パーシャル・プラン

partial plan

 分記法ともいう。標準原価計算において,製品の完成時から標準原価を計算し,これを複式簿記機構に組み込む方法。この方法では,仕掛品勘定の借方は実際原価で,貸方は標準原価で記帳される。また,標準原価差異は仕掛品勘定で把握される。なお,パーシャル・プランは,標準原価差異の把握方法としてはアウトプット法と結びつくことが一般的である。
→シングル・プラン


配賦

allocation

 通常は,2つ以上の原価計算対象のために発生したコスト(間接費)を当該原価計算対象に配分するための手続きをいう。配賦は直接費の集計方法である賦課に対して用いられる。配賦とは間接費の直接費化にほかならない。間接費を配賦するには,配賦基準を必要とするが,どのような配賦基準をとるにしても正確な配分を行うことができないという意味で,配賦は恣意的であるといわれる。配賦基準としては,間接費以外の原価時間数量が用いられる。配賦基準として何をとるかは任意であるが,間接費の発生と最も関連のある基準,間接費の高い割合を占める原価要素と関連する基準が選択されるべきことが勧められる。


バッチ

batch

 特定種類の製品を非連続的に生産することをバッチ生産といい,連続生産と対比される。バッチ生産には,ロット(lot),注文生産という2つの変形がある。このうちロットとは,材料,部品または製品などをある目的のために一定数量にまとめた単位をいう。そのなかに含まれる数量はロット・サイズと呼ばれる。通常,ロットはバッチと同様な意味に用いられている。


販売促進費

sales promotional costs

 狭義の販売促進費とは,広告および人的販売費以外で販売を促進する活動に要する費用をいう。販売促進活動には,景品,報奨金,無料景品,スペシャリティ広告(カレンダー等に企業名を印刷したもの等)がある。広義の販売促進費は,上の定義のほかに広告費を含むことがある。この場合には広告費および販売促進費と称され,非人的販売費である直接販売費と対比される。販売促進費は販売活動の前に支出され,経営管理者が予算の設定時に承認した金額が実際の営業量に関係なく発生する。このため,必要と考えられる販売促進策をそれに要する費用の見積りとともに提出させて検討することが重要である。また,販売促進費の統制としては,計画された業務がその質と量で実行されているかどうかを見ることに重点がおかれる。


標準原価

standard costs

 特定の製品を製造するために発生する原価を科学的に予定した原価を標準原価という。ここで「科学的に予定する」という意味は,一定の設備状態および生産方式,一定の材料および材質,一定の工員熟練度などを前提としたうえで,時間研究動作研究などの工学的な手法,相関分析をはじめとする統計的手法をできる限り利用して,原価の発生額を慎重かつ客観的に予測・算定しようとすることである。このように設定された標準原価は,業務活動を遂行する際の達成目標としての規範性をもち,コスト・コントロールの際には,実際原価の達成目標となる原価である。標準原価は,この規範性の有無という点において,見積原価と区別される。

 製品単位当りの標準原価を原価標準という。原価標準は各原価要素の物量基準にそれぞれの要素の単位当り予定価格をかけて計算するが,コスト・コントロールのために標準原価を有効に機能させるには,物量基準を各責任センターごとに適切に設定することが重要である。
→原価標準


ファブレス

fabless

 fabrication(製造)を行わないこと。メーカー(製造企業)は,本来,研究開発・製品の設計・製造・販売という一連の経営活動を通して,ユーザーに製品を供給する。これらの活動のうち,製造を外部委託し,それ以外は自社で行う方式をいう。「ファブレス経営」ともいう。工場経費がかからず,製品開発・販売に専念できることなどの長所があげられるが,ノウハウの外部への流出や,製造技術の蓄積が困難といった欠点もある。


フィードバック・コントロール

feedback control

 あるシステムがそのアウトプットを測定し,その結果がシステムの目標の達成に向かっているか否かを判断し,必要な場合にコントロールを行うこと。コントロールに利用される情報はフィードバック情報と呼ばれ,システムのアウトプットの目標値と現実の測定値との差異に関する情報であることが一般的である。フィードバック情報にもとづいてとられるコントロールが目標値と測定値との差異を減ずる方向に働く場合,それは負のフィードバック・コントロールといわれ,その逆に差異を増大させる方向に働く場合,それは正のフィードバック・コントロールといわれる。負のフィードバックは,システムのアウトプットを目標に近づけるように働くため,システムの安定性を維持する効果をもたらす。経営管理のシステムに組み込まれているコントロールは,目標の達成を意図して行われるので,負のフィードバック・コントロールである。たとえば,予算管理原価管理における差異分析は,その代表的なものである。


