タックス・シールド

tax shield

 設備投資におけるキャッシュ・フローの計算は,現金の支出と収入にもとづいて行われる。したがって,会計上の発生主義による費用・収益とは違い,現金支出をともなわない費用はキャッシュ・フローに入れなければならない。特に,法人税などの税金の問題を考慮した場合,現金支出をともなわない費用は,課税利益計算上,損金算入項目として認められ,税金としての現金の流出を防ぎ,キャッシュ・フローの増額をもたらすが,このことをタックス・シールドという。
→キャッシュ・フロー


注文獲得費

order - getting costs

 売上注文を獲得するための費用である。注文獲得費には市場調査費広告宣伝費販売促進費人的な直接販売費マーケティング管理費などが含まれる。注文獲得費の特徴をあげてみよう。1.注文獲得費は販売の結果ではなく,原因となるものであるが,売上高と比例関係はない。2.売上高目標を達成するために設定された計画に基づいて支出され,政策費用の性質を有する。3.製造原価や注文履行費の場合よりも,支出する人たちの判断に依存する割合が大きい。
→注文履行費


注文履行費

order - fillign costs

 顧客が求めた注文を履行するための費用であって,物流費のほかに集金費アフターサービス費などが含まれる。注文獲得費一般管理費と比べて注文履行費には次の特質がある。1.物的で反復的な性質があるので,標準原価管理が可能なところがある。2.売上の実行のために発生するので,売上高と結びつけて管理することができる。3.変動費の性質があるので,売上高に比例して増減する傾向がある。
→注文獲得費


長期利益計画

long - range profit planning

 長期利益計画では,会社の長期目標や戦略を有効に実現しうるよう過去にあげた実績利益や競争企業の実績利益を参考にして,長期の利益目標がまず設定される。目標となる利益が個々の長期プロジェクト計画に照らして高すぎると判断されれば,修正かつ調整される。こうして実現可能な目標利益は,総合的な長期経営計画の設定プロセスを経て決められる。目標利益は,支社,工場,事業部などの各部門に割り当てられ,目標値を割り当てられた各部門は,具体的かつ詳細に日程と予算とを編成することになる。長期利益計画の期間は,経営者が将来の問題を予測したり,その問題を解決したりできるよう,自由に行動のとれる期間として3年ないし5年が設定される。そのうえ,長期利益計画は,ローリング方式で毎年将来3年間ないし5年間の計画を環境変化に対して弾力的に立て直しが図られる。長期利益計画が要請されるようになったのは,消費市場の変化,急速な技術革新,競争の激化など企業環境の加速度的な変化に対応するために,長期的に環境を予測し,問題を発見し,目標達成のための長期計画を立てなければならなくなったからである。


ティアダウン

tear down

 リバース・エンジニアリングともいう。競合他社の製品を分解して,他社の製品を学習することである。ティアダウンによって,競合企業の製品レベル,すなわち,使用している部品や加工技術,原価構造を知ることができる。他社の原価構造は必ずしも判明するわけではないが,同じ部品を自社で購入したり加工したときのデータを利用する。自社のオーバースペックを確定したり,他社との競争価格を設定するには十分意味があるからである。


適正利益

reasonable profit

 適正利潤ともいう。経営体いわゆる企業は,株主を始め,消費者,従業員,地域社会などの種々の利害関係集団に対して利益を公正に配分し,環境問題文化支援活動など社会的責任の遂行も求められている。したがって企業は利潤の極大化という単一的な目的だけではもはや説明され得ず,一定の利益を確保しつつ余剰利益を社会全体に還元すべき存在となっている。このように,企業が利益を複眼的に配分したうえで,確保すべき利益のことを適正利益という。


デザイン・ツー・コスト

design to cost

 目標原価を設定しておき,その目標原価のなかで設計を達成することである。この考え方は,アメリカ国防総省が提唱したものである。このデザイン・ツー・コストの目的は,機能や性能を開発スケジュールどおり達成するだけではなく,目標原価のなかでこれらを達成させるという点に大きな意義がある。なおここでの目標原価はライフサイクル・コストを前提としており,そのタイトネスは挑戦目標といえるほど高いものである。
→ライフサイクル・コスティング


