活動

activity

 アクティビティともいう。ある機能の目的を遂行するために必要とされる行為を意味する。たとえば,購買部門には納入業者の選定,価格交渉,発注,納期確認などの活動がある。ABCにおいては「製品が活動を消費し,活動資源を消費する」と考え,活動が資源と原価計算対象を結びつける役割を果たす。このとき,活動は原価の集計・測定単位として利用される。また,ABMでは原価低減のための管理対象として活動を利用する。ABCとABMとでは活動のレベルが異なり,一般にABCよりもABMで利用される活動のほうが詳細である。たとえば,購買部門の発注活動は,発注伝票の作成や電話による発注などに細分される。ABC/ABMでは,活動をできるだけ細分することが望ましいが,あまり細かくしすぎると費用もかかるので,費用効果を考慮して決定する必要がある。
→ABC,ABM,機能


監査

auditing

 事業体の経済活動など,ある特定の行為のプロセスまたはアウトプットが,その適否を判断するための規準に合致しているかどうかを証拠によって確かめ,その結果を利害関係者に伝達することをいう。会計監査経営監査システム監査環境監査など,さまざまな種類がある。高度な技能と経験を有している専門家によって行われること,および独立不羈の立場で行われることが,監査の本質的要件である。


間接費配賦率

overhead rate

 間接費実際発生額または予算額を関連する期間の配賦基準数値で除した比率のことである。配賦基準を金額にとれば,一円当たりの間接費配賦額,時間をとれば一時間当たりの間接費配賦額を指す。間接費配賦率には実際発生率予定配賦率がある。配賦基準数値として機械時間が用いられるならその配賦率はマシーン・レートと呼ばれ,直接作業時間が用いられれば,マン・レートと呼ばれる。


機会原価

opportunity cost

 二者択一原価ともいう。機会原価は経済学上の費用の一般概念として限界効用学派によって提示された。経済行動は代替案選択の過程である。特定の代替案の選択は他の代替案の断念を意味し,断念した代替案がもたらしたはずの収益獲得機会を断念したことにほかならず,選択した代替案から見ればこの喪失収益は原価である。これが選択した代替案の機会原価である。この収益は主観価値的要素を含む場合が多く,客観的測定には困難をともなう。その意味で,機会原価は原価計算や会計には馴染みにくい。しかし,各種の意思決定には重要な原価概念であることから,近年,機会原価への関心は高まり,その測定の研究が盛んに行われている。原価の本質は経済行為において生じる経済的価値の犠牲である。これを,喪失収益額で測定するか,現金支出額で測定するかにより,原価は基本的に機会原価支出原価に類別される。概念的には両者は対立関係にあるが,機会原価の測定が可能な場合には,両者は代替案選択の過程で補完的な役割を果たす。いま,A案は実行に300円,B案は実行に310円の支出原価を要するとする。これから判断する限り,支出原価の小さいA案を選択することになる。しかし,ここでA案からの収益が100円,B案からの収益が120円であることが判明していれば,A案の機会原価は120円,B案の機会原価は100円となる。これらを各々の支出原価に加味すると,A案の原価は420円(=300+100),B案の原価は410円(=310+100)となり,結果は逆転してB案を選択する方が有利となる。このように代替案の選択過程で機会原価は重要な役割を果たす。
→特殊原価


機会損失

opportunity loss

 機会損失とは原価予測の誤りから生じる損失をいう。機会損失が生じる原因は,原価予測の不確実性とか原価関数の予想原価パラメーターが何らかの原因で実際にシフトすることである。機会損失は意思決定モデルの実行やその評価において重要な概念である。


企業

firm , business

 企業とは,資本所有にもとづく事業の意思主体であり,事業のための所有単位資本結合投資組織資本組織等として把握される。既存の事業は,投資のための資本結合組織を媒介としてのみ成立・運営され,その結果としての損益もまた,この資本結合組織に帰属することになる。その意味で,企業は事業の主体であるといえる。企業は,個人企業から合名,合資,株式会社等の主体的形態としてあらわれるが,これは対象的には,貸借対照表貸方に資本諸形態としてあらわれる。つまり,借方=財産は事業を意味するのに対し,貸方=資本は企業を意味しているという見方もある。