VA

value analysis

 価値分析ともいう。ゼネラル・エレクトリック社の購買担当であったマイルズが,1947年に代替財によるコストダウンを図るために考案した方法である。その後この考え方を利用して,1954年に,VEの名で購入品のコストダウンに適用するために国防総省で採用されるようになった。わが国ではハインリッツによる資材費のコストダウン・ツールとして1960年のセミナーでは,Purchasing Analysisの名称で広められた。
→VE


不確実性

uncertainty

 意思決定論の領域において,すべての事象が100%の確かさで将来生起する世界を確実性の世界という。確実性の世界では,行為と結果の関係は一意に決定される。ところが現実的には,人間の行為と結果との対応関係は複雑であって,ある1つの行為から一般に複数個の結果が出てくる。そのうちどの結果が出てくるかは,そのときの「状態」に依存する。なぜなら,行為は人間にとってコントロール可能な変数であるが,状態はコントロール不能な変数だからである。不確実であることの意味は,コントロール不能な変数である「状態」について,各人が100%確実な情報をもっていないということである。

→リスク


物流費

logistics costs , physical distribution costs

 ロジスティックス物流)とは,サプライチェーン・プロセスの一部であり,顧客の必要条件に適合することができるように,産出地点から消費地点にいたるまでの財とサービスならびに関連する情報のフローとストックを効率的かつ効果的にするよう計画立案,実施,統制するプロセスである(CLS)。物流費はこのようなロジスティックスに要する費用であって,原材料・部品の調達費生産管理費および製品の販売にかかわる販売物流費の3つからなる。運輸省の物流コスト算定統一基準では,調達物流費販売物流費を取り上げている。機能別にみると,包装費輸送費保管費荷役費流通加工費情報流通費物流管理費となる。生産管理費としては,ロット費用が関わってくる。これは段取費,品種の切換えまたは新供給業者への切換え中の停止時間による資本ロス等であるが,その測定は困難である。


不働能力費

idle capacity cost

 遊休費アイドル・キャパシティコストともいう。販売量を上回る超過生産能力,すなわち経営能力が実際の生産に利用されなかった未利用(遊休)部分についての能力原価をいう。遊休能力は,将来も考えて形成・維持されている利用可能な能力と実際の利用水準との差となって具現化する。つまり,能力の完全利用状態を基準操業度に選択した場合,製造間接費操業度差異として示される。また,作業を中断した場合,その不働時間に対して支払われる不働賃金も該当する。


フラット型組織

flat organization

 経営管理階層のない,もしくは,階層の少ない組織形態をいい,トップの意思決定を敏速・正確に実施できるように経営管理階層の短縮化を図り,組織内のコミュニケーションを高めることを目的としている。したがって,企業では,部制や課制を廃止し,業務別グループを編成する形態で組織され,基礎研究のように個人の独創性を尊重し各自で研究テーマを探し出す業務に適している。


ポートフォリオ

portfolio

 もともと財務ないし証券投資の分野の用語で,所有有価証券一覧という意味で使われている。個別証券の魅力度だけで投資決定するのではなく,全体としてどのように組み合わせるかも重要である。たとえば,安定株と成長株を上手に組み合わせて投資をするなどがあげられる。こうした考え方が経営戦略論などでも転用され,製品ポートフォリオ事業ポートフォリオなどと呼称されることになった。
→ポートフォリオ・セレクション


What-if 分析

What-if analysis

 シミュレーション技法の一つである。ある変数を動かしたとき,目的関数がどのような影響を受けるかを測定する方法である。たとえば,販売価格を10%値下げしたとき利益がいくら減少するかを分析することをWhat-if分析という。なお,いくつかの変数を同時に変化させて目的関数への影響を分析しようとするとき,このような分析手法をWhat-if分析といえなくはないが,一般にはシナリオ・プレイングと使い分けている。