問》―180日以上アメリカに不在の永住者(グリーンカード保持者)は非移民と同じような入国手続きをしなくてはいけないと聞いたのですが。
答―継続して180日以上アメリカに不在の永住者は永住権を断念あるいは放棄していないことを示さなくてはなりません。 @ 居住者としてアメリカで税金を納めていること。 A アメリカ国外へ旅行目的及び期間は一時期的なものであること。 B 近親家族及び経済的な絆をアメリカ国内で維持していること。 以上を移民官は総合的に判断して、永住を続ける人かどうかを決定します。 〔注〕永住権保持者で180日以上不在予定の方は、アメリカを出発する前に再入国許可予定の申請をする事が大切です。
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