キャッシュ・フロー

cash flow

 一般的には,資金の流出入額をいう。流出額をキャッシュ・アウトフロー,流入額をキャッシュ・インフローと呼び分ける。キャッシュ・フロー計算書ではキャッシュ・フローを,その生じる要因別に「営業活動によるキャッシュ・フロー」,「投資活動によるキャッシュ・フロー」,「財務活動によるキャッシュ・フロー」に分類する。これまでにも「資金収支表」を始めとして資金計算書に類似のものはあったが,それらの目的は主に企業の支払能力を評価するためであった。これに対しキャッシュ・フロー計算書は,それに加えて現金創出能力すなわち企業価値を評価する側面を重視する傾向を強めている。この違いを強調するために,「資金」ではなく「キャッシュ・フロー」というカタカナ名を用いたといわれている。一方,財務論などでは「フリー・キャッシュ・フロー」,「オペレーティング・キャッシュ・フロー」,「財務キャッシュ・フロー」などの概念を用いる。投資の採算計算や企業価値の算定のために使われる「フリー・キャッシュ・フロー」はネット・キャッシュ・フローとも呼ばれ,株式や社債の発行あるいは銀行借入などによる資金調達,それらの返済,配当や利息の受取り・支払いなどの財務・キャッシュ・フローを除いたキャッシュ・フローの純額である。わが国のキャッシュ・フロー計算書では,利息および配当金をどのカテゴリーに含めるかについて企業に選択の余地を与えているために,財務論のキャッシュ・フローと名称は似ていても概念は必ずしも一致しない。
→キャッシュ・フロー計算書,フリー・キャッシュ・フロー


キャパシティ・コスト

capacity cost

 原価をその発生源泉に着目して分類したのが,キャパシティ・コストアクティビティ・コストの区分である。企業活動の基盤には,まず,そのキャパシティ(経営能力)の準備と維持があり,そのために発生するコストがキャパシティ・コストである。一方,現実の生産活動を進めるためには,製品製造であれば,原材料や製造に直接的な作業人員の確保が必要であり,これらはそのような活動(アクティビティ)の進行に付随的に発生するコストであり,アクティビティ・コストと呼ばれる。伝統的には,直接原価計算損益分岐点分析の発展とともに,原価を固定費とに分析する方法が普及したが,この分類は,操業度の変動にともなうコスト・ビヘイビアに着目したものである。キャパシティ・コストは,そのような分類との対照では,一般的には固定的なビヘイビアをもった原価である。すなわち,キャパシティ・コストは,基幹設備の構築と維持とのコストたる減価償却費や付帯的な管理費として発生するし,それらの基本的な保守に関する人件費も生産活動の実践にかかわらず発生するキャパシティ・コストで,固定費である。原価をこのような発生源泉で理解,把握しておくことは,原価の動態的な状況に着目するよりも,コストを発生させる行動の管理を示唆するという意味において,より本源的な原価管理を成し得ると考えられている。キャパシティ・コストの概念は,1960年代から70年代にかけて大きな注目をされたものであるが,最近においても,ABC/ABMの展開のなかで,特に未利用キャパシティの測定と管理において,その概念が重視されている。
→固定費,アクティビティ・コスト


キャピタル・ゲイン

capital gain

 資本利得ともいう。投資有価証券有形固定資産などの長期運用形態の資産を売却した収入額が,当該資産の取得原価を上回った額をいう。具体的には,投資有価証券売却益,固定資産売却益として記録され,損益計算書上は特別損益の部の特別利益として計上される。キャピタル・ゲインは,当該資産保有期間に市場価格等が上昇したことによって発生したものであり,評価額に関する情報開示が求められている。


競争優位

competitive advantage

 企業をして他の企業よりも有利に競争させ,良い業績をもたらす決め手となるものをいう。一方では,企業の環境,すなわち,既存企業間の競争新規参入者代替製品売り手の交渉力買い手の交渉力との関係において発生し,コスト・リーダーシップ戦略製品差別化戦略集中戦略を追求することで確保される。また,他方「資源にもとづく企業観」によると,企業に固有の経営資源組織資源により実行できる戦略に違いがあり,その相違によって競争優位が生ずる。


金融派生商品

derivatives

 デリバティブとも呼ばれる。株式や債権等,既存の金融資産を原資産として,そこから派生したものということでこのように呼ばれている。先物取引(フューチャー),オプション取引スワップ取引などがある。株式オプション市場では,たとえば1000株を三ヶ月後に1株500円で売買する権利が取引される。買う権利はコールオプション,売る権利はプットオプションと呼ばれる。それらの権利所有者は権利だけの所有であるので,契約を履行する義務はない。


