紗耶香が乗ったオプティーとのバトルで事故をしたR32GT-Rの様子を見に行こうと圭は強引にはーりーのFCに乗り込み、むりやり彼を運転席へと呼び込んだ。はーりーはFCのシートに座ると機嫌悪そうに圭に言った。

「ったく、なんでFC・・・自分の車で行けばいいのに、すぐそこだと思うからさぁ・・・」
「つべこべ言わないの!」

渋々はーりーはFCのセルモーターを回しFCに積まれているロータリーターボエンジン(13B)を起動させた。圭は助手席から後方と左サイドの様子を伺い、車が来ないことを確認すると言った。

「いいよ、後ろからは来ない。」
「やれやれ・・・」

-シュァワアアアアン、パシュッ、ブァアアアアア-
はーりーはFCのアクセルを軽く煽るとギアを切り替えて麓の森林植物公園入り口から32が事故をしたと思われる4連ヘアピンへと向かっていった。

「あの・・・やっぱり放っておくのはどうかと・・・?」
「心配性だねぇ、あんたも・・・」

梨華はバトルで事故をしたR32のことが気になっていた。

「まだ麓を目指す車がいるみたいね・・・」

-バァアアアアアアア-
紗耶香は目の前に迫ってくる車2台分のライトを見ながら言った。梨華はなにげなく正面を向いていたが、麓を目指すと思われる2台の車の内、先頭を走る車をすれ違いにざまに薄明かりの中で見ていた。

「あっ、あの前の白い車はもしかして・・・?」

梨華はそう言うと、過ぎ去っていった白のSXE10とブルーメタリックのS14を目で追っていた。紗耶香は隣でそんな梨華の様子を見て言った。

「どうしたの?」
「いや、ちょっと・・・(またあの人なのかな?)」

紗耶香は梨華の返答に違和感を感じながらもそのまま車を走らせ、西六甲を降りきった。降りきった所にある交差点で信号待ちをしていると紗耶香はこのまま自分が運転をしても自分の方が梨華よりも早く車を降りる羽目になる事に気がついて梨華に言った。

「もう少し走った所にあるコンビニで運転交替しようか?いつまでも運転するのも悪いし、事も終わったからね。」
「あっ、はい。」

信号が青に変わると紗耶香は軽くアクセルを踏んで青信号を進んでいった。
森林植物公園前に辿り着き、適当な駐車スペースを見つけると、シカミのSXE10アルテッツアと貴のS14はその場に駐車した。自分たちよりも先に来ていたメンバー達が妙にざわついているのを見たシカミは公園入り口前のバス停に立っていたのたくに話しかけた。

「これは?何かあったのか?」
「あ、あんたは・・・まあな、ここの4連ヘアピンで32GT-Rが事故ったんや。」
のたくがシカミの問いかけに答えると貴が事故をした32Rをけなすように言った。
「マジかよ・・・ったく、変な破片ばらまきやがったんじゃ無いだろうなぁ?これだからヘタは困るぜ・・・」
「貴さん、事故った車をけなすよりも、ドライバー怪我を心配しないと・・・オレ、ちょっと行ってきます!」

シカミは事故った車を皮肉る様にぼやく貴を制すると、急ぎ足で自分のSXE10に乗り込み西六甲を登っていった。
-バァアアアアアアア-

「へぇ、何か初めはお高く止まっている様に見えたけど、本当は良いやつだったんやなぁ・・・」

のたくは駆け上がるようにして事故現場に行ったシカミに関心して貴に言った。貴はのたくの言葉を聞くと、胸のポケットからタバコを取り出して火をつけてタバコを吸いながら答えた。

「まあ、彼はうち(サザンクロス)のNo.2だからな。って、オレは別に酷い人間だから事故現場に行かないって訳じゃないぞ。」
「ふっ、分かってるよそれ位・・・あまりぎょうさん現場にいっても周りの交通の邪魔になるだけやからな。うちらベイウインズからもあんたらが来る前に二人登ったし・・・」

貴はふとバス停の後方に止めてあるのたく達の車を見ると、彼の思ったとおりS14後期型が止まっていた。

「つり目(S14後期型)・・・」
「あ、あれね、あんたがこの間いっていたS14や・・・持ち主は今、現場にいているよ。」

貴はタバコを吸いながらのたくの話に耳を傾けるも、今からここで圭のS14シルビア(後期型)とバトルをしようと一人思いはじめていた。

「(丸さんに報告しておくか・・・)」

貴はバス停から離れると携帯電話を取り出し、丸政の元に電話をかけ始めた。

「うわぁ〜っ、これはまた派手にやったねぇ・・・(あっ、このインタークーラーは使えそう!後で頂いちゃお〜っと)」

圭は道路中央寄りに止まっている32Rを見ると、目を輝かせて見ていた。

「ちょ、ちょっと、そんなことよりも乗っている奴が放心状態だよ・・・おい、大丈夫か!聞こえるならドアロックを開けてくれ!」

-ドンドン!-
はーりーは32の運転席側のドアを強く叩いて、紗耶香の運転した軽自動車に負けて放心状態になっている32のドライバーを呼んだ。運転席にそのまま佇んでいる男よりも先に助手席で失神していた男の彼女がはーりーの問いかけに答えて助手席側のドアを開けて外に出てきた。圭はその女を介抱するように近づいた。

「大丈夫?怪我は無いみたいね。」
「そっちは大丈夫か・・・しかし・・・男の方は・・・(こいつ死んでいるんじゃないか?)」

はーりーは一向に反応しない男を気にしながらも、助手席側から車内に入り込み運転席で呆然と佇む男に少し強めに頬を3回叩き、なおかつ肩を強く揺さぶった。
「おい、大丈夫か!生きてるか!!」
「運転席側のドアを開けて!反応しないのならばそのまま外に引きずり出すしかないって!」


