−麗しき島−フォルモサ・台湾
 二つの中国 −− その1−−
進藤一英


中国大陸、上海に約3ケ月、台湾に約5ケ月滞在したわずかばかりの経験ではあるが、「二つの中国」についてお話したい。

一般的に、日本人の多くは中国も台湾も同じチャイニーズの国という感覚で捉えているような気がする。 一部は当たっているが、両方に住んで見ると、これはまったくの勘違いであることに気がつく。 感覚的に言うと、外国映画で日本を舞台にした時、いきなり変な中国人が出てきて「日本」を演じているようなもので、台湾人に言わせると中国と台湾は歴然と違うのである。

それでは、同じ中国語を話す二つの国で、どこがちがうのか?一つには両者の歴史的背景からくるもの、もう一つは地理的背景からによるものと私は思う。そこで話が少し長くなるが、国を理解するにはまず歴史的背景を知る必要がある、というのが私の持論なので、ここで少し台湾の歴史について紹介したい。

台湾には元々マレー系ポリネシア人の先住民族住んでいた。日本の歴史教科書では高砂族と称されている。 台湾は、ポルトガル人に発見され、“麗しき島−フォルモサ”−と欧米諸国の間では呼ばれていた。そして台湾は、発見されてから今日の中華民国になるまでに大きく分けて3度の外部侵略を受けている。

最初の侵略は、1600年前後を舞台にヨーロッパを制覇したオランダ。このオランダの支配は長く続かず、やがて大陸(中国は、明の時代)から鄭氏一族が台湾に来て台湾を支配するようになった。因みに、鄭氏の初代、鄭成功の夫人は日本人だった。この後、大陸 中国は清の時代に変わるが、イギリス、フランス、ドイツを始めとする欧米列強は、新たな領土拡張のため中国侵略に乗り出す。日本も明治維新後、期を同じくして領土拡張の野心に燃え、列強が大陸中国に目を注いでいる間に清と戦争を起こし、その結果台湾を割譲させてしまった。台湾は、いわゆる日清戦争の戦利品であり、2度目の侵略に遭遇する。日本による支配が約50年に及んだ後、第2次大戦の結果、台湾は中国に再度戻ることになった。実は、 台湾人に言わせるとこれが、第3番目の侵略になる。つまり、台湾を支配したのは蒋介石率いる国民党軍で、彼らは中国の内戦に負けボロボロになって台湾に渡って来た。

日本人の支配していた時代は,「良き時代」、蒋介石の国民党軍は軍部による武力支配であった。従って、もともといた「台湾人」と後から侵略して来た「中国人」との間でアツレキが起き、大陸から来た中国人による台湾人の虐殺、粛清が繰 り返された。 台湾人のお年寄りは、よく日本の時代を懐かしんだ、と言われるのはこの辺に起因する。日本の時代も台湾人との間で争いはあったものの、日本は鉄道、水道、病院等々を建設し台湾の 為になることをした、という点で評価されている。

今でも、台湾人と大陸から来た中国人とは区別されていて、中国から台湾に渡ってきた人々は「外省人・ガイショウニン」、と呼ばれ車の免許証等にも明確に、台湾人か外省人か明記されている。 現在、台湾の人口は約2千2百万人で台湾人、外省人の比率は9:1で、台湾に住む大陸中国人は肩身の狭い思いをしている。

現在、台湾の実権は国民党が握っているが、総統はオリジナル台湾人で懐柔策をとっている。台湾の歴史を長々と述べたが、この歴史的背景を知らないと「2つの中国」は理解出ない。

次に、地理的背景から違う点をお話する。これは、一言で言うと「大陸と島国」の違いと私は考えている。中国は陸続きで、過去において何度も外部の侵入に悩まされ、一つにまとまること自体難しかった。一方、台湾は島国のせいか台湾人同士の仲間意識、民族意識が強く、どちらかと言うと日本に似ている。 性格的に見ても、大陸中国人と台湾人とは異なる。 大陸の人はどちらかと言えば白黒をハッキリさせ 自己主張の強い人種で、「欧米的気質?」であるのに対し、台湾人は「情」や「気持ち」を重んじどちらかと言えば温和で、九州の延長線上にあるような感じである。

特に、台湾の田舎に行くと日本人を懐かしみ、おばあさんやおじいさんがしきりに声を掛けてくる。声を掛けられると普通は警戒するものであるが特に騙すというような事ではなく、「日本語」を話したい一心で声を掛けて来るのである。両者に共通する点としては、「声」が大きく、よくしゃべるということである。 いつでも、どこでもよくしゃべり、よく食べ、そしてよくお酒を飲む。中国人と比べると、日本人は本当にオトナシク遠慮がちに見えるかもしれない。聞くところによると、中国大陸には50数種の言葉が存在すると言う。いわゆる、中国語とは北京語を普通語にアレンジしている。日本でも関西弁や東北弁があるのと同じで、言葉が違うとなんとなく違う人と感じるのだそうだ。台湾においては、台湾語が有り台湾人は台湾語を話すが、外省人は話せないそうだ。話せてもアクセントでばれてしまう。

台湾はどんな国か? ここで台湾の典型的な例を揚げたい。台湾では、よく老板(らおぱん)という言葉を耳にする。これは、会社やグループの社長、リーダを指し、男でも女でも呼ばれるが、この老板には深い意味がある。つまり,老板と呼ばれる人は、シモジモの面倒を公私に渡りよく見る必要がある。周りから、尊敬され親しまれ、頼りがいのある人でなくては老板業はつとまらない。なんとなく、日本のヤクザの世界の親分的な感覚で、こんな点も日本的?と思えてしまうのは、私だけだろうか?

中国人と台湾人の違いと言われれば、総じて「冷たさ」と「暖かさ」の違い、「騙す」と「信じる」との違いと言ってしまっては言い過ぎか?

次回、「麗しき島」 フォルモサ・台湾−その2ーにてもう少し台湾について触れたい。 <台湾駐在>