繰延資産

deferred asset, deferred charge

 繰延資産とは,役務の提供を受けこれに対する支出を既に行ったが,その全額を支出年度の費用とせずに,支出の効果の及ぶ数期間の費用とするために繰り延べられる項目をいう。費用の繰延項目であるため,貸借対照表上,資産の部に計上される。一般に繰延資産とされるものは,商法に規定する次の8項目である。創立費開業費新株発行費社債発行費社債発行差金開発費試験研究費建設利息。このうち,社債発行差金と建設利息は,会計学上,費用の繰延項目とはいえず,厳密な意味では繰延資産とはいえない。繰延資産のうち,創立費,開業費,開発費,試験研究費については,それぞれ会社成立後,開業後,および支出後5年以内に均等額以上を償却しなければならない。また新株発行費,社債発行費については,発行後3年以内に均等額以上を償却しなければならない。この他,社債発行差金については,社債の償還期限内に合理的に償却しなければならない。


経営資源

management resources

 企業経営に必要なる有形・無形の資源を意味する。有形資源人的資源(管理者,研究者,従業員等)と物的資源(物的資産,資本等)に分けられる。無形資源には外部環境に蓄積された資源(信用,企業イメージ,商品・ブランドイメージ等)と,内部環境に蓄積された資源(生産・販売の技術・ノウハウ・特許等,顧客・技術といった環境情報,経営・管理能力,企業文化等)があるだろう。


経営理念

management philosophy

 経営理念と一言にいってもその定義は,多種多様である。しかし,一般的に経営理念とは,組織目的の達成組織構成員の欲求の充足,ならびに当該組織の社会的存在としての意味の明示を目的に掲げられ,組織的意識決定および組織行動に反映される価値基準,あるいは行動指針と定義される。また,経営理念は,通常トップ・マネジメントによって創造され,社是社訓といった形で明示化される。


ケイレツ

keiretsu

 日本において典型的な産業を超えた企業の協調形態。長期的で継続的な取引関係を意味し,巨大メーカーを中心とするタテのケイレツと旧財閥系のヨコのケイレツとがある。役員の派遣や株式などの資本関係も見られる。特にタテのケイレツは,完成車メーカーと部品メーカーのように,密接な協調関係とそれにもとづく信頼関係をもたらし,コスト削減と品質向上を実現した。米国の自動車メーカーも内製率を引き下げることによって,またドイツの自動車メーカーもモジュール化を進めることで,ケイレツ取引を取り入れている。


減価償却

depreciation

 財務会計においては減価償却の本質ないし目的は,有形および無形固定資産の取得原価耐用期間(耐用年数)にわたり各事業年度に期間配分する,という費用配分原価配分)の会計手続きと考えられている。いいかえれば減価償却は,固定資産原価を減価償却費という費用に転換(変形)する,という固定資産の費用化の手続きにほかならない。したがって減価償却という手続きは,資産評価の手続きすなわち固定資産の売却時価による価値評価の手続きではない。また通常は取替法は,固定資産の費用化の手続きではあるが,減価償却とは区別して考えられている。管理会計においては減価償却費の原価としての意義はさまざまである。企業財務でも指摘されることであるが,減価償却費は代表的な非現金支出原価(非現金費用)である。したがって,減価償却の財務(金融)的効果について,減価償却は利益の内部留保とともに自己金融(内部留保)の手段であるといわれる。いいかえれば減価償却は固定資産を流動化する手続きであるということである。また減価償却費は原価計算上,製造用の施設・設備の減価償却費は製造間接費(月割経費)となり製品原価を構成し,販売・一般管理用の固定資産の減価償却費は期間原価となる。その他,減価償却費には長期原価,固定費(特に定額法による減価償却費の場合)などの管理会計上重要な意義がある。固定費に関していえば減価償却費は,経営能力(生産販売能力)を維持するための代表的なキャパシティ・コストであり,また物的生産販売設備や基礎的組織の維持費としての典型的なコミテッド・コスト(拘束固定費)である。
→コミテッド・コスト


原価態様

cost behavior

 生産量,売上高などの操業度,段取回数や注文回数などの活動量の変化に応じて原価がどのように動くか,反応するかをいう。この観点から,原価は操業度や活動量に応じて変化する変動費とまったく変化しない固定費とに分けられる。変動費・固定費という概念は相対的なものである。生産量と関連性のある操業度の変化に対して変動しない原価であっても,他の活動量に対しては変動することもある。たとえば,段取費や検査費は直接作業時間や機械加工時間には反応しないとしても,段取回数(または段取時間),検査回数(または検査時間)に対しては変動する。活動基準原価計算(ABC)のもとでは,ほとんどすべての原価は変動費として把握される。原価態様の調査・分析の結果は利益管理や原価管理のために利用される。
→固定費,変動費


