ベイウインズが2軍とは言えサザンクロスに勝った話はバトルがあった翌日から六甲の走り屋達の耳に入ることになり、その話は西六甲の外れにある摩耶山の走り屋達の元にも届くことになる。

「いらっしゃしませ〜、ご注文お決まりでしたらボタンを押してお呼び出し下さい。」
「あ、あぁ・・・(萌)」

摩耶テンペストリーダーのヒメヨは相棒のレンズと共に行きつけのファミレスでベイウインズの事に関しての話の場を持っていた。

「ヒ、ヒメヨさん?(な、何かいつもあのウエイトレスばっか見ている気がする・・・この店だけ来る回数多いしなぁ)」
「(ぼけっ〜)」

レンズは先程接客に来たウエイトレスに何やら意味深な視線を送ってぼ〜とするヒメヨに話しかけたが、彼はしばらく反応しなかった。

「(あ〜、あの子、名札をすでにチェックしたけど柴田っていうんだぁ〜)」
「あの、ヒメヨさん。本題に入りましょうよ・・・」
「(しかも名前はあゆみって言うのかぁ〜)」
「ちょっと、いつもの悪なヒメヨさんじゃないですよ!?」

レンズの最後の一言にピクッと反応したヒメヨは我に返って返事をした。

「あんだよその言い方は、オレがいかにもダーティーな奴って言い方じゃねぇか?」

レンズはもうヒメヨに対して思ったそのままを言葉にして切り返した。


「いまさらイメチェンは無理でしょ・・・」
「ハッキリ言うなよ。ハッキリ!」

プチッ!
そう言いながらヒメヨは店員を呼び出すために呼び鈴を押した。

「ちょ、ちょっとまだメニューも見ていないのに・・・」
「オレは決めたんだよ!」

レンズは慌ててメニューを取り出して選び始めたがヒメヨはお構いなしだ。どうやら彼の頭にはメニューとは別な目的があるようだった。そうこうしている内にヒメヨ達の元にあゆみが近づいて来た。

「お決まりでしょうか?」
「あ、いつものやつね!」
「いつもって・・・そう言えばお客さん、昨日一昨日といましたね。」
「ん?ま、まあね・・・(萌)」

あゆみは微笑みながらヒメヨに問いかけると、ヒメヨは彼女の笑顔に半壊しつつ返事をした。その様子をみたレンズは内心驚くと共に、苦笑した。

「(この人、前からここに来ていたのか・・・で、、、目的はこの人と・・・どうりで最近、性格が丸くなった訳だよ)」

取りあえず、注文を済ませた後に、ヒメヨはいきなり本題をレンズに持ちかけた。

「所で、聞くところによるとベイウインズのサル共が調子に乗っているらしいな?」
「ええ、そうです。(この人もウエイトレスに浮かれている場合じゃないと思うけど・・・)」
「そうか、ならばオレはこの後、オレは2つやらなきゃいけない事があるな・・・」
「そ、それって!?」
「言うまでも無いだろ?もう分かるな・・・」
「も、もしかしてベイウインズに挑戦ですか!!」


レンズは思わず興奮気味に身を乗り出すようにしてヒメヨに返事をした。ヒメヨはそんな彼を見ながら水を一杯飲むと真顔で返事をした。

ゴクッ!

「ベイウインズの連中にオレ様の実力を見せつけるにはゾロ目を倒すことが最も明快で、かつ奴らに一泡吹かす方法だからな・・・ゾロ目はベイの人間ではないが、いまや奴らの象徴になっている所もある。そこを挫けば・・・」

「サザンクロスもナンバー2のシカミがゾロ目にやられていますからね。あちらにもアピールできるかと?」
「そう言うことだ。食事が済み次第ゾロ目に挑戦状を叩き付けに行くぜ!」

ヒメヨの熱い一面を垣間見たレンズは「それでこそヒメヨさんだ!」と感心しつつコーヒーを飲みほすと、ヒメヨがいった「2つ」の内の一つは紗耶香への挑戦と分かったがもう一つが分からなかったので、ちょっと遠慮がちに聞いてみた。

「で、その・・・もう一つってのは?」
「・・・」

ヒメヨはそれを突っ込まれるとやや顔を赤らめながら遠くの方にいたあゆみの方に視線を送ると、彼女を見つめつつ小声でレンズに言った。

「柴田あゆみ・・・彼女にも挑戦だ。」
「挑戦って、別に走り屋には見えませんよ?え、もしかして・・・」
「電話番号を聞き出す!」

ぶっ!
「そ、そう言うことですか・・・」

ヒメヨの決意(?)を聞くと、レンズは少し苦笑して呆れ気味に心の中で言った。

「(ありゃりゃ、キャラが変わってきたなこの人は・・・)」
「取りあえず、行くぞ。」
「ど、何処にですか!?」
「決まってんだろ?ベイウインズのサル助どもがいるスタンドだよ!」

ヒメヨはそうレンズに言い切ると遠くの席で接客をしているあゆみにさり気なく視線を送りながら彼女の方ばかり見ていた。

「(やれやれ、この人のキャラが掴めなくなってきた)」

そんなヒメヨに少しばかりか、かなり呆れてきたレンズは取りあえず水を飲み干して注文の品が届くのを待った・・・

その頃、みちゅうの経営するGSでは早番で出勤していたのたくに代わりはーりーと梨華が出勤して来たため丁度引継を行っていた。みちゅうは彼らを事務所に招集すると軽く点呼を兼ねてミーティングの場を持った。

