シェラ山中の渓流釣り(5)

「カプレスクリークのブラウントラウト」

..................................山下 昭男


 カプレスクリーク(Caples Creek)は、サクラメント川に流れ込む大きな支流 (例えば、ユーバー川やフェーザー川など)のひとつであるアメリカンリバーの南また (South fork)に流れ込んでいます。シェラ山中では比較的小さな川です。
 夏も半ばを過ぎる頃、釣り道具や弁当、スナック類、 まれに氷を詰め込んだアイスチェストを車に積んで、サンノゼから280号、 680号の高速道路を東に突っ走ります。金曜日の夜`10時頃に出発して、 夜明け前に目的地に到着します。サンオーキンバレーの町、ストックトンから88号に入り、 かれこれ4, 50分ぐらい走ると、その昔ゴールドラッシュの時代に、 金が見つかって栄えたといわれる町ジャクソンを通ります。そしてここから88号は、 急に険しい山道になり、曲がりくねって、昇ったり、下ったりの連続になってきます。
 山道を約一時間も走ると、目的地であるカークウッドキャンピング場に来ます。 88号から小さい泥道を左に曲がり、谷間におりて行くと、 シェラ山地特有の松林に囲まれた小さなキャンピング場に着きます。毎夏10年間、 通い慣れた道のりです。

 キャンピング場に車を止めて、夜が明けるのを待つのが常です。 いつものことながら楽しい釣りを思い浮かべると、つい興奮して、 夜通しドライブしてきたというのに一睡もできない状態です。
 あたりが薄明るくなってくると、手製の毛針、テーパーラインなど、 必要な釣り具がぎっしり入ったフィッシングベストを身につけ、バックパックにはランチ、 スナック、缶入りドリンクなどを詰め込み、愛用の毛針竿を入れたロッドケースを背負い、 その上にウェイダー(胸までくるゴム長ぐつ)をかついで、小さな岩山(50mぐらいの高さ) を登ってキャンプ場から反対側の谷間へと降りて行きます。この谷間の方がずっと深く、 約400m降りると、フラットな谷底につきます。谷底には、松林の中をぬって、 人の踏み跡ができた小径をたどって歩きます。小またで、でもかけ足の早さで、 川岸に近づいてきます。川の水量と濁り具合が気になるので、 釣りに適した水量とにごりのない澄んだ水かどうか早く見たいからです。

 時折、雷雨に見舞われる山岳地帯は、川の水量が多かったり、又、水がにごっていたりします。 このような時はせっかくの夜通しのドライブも無駄になってしまいます。早速、釣り具を準備し、 ウェイダーを身につけながら、自分自身に言うのです。「今年も、 私の川に無事に来ることができて良かった!!」 何度も同じ川に通っているうちに、 そこが自分だけの川になったような気がしてくるのです。

 愛用の毛針竿の短い方を(長さ3.2m)をケースから取り出して、手製のテーパーライン (長さ3.5m,重さ6Lbsのラインを7本にたばね、部分から3本たばねテーパーをつけて作ったもの) をつけます。
 一番好きな自作の毛針はマスダット3808型の針でサイドが#8、しっぽにウッドダック (あひる)の腹毛(レモンサイド)を使い、胴下巻きに茶色のフロスを巻いて、 その上にクジャクの毛を巻きつけて、胴を仕上げ、最後にニワトリ (グリズリー、白と黒のまだらの毛)をみの毛として巻き付けたのです。

 カプラスクリークでの釣りの秘訣は、川の両岸に岩が重なりあっている場所は、 比較的魚の影は少ないのです。 両岸がシェラ山地特有のボサでおおわれている場所が魚が多く残っています。
 ボサの切れ目から川の中に入り、川下から川上へ向ってポイントからポイントへと毛針を打ち込んで 行きます。淵じりで川が浅くなってしまう直前に深みから飛び出すように出てきて毛針を食わえるのが マス科の魚の習性です。
 そしてその川では、ジャーマンブラウントラウトがよく釣れます。この川で生まれ育ったのか、 細身の体形に黄緑色の地色ブラウントラウト特有のこげ茶色の斑点があり、 そして濃いオレンジ色の小さい斑点がくっきりと散らばっています。 釣り上げた瞬間の魚は大変美しいものです。魚の大きさは平均25cm前後、 時には30cm級の大きいものもあります。
 シェラの渓流が原産地であるといわれるレインボートラウトよりも、繁殖力が強いのか、 それとも山岳地帯の気候がブラウントラウトにあっているのか、 釣れる魚の90%以上がブラウントラウトです。

 このクリークは一度、はじめてのキャンプに家族を連れて行った場所ですが、 あまりにも釣りに熱中していて、暗くなってから戻ったので、 生後4ヶ月の長男を抱きかかえて家内が心細かったとひどく叱られた記憶があります。

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