原価中心点

cost center

 コスト・センターともいう。費用効果分析を行ったり,原価引き下げのための原価管理を有効に行うために,また正確な製品原価の算定のために,原価中心点を設定することが必要である。原価中心点は,作業センター機械センター,時には部門センター活動センターなどで計算される原価の最小集計単位をいう。原価中心点は,企画・開発・製造・販売・サービスなどいずれの職能領域でも測定される。一般には,製造領域における原価管理を効果的に遂行するため,責任会計上の原価責任を使用する場合が多い。それには,原価中心点に原価管理責任者が整然と存在しなければならない。
→費用中心点


原価要素

cost element

 製造企業にインプットされる製品生産のための生産要素を原価計算上,原価要素という。製造のために消費される原価を発生形態から分類すれば材料費労務費経費に分類される。原材料,労働および諸経費を生産工程に投入すれば,それらは製造原価となっていく。材料費は物品の消費によって発生する原価であり,労働用益が消費されることによって労務費が発生し,材料費,労務費以外で,電力,ガスなど,主として外部用益を利用することにより,発生するものが経費である。


現在価値法

present value method

 現価法ともいう。投資効果である将来のキャッシュフローを資本コストで割り引いて現在価値を計算し,投資総額との関係で,投資案の採否または順位を決める判断基準とする方法である。正味現在価値法収益性指数法からなる。現在価値法では,各年のキャッシュフローが毎年,企業の最低要求収益率である資本コストによって再投資されていると仮定されているので,正味現在価値がプラスであることは,企業の最低要求収益率を超える利益が投資案から生まれていることを意味する。現在価値法における正味現在価値は次の算式により求められる。

正味現在価値=キャッシュフローの現在価値−投資額

 また,収益性指数は次式で算定される。

収益性指数=キャッシュフローの現在価値×投資額

 ただし,設備投資が数年にわたって行われる場合には,キャッシュフローの現在価値を求める計算式と同じく,各年の投資額についても現在価値を求めて両者を比較しなければならない。一方,投資価値はあるが,投資規模が異なる場合には,異なる両投資案のキャッシュフローの差額と投資額の差額を計算し,その差額の正味現在価値を求め,それがプラスであれば投資規模が大きい投資案を選び,マイナスであれば投資規模が小さい投資案を選ぶ。投資規模が異なる場合には,収益率を表す内部利益率の比率だけでは投資案の比較ができないので,差額投資の正味現在価値を求めて投資案の優劣を判断しなければならない。
→キャッシュフロー,正味現在価値,収益性指数法,内部利益率法


検証可能性

verifiability

 アメリカ会計学会が1966年に発表した基礎的会計理論で,会計情報の特質としてあげた4つの基準のうちの1つである。検証可能性とは,同じ資料あるいは記録,証拠が与えられたならば,会計知識のある複数の人が操作をしても,本質的に類似した数値または結果が保証されるという基準である。つまり,会計情報とは会計ルールに従って得られたもので,その妥当性が証明できるものでなければならない。
→基礎的会計理論


減損

shrinkage , waste

 製造過程の進行につれて,蒸発,粉散,ガス化,煙化,気化,屑化,漏化などによって原材料ないしは中間生産物が消失するか,あるいは無価値化することによる減耗をいう。減損正常発生の場合は原価性を有し,異常発生の場合は原価性がないと認識する。正常減損費は完成品だけが負担すべきか,あるいは完成品と月末仕掛品の両方が負担すべきか,また負担割合はどうするべきかの問題がある。負担割合には,主に加工進捗度が加味される。


コア・コンピタンス

core competence

 企業内部に蓄積された独自のスキルや技術を意味し,C.K.プラハラード
=G.ハメルによって導入された。たとえば,ソニーの小型化技術,ホンダのエンジン技術が典型的であるが,もっとも得意とする中核的な事業に経営資源を集中させ,モトローラのテレビ事業のように撤退するかあるいは,セブンイレブンやサンマルクのようにアウトソーシングを利用するという,絞り込み戦略として普及している。


工事収益

 請負工事の原価は個別原価計算によって測定されるが,その工事原価に対応する収益は,期間損益計算において,その認識方法の違いによって工事完成基準工事進行基準に大別される。前者は当該すべての工事が完成(竣工)するまで収益も工事原価も繰り延べていく方法であるが,後者は期末での工事進捗状況により収益を計上していく方法である。工事が長期的なものであると,いずれの基準を選択するかによって期間利益が大きく変動する。
→工事完成基準,工事進行基準


