ヒメヨが紗耶香とのバトルを申し込んで来て数時間後の閉店間際のガソリンスタンドではその日、はーりーの報告を聞いた圭やのたく以下ベイウインズのメンバーが事務所内でテンペストについて語り始めていた。

「で、向こうは紗耶香を名指しにしたわけね・・・?」

圭の問いかけにはーりーはヒメヨのムカつく態度を思い出しながら話し始める。その気持ちを察するかのようにのたく、武蔵、圭が彼の話に耳を傾ける。

「そう、オレらの出鼻をへし折ろうとしてイキナリ市井ちゃんだよ!オレ、ぶっちゃけて言うならばこのまま市井ちゃんに任せてヒメヨの奴をぶっちぎってほしいよ!!」
「う〜ん、気持ちは分かるんだけど、紗耶香が何って言うか・・・」
「確かになぁ・・・ベイウインズに挑まれた勝負が市井ちゃんに回るのもちょっと変な話やしな・・・・」
「自分ものたくさんと同感ですね。」

はーりーは興奮気味に圭やその場にいたベイウインズの面々にそう語ったものの、圭の言うとおり紗耶香自身がそのヒメヨの挑戦に乗るかどうかがちょっと微妙だと思った。正直言って紗耶香はベイウインズとは関係ない訳であり、そんな彼女をベイウインズの代打で使うのもメンバーにとっては少々心苦しかった。

「あ〜しっかし、はーりーさんの言うようにヒメヨはマジむかつくわぁ!なんとかならへんかなぁ?」

横からぴーが圭にすがるようにして声を掛ける。圭は少し考え込んだ表情をしながら返事をする。

「なんとかって言われても・・・向こうが紗耶香を指名してきている中で私が走る訳にもいかないでしょ?それに紗耶香とは確かに胸の内を話せる仲ではあるけど、何か私からも言いにくいよ・・・」

頼みの綱とも言える圭の答えにぴー、のたく、武蔵らはただただ黙っているしかなかった。そんな光景を見ながらはーりーは「マズイ」事をしたかも知れないと内心で焦りを感じていた。しばらく彼らはそのまま会議を続けたが、ヒメヨの指定した日まで後7日あることからひとまず今日の所は解散することにした。

それから数日後、六甲では早速ヒメヨと紗耶香のバトルが行われるという噂が立ち始め東西六甲の走り屋達の耳にもその話題が入りつつあった。

キキッ!

「すいません!市井ちゃんいますか?」

噂が先行しつつある状況の中、はーりーはHSWへと足を運び紗耶香を訪ねて見ることにした。FCから降りてガレージへと向かった彼の元に亜依が話しかけてくる。

「あ、こんにちわぁ〜!どうしたんですかぁ?」
「ちょっと市井ちゃんに用事があるんだけど・・・ここ今日はもしかして休み?」
「いや、いますよぉ〜。今、裏の車庫でお客さんの車を磨いてますけど、呼んで来ましょうか?」
「ありがとう、でも良いや。自分で行ってみるから呼ばなくても良いよ・・・」

亜依ははーりーの元を去って紗耶香を呼びに行こうとしたが、それも何か悪いような気がしたので、彼は紗耶香を呼びに行こうとした亜依を引き留めてガレージの中を突っ切ってHSWの裏側に回った。

「あ〜、なんで・・・最近オレこんな仕事ばっかじゃん。ブツブツ」

BDは黒に対しての不満を丸出しにしながらも板金に預けられていた顧客の車を磨いていた。そんなBDを横目にしながら紗耶香も磨いている。彼の嘆きは分からないでも無かったので紗耶香はBDを制するように言う。

「ふぅ〜っ、文句を言うのは別に構わないけど、仕事は仕事ですからね。ちゃんとやってくださいよ!」

BDはしぶしぶ頷くと、そのまま車のワックスがけを続ける。

「BDさん。最近見ないと思ったらこんな事をしていたのか〜。少しは真面目になりましたね。」
「ちょ、ちょっとぉ〜 何かはーりーさんまでにそんなこと言われるのは嫌やなぁ・・・」

はーりーはHSW裏側に出るなりイキナリBDに厳しい突っ込みを浴びせた。BDは嫌そうな顔をしつつもしぶしぶ作業を続ける。紗耶香の姿をそこに見かけると、はーりーは紗耶香に話しかける。

「あの・・・市井ちゃん?ちょっと耳にしたかも知れないけど、今度の土曜なんだけど・・・」
「へっ?どうしたんですか?耳にしたって・・・何も聞いていないけど?」

紗耶香の反応に少しホッとしつつはーりーは遠回しにヒメヨとのバトルについて聞いてみた。

「もし、もしだよ?六甲の走り屋が市井ちゃんとバトルしたいって言ってきたら挑戦は受ける?」

「え?私とバトル??」
「そ、そう!」
「う〜ん、その時の事情にもよるけど・・・あんまり私は好戦的じゃないし、走り屋って勝負を申し込まれたら受けなきゃならないって話は圭ちゃんにも聞いたけど、そういうのってあまり好きじゃないかな。」

紗耶香の答えを聞いてはーりーは(汗)な状態だった・・・元々ある程度の性格は知っていたし圭からも聞かせられていたが、こういう答えをされてしまうとそうそう勝負を受けるわけにはいかないとも取れたからだ。紗耶香は何か普段と様子の違うはーりーを不思議に思いながらも彼に突っ込んでみた。

「何か、今日のはーりーさん変ですよ?妙にそわそわしてるし・・・」
「え、あ、いや、そうでもないと思うけど・・・(汗)お、そろそろベイウインズのミーティングあるんで失礼するよ。」

はーりーはそう言うとそそくさとHSWを後にした。軽はずみな勝負の請負がまたしてもマズイ展開になったことに後悔と反省の念を抱きながらも、もうあと数日と迫ったヒメヨとのバトルの事をどう紗耶香に切り出せば良いのかをかなり深刻に考えながらHSWを後にして圭達の待つ場所へと急ぎ足で向かった。