「よっし!これで今日のセットも決まったで!」

前回の圭と貴のバトルから5日後、閉店間際のGSでは交流戦に備えてのたくとはーりーがそれぞれの車の点検をしていた。そして、そこに紗耶香がやってくる・・・いつもの週末の光景である。


「今日はやるだけやるよ!先週は事故車の件で全然走れなかったからね。」

ガチャッ

ブァアアン、ブァアアアン


はーりーは紗耶香に得意げに語ると、FCに乗り込みエンジンを掛けて軽くアクセルを煽り始めた。紗耶香はそんなはーりーを見ながらもちょっと気になったことを近くにいたのたくに言った。


「そう言えば、こんなに露骨に車いじってて石川が何も言ってこないってのは変じゃない?」
「ああ、梨華ちゃんやったらもう先に上がったよ。何でもちょっと用事があるので先に帰るって・・・なんでも六甲がどうのこうの言っていたけど?こっちはまあ、うるさく注意されないだけ今日はセッティングがしやすいよ。」

のたくは軽く笑いながら答えた。紗耶香は六甲でのGT-Rとのバトルの一件で梨華に何か迷惑を掛けたのではないかとこの頃気になっていた。彼女にしてはあっさりと済んでしまった一件だったが、梨華に取ってはある意味ショッキングな出来事だったのでは無いかとちょっと責任を感じていたからだ。

「はーりーさん、ちょっとHSWまで乗せて行って!」
「えっ?あっ、別にオレも用事があるから構わないけど・・・」

ガチャッ、バタン!


紗耶香はそう言いながらロックされていないFCの助手席に強引に乗り込むと、はーりーにHSWへ向かうように言った。はーりーは何事かと思ったが、どちらにせよHSWに車を取りに行ったぴーと合流する予定があったので、そのまま紗耶香にいわれるままHSWへとFCを走らせた。
ブォワアアアアアン

「あっ、すいません。もしかして待ちました?」

梨華はすでに到着していたシカミのSXE10アルテッツァを見つけると、車をその横に止め。K市を見渡しているシカミの元へと駆け寄った。

「い、いや、そうでもないよ。オレもさっき来たばかりだから。(実は1時間も前からここにいたりして・・・)」

シカミはあっさりと返事をしたものの内心では極度の緊張状態にあったことは言うまでも無かった・・・


キキキッ

「あっ、市井ちゃん!見てよっ!遂に甦ったよオレの車が!!」

HSWに到着したはーりーと紗耶香を見つけるとぴーは颯爽と紗耶香の元に近寄ってガレージ前に止めているJZX100を指さして言った。

「あっ、悪いけど今、急いでいるんで・・・また今度見ます!」

紗耶香はぴーにそう言うと、慌ててHSWのガレージへと駆け込んだ。中ではBDがAE111レビンの車内を掃除していたが、紗耶香はそのままレビンに乗り込んだ。

「(ったく、何でオレばっか・・・)ちょっ、ちょっと、まだ掃除中だよ・・・」
「すいません。ちょっとレビンを使わしてください・・・BDさんカギを!」
「えっ、あっ、はい」

BDはポケットに入れていたレビンのカギを紗耶香に渡して自分は掃除機を車外に出した。そして紗耶香がエンジンを掛け、アクセルを煽りだしたのを目の当たりにすると、彼は慌ててガレージのシャッターを全開にした。
ガラガラッ!

「後ろ、レビンが出るから避けて!」

BDはそう言いながらガレージの前にいたはーりーと紗耶香に軽く放置されてしまいへこんでいるぴーを端の方に追いやった。BD達が進路上にいないことをバックミラーで確認すると紗耶香はギアをバックに入れたまま急発進してHSWに面した道路へと出る。
ウワァアアアン、キキッ!

「交流戦をやるって時にまさか石川のやつ展望台なんかに行っているんじゃぁ・・・?もしそうだったら厄介な事にならなきゃいいけど・・・とにかく急がなきゃ!」

紗耶香はレビンが道路に出たところでフルブレーキを掛け、ギアを1速に変えて六甲山に向けて急発進した!タイヤの鳴く音とゾロ目の甲高い4AG-Eエンジンのエキゾーストが周囲に響いた。
ブァアアアアアン、ブォアアアアアア

「相変わらずスゲーなぁ・・・市井ちゃんにはかなわねぇ〜!」

はーりーは矢の様に急発進していった紗耶香のレビンを見ながら、正に空いた口がふさがらないと言う状態でその場に佇んだ・・・はーりー、ぴー、BDが呆然としているとそこに紗耶香のレビンと入れ違いで白のS14シルビアが入ってきた。
キキキッ

「あっ、ここにいたんだ・・・」

圭はS14から降りてくるとそう言いながらぴー達に近づいてきた。彼女は携帯電話の時計を見ると、そろそろ六甲に上る頃合いではないかと思いはーりー達に言った。

「そろそろサザンクロスも来ているね・・・私たちも上りましょう。」
「ああ、そうだね。」

シュァバァアアア、プシュッ、バァアアアア

はーりーは圭にそう答えると止めていたFCに乗り込み、圭達よりも先に六甲山へと向かっていった。はーりーが去ったあと、ぴーは圭に向かって言った。

「オレ、間違っていたよ・・・今夜はサザンクロスの奴らの走りをじっくりと見ようと思う。そして、自分に足らない部分を見つけて鍛えなおす!」

圭は少し笑うと、ぴーの気迫と、リーダーらしさが出てきたのを感心しながら答えた。

「そうだね・・・頼みますよリーダー!」

ブォアアアアアン、パシュッ、ブァアアアアア
そう言って軽くぴーに手を振ると、圭は再びS14に乗り込み、はーりーの後を追うようにして六甲へと向かった。ぴーは心のわだかまりが解けると、大きく息を吐き出して、復活したばかりのJZX100に乗り込んだ。エンジンを掛けてしばらくシートに座ったままでいると、亜依がウインドーを軽く叩いてぴーを呼んだ。彼は亜依に気づくとウインドーを下ろした。
コンコン!


「加護ちゃん、どうしたんや?」
「別に何でもないですけど、この前公園で会った時よりもいい顔しているなぁって思ったから呼んだだけです。」
「そうかなぁ?まあ、それはともかくまたBDくんや加護ちゃんの世話にならないように気を付けて走るよ。」

ボォアアアアアアン、プシャァ、ボォアアアアアア
ぴーは亜依の言ったことに軽く笑って答えて、BDにも手で軽く合図をすると自分も六甲山へと向かっていった。


「加護も市井さんみたいに六甲を走ってみようかなぁ?」


亜依は六甲山に向けて走っていった紗耶香やベイウインズの面々を見送りながらも少し羨ましそうに彼らが走っていった方角を眺めながら言った・・・

「(ぴー君、羨ましいなぁ・・・ メラメラ)」

そして何やら別のことで羨んでいる奴も・・・