..................................進藤 一英
「その1」を書いてから、かなり間が空いてしまいました。実の姉からは何度となく催促の電話、手紙をもらっていましたが、これまであまりにも超多忙の毎日で、考えをまとめる時間も書く時間も無かったのが一番の理由ですが、台湾をもう少し冷静に見てから書いた方が良いのでは、という気持ちになったのも事実です。そして、そろそろ書かなくては、と思っていたところ、丁度最近、台湾の李登輝総統が「台湾の主張」を出版したこともあり、それではワタシモも主張を?と思った次第です。
「その1」では、台湾と中国とは様々な歴史的背景から、両者を同一視することは出来ず、台湾人と大陸中国人とは全く別だ、という話をしました。今回は、更に台湾を紹介しつつ台湾と日本とを比較して、最後に「今の日本」に激励を送ってみたいと思います。
まずは、台湾語について少しご紹介したいと思います。オジサン、オバサン、ウンチャン、オートバイ、トマトにニンジン、オシボリ等々…。これは、皆さんも良く知っている「日本語」です。数え挙げれば切がありませんが、これらは、ここ台湾で台湾語として正式に認知されている言葉です。(中国語では認知されておりませんので、ご注意)最近では、「カラオケ」も台湾に根付いた言葉の一つです。これは、戦前に日本が台湾を統治した名残でもありますが、本来は台湾語と日本語は中国「唐」の時代に文化交流があった影響でもあると言われています。
言葉について言えば、台湾の人は最低でも二つの言語を話します。それは、台湾語と中国語(北京語)です。この二つの言葉以外でも、英語か日本語を話すので、三つの言葉を話すことが出来る人はざらです。日常会話では、台湾語と中国語を巧みに織り交ぜ会話しているため、最近中国語が聞き慣れてきた私にとっても台湾語になると全く分かりません。例えで悪いですが、飲み屋の女性同士の会話で、日本人の前で都合が悪い話になると台湾語に切り替えて会話しています。この辺が、われわれ日本人にとっては「ずるい」と感じる点でありますが、よくよく考えてみると生まれ育った小さい時から二つの言葉で会話していたのだから、しかたがありません。丁度、日本人が、ひらがな、カタカナ、漢字、外来語等々を文書の中でうまく使い分けるのと似ています。我々日本人は気にもせずこれらの字を巧みに使っていますが、外国人から見たら日本語は大変やっかいな言葉と思うに違いありません。
さて次に、日本と台湾を比較して感じる点を挙げてみたいと思います。一番感じられるのは、なんと言っても今や日本では失われた「大和魂」精神ではないかと思います。私自身「大和魂」とう言葉は知っていますが「これがそうだ」とハッキリとは分かりません。簡単に言うと「心、気持ち」がある、という表現です。こんな事を書くと、オジサン臭くなりますが、今の日本に「心、気持ち」はどこにあるの?どこかへ行ってしまったのでは?と思われるほど、今の日本は、日本を感じさせません。一方、台湾では、両親やお年より子供に対する「心、気持ち」が町中に溢れています。この表現は大袈裟かも知れませんが、普段良く見かける光景にあります。例えば、私の女房も寄稿した中で書いていますが、バスや電車内でのお年よりや子供に対して、必ず誰かが手を差し伸べ席を譲る光景に出会います。また、台湾社会では、「一家の長」を重んじる風潮があり、会社でも課のボス、事業部のボス、社長等々それぞれの長」は「老板(ラオパン)」と呼ばれ尊重されると同時にその老板は、下の面倒を良く見なくてはいけません。金銭面で言えば、老板は金払いが良く、いわゆる江戸っ子のように「きっぷの良いところ」を見せないと老板業は勤まりません。従って、上に立つ老板は大変辛いのです。結構、見栄っ張りです。世界一多くのベンツを保有している国は台湾であるという事実について、皆さんご存知ですか?メンツでベンツとは洒落にもなりませんが、老板のメンツでもあるわけで、ベンツが多い理由もうなずける気がします。
話は変わって、台湾の家庭は大変教育熱心でもあります。基本的に、日本をはじめ、アジアの国々は勤勉な国が多いですが、台湾は生まれた時から始まっています。これは、台湾人一種独特のリスクマネジメントの一環であると私は思っています。つまり、少し裕福な家庭の人で、少しでも海外で子供を産む機会があれば、子供を産む国を選ぶところから始まり、子供に教育させる場も台湾にこだわらない、ということです。これは、台湾が未だ多くの国から「国」として認知されていない、という悲しさから来るのかも知れませんし、中国の脅威を常に感じているところから来るのかも知れません。この辺は、残念ながら我々日本人には分からないところです。他にも色々と有りますが、話が長くなるので、これくらいに止めておきますが、少しは台湾についてご理解頂けたでしょうか?読んだだけでは分からないと思いますし、住んでみてもまだまだ分からない点が多々あります。これまで、書いたことは、あくまで私の主観であり、誤りが有ればご容赦下さい。
但し、今の日本と台湾を比較してハッキリ言えることは、台湾は「着実に発展している」ということでしょうか。そして、多くの人が目標を持ち、多くの情熱を傾けてエネルギッシュに活動していることです。日本を離れてわずか1年余りですが、翻って、他国から第3者の目で冷静に日本を見てみると、何んとなく「物足りなく」、「ガンバレ」と声援を送りたくなります。そして、もっともっと日本の良い所はあるハズなのに、どうして外に向けてアピール出来ないのかと思うのは私だけでしょうか。日本人であるだけに、何か今の日本は「歯がゆい」気がしてなりません。今は、ここ台湾で「何か台湾のために役立つことを」と思うとともに、「日本のために何かを」と大それた考えを持ちつつ、日々の雑務に追われているのが現状です。これからも色々な視点から、台湾を見ていきたい考えていますが、とりあえずフォルモサ「台湾」−麗しき島―は、これで完了とさせて頂きたいと思います。
(台湾在住)
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