コーポレート・ガバナンス

corporate governance

 企業の統治あるいは支配の形態をいう。本来,企業をめぐるさまざまな利害関係者ステーク・ホルダー:株主,顧客,従業員,取引先,地域社会,政府)の関係として定義される。この場合,広義のコーポレート・ガバナンスといわれ,組織論的な問題として統治構造の効率性が議論される。実際には株主と経営者との支配とコントロールをめぐる問題として扱われることが多い。これを狭義のコーポレート・ガバナンスという。わが国においては特に,株式の相互持合銀行による監視内部昇進した経営者の存在などにより,株主の影響力は小さく,経営者の専断が見られた。しかし,エクイティ・ファイナンスの普及による銀行離れ,企業不祥事の頻発などのため,株主代表訴訟の簡易化社外取締役の導入帳簿閲覧権の拡大など法的に株主の権利が強められるとともに,経営と業務執行を分ける執行役員の導入,経済的付加価値EVA),株主資本利益率ROE),ストック・オプションの導入など,アカウンタビリティーディスクロージャーを目指す動きがある。
→EVA


固定予算

fixed budget

 固定予算は,予算期間において実現可能性の最も高い単一の予定操業度を基礎にして編成される予算である。固定予算は固定費管理のためには有効な予算である。予算実績値の評価では,実際操業度が予定操業度と異なったとしても,当初の予定操業度の予算がそのまま実績値の比較基準として使用されるため,予算の編成時における前提条件が著しく変化した場合には,業績管理のための予算の有効性は失われる。このため変動予算方式が考えられるようになった。
→変動予算,弾力性予算


コミッテド・コスト

committed cost

 一般的には,コミッテド・キャパシティ・コストと同義であり,キャパシティ・コストの部分概念で,マネジド・キャパシティ・コスト等と対比される。これは,経営能力(キャパシティ)の準備・維持に係るキャパシティ・コストのなかで,すでに設備投資のようなコストの発生を長期的に拘束する意思決定がなされ,さらにその投資が実行されているために長期的な固定費となるものをいう。たとえば,建物や機械設備の減価償却費,固定資産税,メンテナンス費である。このコストの発生をコントロールすることは,投資段階における的確な長期計画にもとづくか,使用中のキャパシティの適切な利用促進計画か,長期的な視点を強調する除却の意思決定によらざるを得ない。1会計期間の利益管理のなかでコントロールすることが困難な埋没的なコストという意味において,拘束固定費とか意思決定済固定費などと訳されることがある。
→キャパシティ・コスト,マネジド・コスト


コンカレント・エンジニアリング

concurrent engineering

 サイマルテニアス・エンジニアリングともいう。設計から製造までの同時的な開発を行うことによって統合した新製品開発を実現することである。欧米の開発はバトンタッチ型といわれ,部門間に高い壁が築かれており,部門間の協調はあまりなされない。これに対してわが国では,部門間横断的な開発を行うため,さまざまなメリットを享受できる。コンカレント・エンジニアリングを実現すると,リードタイムが短縮できる。このことは,一方では開発期間が大幅に短縮できるし,他方では,短縮するために知識創造が行われ,部門間もしくは全社的に知識を共有することができる。その結果,顧客ニーズに対応した製品開発が行いやすくなり,収益の拡大が期待できる。さらに,後工程の情報不足からくる設計変更が減少したり,後工程を考慮に入れて設計することで加工や組立が容易な設計を実現できる。この結果,大幅な原価低減が期待できる。
→サイマルテニアス・エンジニアリング


コンティンジェンシー理論

contingency theory

 すべての環境に有効な唯一最善の組織は存在せず,組織が有効であるかどうかは組織化の方法と環境とが適合しているかどうかに依存するというものである。この環境適合的な見方を最初に経験命題として導出したのはバーンズ=ストーカー(Burns, T.=Stalker, G.M.)であるが,組織と環境の間に存する関係をきわめて体系的にとらえたのは,ローレンス=ローシュ(Lawrence, P.=Lorsch, J.)である。彼らは,環境特性組織特性が適合すればするほど高い業績に結びつく傾向があるということ,そして最も成功した組織は環境の特性との相互依存性にかなった分化と統合の状態を維持する傾向があるということを発見したのである。その後,マイルズ=スノー(Miles, R. E. =Snow, C.C.)によって,新たに「ネオ・コンティンジェンシー理論」が提唱され,経営環境と組織戦略,機構,技術などとの関係を分析するモデルとして画期的な発展をもたらしてゆくのである。