圭ははーりーにそう言うと、彼は圭の言われたとおりに運転席のドアロックを開けた。圭はロックが開く音を聞くと運転席側のドアを開けてはーりー同様に肩を強く揺さぶった。

「う、う〜ん・・・」
「どうやら生きているみたいね。」
「(何だよコイツ!オレの時は全然反応しなかったくせに・・・なんで圭ちゃんだったら反応するんだよ・・・)」

はーりーは男の態度に少しむかつきながらも32の車外に出ると拾える部品の残骸を32Rの車内に入れ込んだ。圭は男を運転席から引きずり出すと男の彼女と共にはーりーのFCに乗せた。彼らの救出劇の最中にシカミのアルテッツァが現場に到着。シカミは飛び出すように運転席からはーりー達の元に駆け寄った。

「大丈夫なのか!」
「まあ、大丈夫みたいよ・・・」
圭はシカミにひとまず状況を伝えると車の移動準備に入っているはーりーを手伝った。

「ひとまずFCにドライバー、オレが麓まで32GT-Rを牽引するよ。」

-ギュキキキキキィ-
シカミは再び車に戻るとその場でスピンターン(180度ターン)で向きを麓に向けた。はーりーはそれを確認するら32Rに繋げられた牽引ロープをアルテッツァのリアにある牽引フックに掛けた。32に乗っていた男はまだ放心状態から完全に立ち直っていないのかFCに乗り込まずにただ路上に突っ立っていた。シカミはそんな男を見て発進の邪魔になると思い男に言った。

「そこ、どいてくれ。でないと車が出せない!」
「み、緑、緑のオプティーに・・・32Rが負ける・・・なんて・・・」

シカミは初め何を言っているのだろうと不思議に思ったが、はーりーは男が言った緑のオプティーに反応して圭に話しかけた。

「まさかとは思うけど・・・でも、確か彼女も緑のオプティーだったような気がする・・・まあ、人違いだと思うけど。(どう考えても軽自動車でGT-Rは抜けないだろうな)」
「そう言えばスタンドの彼女、名前は・・・何だっけ・・・あっ、そうそう! り、梨華だったよね!?」

シカミは圭が口走ったその名前、梨華に反応するかのように車を降りて
はーりー達が話している所に近づいてきた。

「スタンドって・・・あんたが働いているあのスタンドなんだな!」
シカミはそう言うとはーりーの両肩に両手を当てて、
はーりーを強く揺さぶった!
「おい、そうんんだろ!?」
「ちょっ、ちょっと・・・く、くるし〜!」

ヤケにムキになって梨華の事を聞き出そうとしているシカミを目の当たりにして圭は少し引いたが、はーりーの身を案じてシカミを制するように言った。

「ちょっと、何があったか知らないけど、その辺にしてあげなよ。」
「あっ、オレとしたことが・・・」

シカミは圭の一言で冷静さを取り戻すと、少し恥ずかしそうにしてゲホゲホと
咽(む)せているはーりーから目を背けた。

「しかし・・・あの子がこんなドラテクの持ち主だったなんて・・・可愛い顔して凄いんだね。これは意外だわ・・・(もしかして最速なんじゃない?)」

シカミは圭の言葉にまたもや過敏な反応を示すと、一人で考え込んだ。

「(彼女がここまでの腕を持つ走り屋だったとは・・・と、なると、彼女に見合った男になるには・・・ゾロ目! あいつを自分が仕留めなきゃいけない!何としても!)」

考え込みしばらく沈黙しているシカミを見て圭は彼に話しかけた。

「ちょっと、人の話を最後まで聞いていなかったでしょ?」
「・・・・」

どうやら周りの声は彼には届かないらしい・・・圭は様子がおかしいシカミにさらに話しかけた。

「これはひょっとすると、紗耶香以上の腕かもね・・・ちょ、ちょっとなに無視して車に乗り込んでるのよ!」

シカミは圭の言葉を最後まで聞くことなくアルテッツァに乗り込むとウインドーを下ろして窓越しから圭に言った。

「ひとまず麓にいるベイのメンバーにこの32Rを預けるよ。そっちの方がこの近辺の板金屋とかに詳しいだろう?あと、来週だけど・・・絶対にゾロ目をこの西六甲に連れてきてくれ!」

シカミは圭にそう言った後で、小声でさらに言った。

「ゾロ目に勝たなきゃオレの女神が逃げていく・・・」
「はぁ?(女神って・・・何?)わ、分かったわ・・・私からも言っておくから・・・とにかくその車を麓までちゃんと持っていって。」

圭は小声で言ったシカミの言葉が聞こえていたが、あえてそれにツッコミはしなかった。それよりも早いところこの場を引き上げないと上から対向車が来るかも知れないと言う危機感を持ったのでシカミに32GT-Rを急いで麓の広い場所まで牽引するように言った。シカミは軽く頷くとそのまま車を走らせ32GT-Rを牽引したまま麓へ下っていった。
-バァアアアアアアン、バァアアアア-

「な〜んか、変わった人よね?クールなのか、3枚目なのか・・・」
「ゲホっ、ゲホっ、彼はサザンクロスのN0.2らしいよ・・・聞くところによるとサザンクロスではN0.1のFR使いらしいからね。ゲホっ、ゲホっ(くそっ、なんで揺さぶるついでに首まで絞めてくるんだよ・・・マジで失神するかと思った。)」

圭とはーりーは未だにボケっと突っ立っている男をFCの後部座席に押しやるように座らせるとFCに乗り込んで現場を後にした・・・