ある日バートステーションで

..................................若月 由紀


 East Bayで生活を始めてやっと一年程になります。まだまだ馴れない事も多く、 いつもつい「ああ、日本だったらこんな物はこうしているのに...」と思う毎日です。
 そんな私に先日とてもハッピーなアクシデントがありました。Bartの駅のホームで、 私は電車が来るのを待っていました。その日は又いつもの事で、 ポイント故障か何かで電車が遅れていました。私は特に急ぎの用ではなかったので、 ただぼんやりと待っていました。隣に座っていた中国人らしい女性と「また遅れてるわネ」 という様な会話をしていたのですが、突然彼女が私に「あなた日本人?」と聞いてきたので、 そうだと答えました。すると彼女が「切符売場のあたりで日本人の女性が倒れていたの、 救急隊が日本語のできる人を探しているわ。すぐに行ってあげて!」と言うのです。
 あわてて私は階段をかけ降りて行ってみると、 私と同世代位の女性が酸素吸入を受けて横になっていました。 私が日本人である事を救急隊に言うと、彼らは「やっとみつけたゾ 日本人!!!」 という感じでした。幸いにもその女性は疲れかあるいはカゼからか、 貧血状態になって倒れた様で特にケガもなく、 その後一時間程安静にして友人に迎えに来てもらいました。その間、 救急隊員は考えられる症状を細かに質問し、私がつたない通訳をしました。
 全て事が終了し、救急隊が引き上げる際「本当に心から感謝しています。 あなたは今日はヒーローですヨ」と言ってくれたのがとてもうれしく、こちらの方が「ありがとう」 という気持ちでした。その上驚いたことに、Bartの駅のマネージャーにもとても感謝され、 「今日のランチは私がおごりますヨ」と言って私に6ドルを下さったのです。 私はマネージャーのその暖かい人柄にとても感動しました。
 この事件があってから、私もいつ何時病院へ行っても、 ある程度自分の症状や病歴を言える様に心がけようと思いました。

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