「おはようございます!」
「ああ、おはよう。取りあえずこれから夏も本番となっているんで、お客さんも増えてくる。接客には充分気を付けてくれ。」
「で、今日の早番ですけど、取りあえず普段よりは客多かったんで、これからも大変になるやろうけど頑張ってくれ。」

みちゅう、のたくらの報告が一通り終わるとのたくはそのままロッカーに向かい退社していった。

「やれやれ、夏の遅番はなげ〜よなぁ・・・まあ、涼しくなるから良いけど。」

はーりーは愚痴をこぼしながらもGS構内の掃除を始めていたが、その働きぶりが嫌々やっているように見えた梨華はすかさず彼にツッコミを入れた。

「ちょっとぉ〜しっかりしてくださいよね!」
「(げっ、そういやうるさいのと一緒だったんだ)はいはいっと。」

-ボァアアアアアン、キキッ!-
そんな彼らの元に早速、客が入ってきたため梨華、はーりーは入ってきた車に駆け寄った。

「いらっしゃいませ〜!」
「オーライ、オーライっと、はい!ストップ!!」

はーりーの誘導で止まった車は所定の位置に着くとその場でエンジンを切った。
-ガチャッ-

「へっ、ここがベイのサル共の拠点ってわけか?」
「(な、なんだコイツは!?)」

ボォオオオオオ
ターボタイマーが作動してしばらくアイドリング状態が続くシルビアS13から降りたヒメヨはすかさず悪態を突いてきた。

「で、お客さん、ガソリンは・・・?」

はーりーはいきなりの悪態でちょっとムカついたが、一応客として接するために心を落ち着かせてヒメヨに尋ねた。

「ガソリンはいらね・・・」
「いらっしゃいませっ!」

ヒメヨは「ガソリンはいらねぇ」と言い切るつもりだったが、その場にやって来た梨華の挨拶とスマイルに目を奪われてしまった。

「あ、ああ、そうねぇ・・・ハイオク現金満タンね!」
「はいっ!ハイオクはいりま〜す!!」
「(やっぱりキャラが分からん・・・)」

梨華はヒメヨに言われたままハイオクをS13に注入し始めた。そして、ヒメヨの唐突な態度の変化にS13の助手席にいたレンズは更に呆れた顔をしてヒメヨを見た。

「(あ〜、この子もオレのストライクゾ〜ン)おっと、そうじゃねぇ。おい、あんた!確かこの間のサザンクロスの一戦でFC乗ってた奴だろ?オレは摩耶テンペストのヒメヨって言うんだが、最近GT-Rに勝った軽自動車もそうだが、ゾロ目の事は当然知ってんだろ?」
「(なんだ、コイツ?態度でけぇな!ムカつくぜ!!)あ〜、当然知ってるぜ。ゾロ目もあんたの事もな!」

はーりーはヒメヨが何をしにここに来たかが完全に分かったが、テンペスト自体が柄の悪いチームということも知っていたため、これは紗耶香に伝える前に何をしでかすか分からないテンペストの挑戦を断った方が無難だろうと判断した。

「悪いが、あんたらと市井ちゃ・・・じゃ、無くてゾロ目を走らせるわけには行かない。摩耶のヒメヨとシュウって言ったら六甲じゃ知らない奴はいないダーティーな走り屋だからな。」
「あん?言ってくれんなぁ・・・六甲最弱のベイウインズがなめた口聞くんじゃねぇぞ!」
「さ、最弱だと・・・」

はーりーの手は「グー」の状態で震えていた・・・確かにそんなにベイウインズのレベルは高くないことは彼自身も分かっていたが、それを軽々しくヒメヨに言われたことでキレそうだった。

「ふっ、てめえら・・・元エンプレスを引き抜いたからって調子こいてんじゃねぇぞ!?六甲には摩耶テンペストもいるって事をしっかりと覚えておくんだな!」
「言わせておけばっ!!」

ヒメヨはそう言いきると車に戻ろうとしたが、それを見計らってはーりーがヒメヨに殴りかかろうとしたその時!

「ハイオク32L入りましたっ!」
「(はっ!)キャ、キャップ・・・オッケー!」

カチャッ!
梨華が近寄ってきたのが視線に入ったはーりーは我に返ると取りあえず普通に仕事をこなしていった。

「とりあえず、ゾロ目に言っておけ。勝負は来週土曜日で西六甲、下り一本勝負だ!!・・・ってな。」

-ボァアアアアアン、ボァアアアアアン、キキッ!、ボァアアアアアア-
ヒメヨはそう言ってハイオクの代金を梨華に渡すと、何回かアクセルを煽った後にGSを後にした。

「何かあったんですかぁ?」
「ん、い、いや。何でもないよ・・・ちょっとオレ、ガレージの掃除するわ。」

はーりーはそう梨華に答えるとそそくさとガレージの方に入っていった。彼は前回のシカミと貴、サザンクロスの時と同じでまたしてもゾロ目の挑戦窓口になってしまった自分に少し困惑しながらも、嫌味なヒメヨに対してかなり怒っていた。そして、こうなったら紗耶香にとことんぶっちぎって貰おうかなとも思いながらガレージの掃除と備品の整理を始めていった。