ヒメヨの指定したバトル当日の午前中。
ベイウインズの面々の思案は未だに続き、長らく紗耶香を説得しようとした彼らにも諦めムードが漂い始めていた。

「あ〜あ、もう駄目や〜」
「打つ手無しね・・・」

朝からのたく、はーりーが務めるガソリンスタンドへ現れたぴーと圭は落胆している様子で話し始める。その様子を事務所から見ていたみちゅうは「やれやれ」と思いながら彼らを眺めていた。

「市井ちゃんも案外頑固だな。ま、それはそれで良いんだが・・・。」

みちゅうはそう言いながら吸っているタバコの灰を灰皿に落とすと、携帯電話を取り出し電話帳を呼び出す。
ピ、ピッ

「ちょいとお節介をやいてやるかな?」

みちゅうはそこからHSWの電話番号を見つけると早速電話をし、電話に応対したBDを軽く弄りながら黒を呼び出して貰う。

「ちょ、ちょっと・・・みちゅうさんまで(涙)黒さんに代わります・・・」

BDは弄られた事にネガティブになりつつ黒に受話器を渡す。彼は手にしていた軍手を外すと、電話に出てみちゅうの話を聞いた。彼の話の内容はベイウインズが請け負ったテンペストの挑戦に対して紗耶香が動かない事と、何かHSWでの紗耶香の様子に変化がないかを尋ねた。

「そういや、昨日あたりから何か考えこんでいる様子ですね。まぁ、あまりそう言うところにまで干渉するのはどうかな?と、思ったんで普通に接してましたけど。」
「じゃ、彼女はある程度の事は知っているってことかな?」
「まぁ・・・どの程度かは知りませんがね。彼女を口説くのは至難ですよ。ほら、いつだったかS14の時も苦労したもんですからね・・・」
「なるほど・・・。」

みちゅうは少し考え込んだが、黒が少し笑いながらもそこにすかさず一言いった。

「ま、ナンパはみちゅうさんの専門分野でしょ?」
「な、何をいってんの(汗)取りあえず、ベイの連中にちょいと手を貸してみるだけだから・・・深い意味はないって!」

一通りの会話を終えると、みちゅうは電話を切り、店内から客の入り具合を確認しつつ仕事に戻った。そして、時間は過ぎてゆく・・・

夕刻を回った頃、ベイウインズのメンバーが再びスタンドに集い始め、最後の悪あがきとも言えるミーティングを行った。

「クソッ、こうしている間にももう8時を回ったでぇ・・・」
「取りあえず、山には登らないと行けないよね?」
「でも、説得は・・・?」

焦るぴー、刻一刻と迫り来るタイムリミットに対して何とか落ち着いて対応しようとする圭、少し混乱気味の武蔵。直前になってさらに彼らの空気は重くなっていった。

「ここにおってもしょうがないやろ?六甲にあがっとかんとテンペストの連中が変に騒ぐやろうから、自分らは先に行くわ。」

ガチャッ
のたくはそう言うと、GSの事務所を後にして自分の車に乗り込み始めた。

「あ、オレも行きます!」

キキッ、ボォアアアン、キュィッ、ボォアアアアアアアア

はーりーも慌てて出てゆき、彼らが出ていった後で覚悟を決めた圭たちも一斉に六甲を目指してGSを後にした。

「だから、これは無理なんだって・・・(汗)」
「そこを何とか!市井さんが動かないんじゃ、今度の勝負は無しになるんです。だから・・・お願いしますっ!!」

圭やぴーらベイウインズの面々が動き出したのと同時刻。
HSWでは梨華がやたらとBDに頭を下げて頼み事をしていた・・・彼女はHSWガレージに止めてあるレビンを持ち出そうとしてBDに許可を貰おうと試みるが、黒が不在の状況で勝手な判断が出来ないためにBDは困っている。そうでなくとも優柔不断な所がある彼故に非常に(汗)な状況であった。

「梨華ちゃんがこれ(レビン)を動かすっても・・・こいつはもうトリプルプレート(クラッチ)が入っているし、無理だよ。動かすことも出来ないと思うよ・・・?」

梨華はそのBDの発言を聞くと少しマジな表情を見せつつBDに食ってかかった。

「そんなのやってみないと分かりませんっ!」
「無理だと思うけど・・・(あ〜、梨華ちゃんの頼みも聞きたいけど、ここで勝手なことをするとクビ?いや、懲戒解雇だよ)」
「BDさん、お願いしますから、梨華ちゃんの頼みを聞いてあげてくださいっ!」

BDがまごついているとその様子を奥の倉庫から出てきた所で見かけた亜依がすかさず彼の元に掛けより、梨華共々BDに頼み込んだ。

「でも・・・説教どころのレベルじゃ済まないよぉ(大汗)」
「わ、私が責任を持ちますっ!」
「加護も梨華ちゃんと一緒に責任を持ちますからぁ・・・」

BDは彼女らの熱意も感じ取ったが、それ以上に女の子にここまで頼りにされている自分の状況に少し優越感を持ちながら内心で「こんなのも悪くないよね?ムフフ。。。」などと囁きつつ、今置かれている立場に気分をよくしているようでもあった。

「こんばん・・・あれ?もうみんな上がったんですか?」

そしてベイウインズの面々が去ってから数十分後、紗耶香はいつもの様に閉店間際のガソリンスタンドを訪れるが、すでに閉店状態に近いスタンドと、事務所にしか明かりがともっていないのを不思議そうに思いながらも建物の中に入っていった。彼女がそのまま中に進んでいくと、伝票処理をしていたみちゅうが紗耶香を出迎える。

「ああ、いらっしゃい。今日は何でも六甲でバトルがあるらしいからね。とっくにみんな山に登ったよ。」
「どおりで・・・」
「ところで、何か摩耶の走り屋とバトルするって聞いたんだけど?」
「え、あ、それは・・・」
「まぁ、突っ立っててもなんだから、そこに掛けなよ。」

みちゅうはそういって紗耶香にソファーへ掛けるよう進めると、自分も腰を下ろしタバコに火をつけた。
シュボッ

「(さ〜てと、ここからが問題だな。どうやってモチベーションをバトルに向けるかが説得のポイントだよな)」

タバコを軽くふかしながらもみちゅうはいかにして紗耶香を説得しようか思案し始める。そうしている間にも、店の前をテンペスト対六甲のゾロ目のバトルの噂を聞きつけた走り屋達がその対決を一目見ようと六甲山を目指して走り抜けてゆく・・・