アメーバ経営とは,京セラ創業者の稲盛和夫氏が1960年代に考案した小集団部門別採算制度である。その狙いは全員参加,利益意識の醸成,よく見える経営,トップダウンとボトムアップの調和,リーダーの育成などにある。製造ならば工程毎,営業ならば顧客毎などに10人前後のアメーバと呼ばれるミニ・プロフィットセンターをつくり,お互いに生産物やサービスの売買を行う。時間当り採算と呼ばれるシンプルな付加価値計算法,家計簿のような採算表,月次決算制などのユニークな管理会計ツールを用いながら,リーダーは経営者の立場でそのセンターのマネジメントにあたる。ただし,アメーバが全社戦略から離れ,利己的な経営を行わないよう,京セラでは理念教育に力を入れ,組織の隅々までトップの考えを浸透させている。アメーバ組織は環境変化に応じて柔軟に分裂,統合するという特長も持つ。1990年代以降,アメーバ経営を導入して業績を改善する企業が増えている。
→ミニ・プロフィットセンター経営
発注した商品が仕入先から到着するまでのリードタイムにどれだけ売れるかが正確に予測できるならば,在庫システムに品切れや過剰在庫は生じない。需要やリードタイムなどの数量や時間の不確実性に対応し,品切れや欠品を防ぎ,サービス水準を維持するために必要になる在庫を安全在庫という。需要に不確実性が伴う場合には補充リードタイム中の最大需要と平均需要との差が安全在庫とされる。
電子商取引。インターネットなどオンライン上で商品情報の掲載,受発注,決済などの商取引を電子的に完結させること。企業と企業の間の取引に加えて最近では企業と消費者との間の取引が注目されるようになってきている。インターネットを利用した書籍の販売などが代表的な事例。通産省の支援を受けて電子商取引実証推進協議会が実用化にむけた実証実験に取り組んでいる。しかし,その普及には,セキュリティの確保,消費者の保護の他,国際間取引における課税の問題など解決すべき課題も多い。
現在の技術,経営および業務上の標準を維持することに向けた活動をいう。経営者の階層が高まれば,改善の余地がそれだけ高まる。下層のレベルでは,未熟練の労働者が命令書に従って自己の時間のすべてを維持の活動に費やす。しかし,仕事に慣れるにつれて改善を始める。つまり,個人の提案またはグループの提案を通じて仕事のやり方を改善しようとする。原価維持のためには,標準原価計算システムが用いられる。
→改善,原価維持
意思決定とは代替案の選択であるとみなされてきた。この見方には経済学的アプローチが反映している。ミクロ経済学の企業理論では,すべての代替案とそれらの結果を所与として,企業の利益を最大化する代替案が選択される。しかし,予測能力や知識の不完全性など人間の限られた合理性を前提にすると,このアプローチは企業の意思決定にはほとんど役に立たない。行動科学的アプローチが企業の意思決定の理解に大きく貢献した。このアプローチは意思決定を,1.代替案の探索から,2.代替案の結果の確定を経て,3.代替案の選択に至るプロセスとしてとらえる。この意思決定プロセスでは,部分的無知の状態で代替案が探索され,最大化基準ではなく,満足化基準によって代替案が選択される。言い換えると,企業の意思決定者は探索された代替案がすべての代替案であるかどうかを確かめないでも,欲求水準以上で満足をもたらす代替案がみつかれば,その代替案を選択する。選択された代替案が利益を最大化しているかどうかは問題にされないのである。このプロセス・アプローチは意思決定を目標達成のための資源転換プロセスとして構成し,種類の異なったいくつかの意思決定に分割するが,特に戦略的意思決定と業務的意思決定が重要である。
→戦略的意思決定,業務的意思決定
建設(土木・建築等)や造船に係る業務は,一般的には,発注者がその専門たる業者に当該工事の全部もしくは部分の完了を委託する形態で実施される。このような状況の工事を請負工事という。請負工事の会計は,個別原価計算によって工事原価を測定し期間損益計算にデータを提供するが,工事期間が長いものが多く,その収益の認識には,工事完成基準と工事進行基準とがあるが,近年は期間の業績を重視し後者を尊重する傾向にある。
→工事収益
企業の経営活動において,企業が保有する資源を円滑に運転するために必要な資本であって,広義には流動資産合計の金額をさす。この総運転資本は固定資産として運用される設備資本とともに企業の総投資額を意味している。これに対し,狭義の運転資本は流動資産合計から流動負債合計を差し引いた金額をさし,これを正味運転資本と呼んでいる。正味運転資本は,この計算式のほかに,自己資本合計と固定負債合計を加えたものから固定資産合計を差し引いたものとして計算される。正味運転資本は,総運転資本と違って,企業の財務流動性つまり企業の短期の支払能力をみるうえで有効である。加えて運転資本管理においては,運転資本増減表を使って,企業の運転資本の増減分析を行う。正味運転資本が企業の総資産・総投資額のなかで大きな額を占めることは,最近における財務管理論のテーマであるフリー・キャッシュ・フローとの問題とも絡み,新しい財務政策が要求されている。
→流動性分析,フリー・キャッシュ・フロー
法人税の課税所得の計算におけるプラスの計算要素である。益金は,資産の販売,有償または無償による資産譲渡・役務提供,無償による資産の譲受け,その他の取引で資本等取引以外のものによる収益である。ただし企業会計上の収益概念と税務会計上の益金概念には差異がある。それは,受取配当金などの(収益算入)益金不算入項目,および退職者分の退職給与引当金の取崩額などの(収益不算入)益金算入項目である。
マグレガー(McGregor, D.)は,古典的管理論と人間関係論とがよって立つ人間仮説に違いを認め,X理論とY理論を概念区別した。X理論では,人間は本来働くことを好まず回避しようとするものであるから,強制され命令され罰をもって嚇かされなければ組織目的の達成に努力しようとしないものとみなされる。この人間仮説にもとづいて,トップダウンによる管理が肯定される。予算を始めとする会計的コントロール・システムは,したがって,部下を強制するコントロール手段とみなされ,不利差異が強調され,懲罰的コントロールが正当化される。
→Y理論
エンパワーメントとは,常に変化する経営環境下で,顧客と従業員の満足を組織の成果に結びつけるため,共有化された価値観とビジョンにもとづいて組織成員がニーズに対応するような自発的行動がとれる条件を整備し,その行動を支援することをいう。そのためには,個人の信頼感の育成,組織分化のなかの信頼とそれを支える組織構造やシステムづくり,学習する組織と自己管理できる個々人から構成されるチームが回すPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルが不可欠である。現代の情報技術の発展は,現場従業員にプロセスや市場の情報をリアルタイムに与え,彼らが顧客ニーズへの即応性,変化への柔軟性という競争要件を満たせるような基盤を与えている。エンパワーメントの成功のためには,ボトムアップでオペレーショナルな情報が現場から経理部門に流れ,その財務的実績と計画値とのギャップの修正などを通して,現場の自主的統制を促進する役割が管理会計にも期待されている。
→QC,情報技術,プロセス,リエンジニアリング
リース,金融派生商品,外部に拠出した年金資産などは,会計上の資産・負債とは認識されず取引金額が貸借対照表に計上されないことがある。これらを貸借対照表に計上するか否かを含めて認識・測定・開示方法が会計上の問題となっている。オフバランスは広義では後発事象,偶発債務,教育・訓練費用,自社開発による特許取得,資産含み益など貸借対照表に計上されない事象を意味することもある。