手待時間

idele time , waiting time ofr work

 手待時間とは,作業員の責任に帰しえない理由による無作業時間をいう。たとえば,停電,機械故障などの自己による生産中断時間および材料待ち,冶工具待ち,指図待ち,運搬待ち,検査待ち等々の管理運営上の不備から生じる生産停滞時間のことである。手待時間が発生したら,手待時間票を作成する。その発生が臨時的・偶然的な原因による場合には,当該部分の賃金は非原価項目とするが,不可避的に発生する場合のそれは間接労務費となる。


伝達

communication

 会計を一種の情報システムとみなした場合に,会計情報をその発信者から受信者へ送る行為を意味する。複式簿記のような計算技法や計算構造の立場から会計を考えた場合には,伝統的に伝達でなく報告という用語が使われてきた。会計情報システムの観点から著されたアメリカ会計学会の「基礎的会計理論」(1996年)では,利用者に対する情報の有用性が強調され,これを高めるための情報伝達指針が示されている。


統制

control

 統制の本質は,行為能力にある。マネジメント・コントロールの理論は,これまで,その意味をサイバネティックスおよびシステム理論によって表されてきた。基本的モデルであるサイバネティック統制モデルは,統制のために必要な条件を,1.目標あるいは基準2.実施結果に関する測定システム3.統制結果の予測能力4.達成能力と整序的に示す。そのことは,実施結果のフィードバックおよび目標・期待値が統制にとって不可欠な要素であり,しかも統制は予測方法を用いて実行される,ということを示唆している。フィードバック過程は,エラーの解消を目的とするネガティブなものであるので。経営組織や環境などのシステムが複雑になると,さらに予防的なフィードフォワード(モニタリングと予測方法が用いられる)が展開されるようになり,統制は,事前統制過程統制,および事後統制と3つのケースに分けて考察されることになる。この展開は,サイバネティック・アプローチが組織の目的適応的な行動を説明しうるということを示すものである。そうであっても,このアプローチは,クローズドなフィードバックを重視するため,経営組織についてみるならば,統制概念の拡大化の思考を生みだすことになる。今日では,統制について,システマチックなアプローチを用いた分析が全体論的に試みられている。計画・統制システムのモデルに依拠して,会計の観点から,戦略的統制経営統制(managerial control),業務統制(operational control),と機能主義的に分類するものや,統制実体の性格によって組織の統制インフォーマル集団の統制個人の統制と広義に類型分けするものなどさまざまな議論がある。経営管理が実際には複雑な意味をそなえているために,統制はファジイな概念になるといわれる。それゆえに,経営組織における統制システムは,上記のような視点をふまえてデザインされることになる。


特殊原価

special cost

 特殊原価とは原価計算外の原価計算つまり特殊原価計算意思決定原価計算)で特定の目的で使用される原価をいう。具体的には経営意思決定に際しての代替案の評価のために使用される関連原価である。この概念は多くの場合,未来原価の性質をもつ。例としては,機会原価機会損失付加原価現金支出原価回避可能(不能)原価延期可能(不能)原価差額原価などがあげられる。
→特殊原価調査,関連原価


トップ・マネジメント

top management

 最高経営者層ともいう。経営体いわゆる企業はその成長過程において,種々の職務,製品,地域別に水平的な分化がなされると同時に,意思決定という側面から垂直的に分化される必要がある。この意思決定階層の最上位に位置し,企業活動が目指す長期的事柄に対し,直接的に影響を及ぼす経営者層を指してトップ・マネジメントという。その基本的機能は,企業の全般的な理念や戦略を策定し,事業部などの下位組織間を調整し,経営資源の配分を行うことである。


取引

transaction

 トランザクションともいう。プリムソン(Brimson J. A.)によれば,取引とは,情報に影響を与える活動に関連する文書(電子データを含む)である。たとえば,仕入注文書製造指図書などがある。これに対して,ミラー=ヴォルマン(Miller J. G.=Vollmann T. E.)らは取引を間接費の発生原因としてとらえている。ABCactivity-based costing)が当初,取引原価計算と呼ばれていたように,活動と同義であると考えることもできる。
→活動,ABC


取引費用

transaction cost

 分業迂回生産によって生産性は増大するが,同時に,交換を行う必要が生じる。交換は,主に市場において価格メカニズムを通じて行われるが,このような市場取引においては,実際には取引相手を捜す費用,交渉し,契約を結ぶ費用,契約の履行を監視する費用などが発生する。これらを取引費用という。取引費用は組織内部の管理・調整の費用と比較され,内製化あるいはアウトソーシングの判断の基準とされる。