ヒメヨとのバトルが終わり、これによりまたしても紗耶香の六甲における名声が高まり、それと同時にベイウインズの面々も盛り上がりを見せているのは言うまでも無い。しかし、そんな状況の中、修羅場を迎えている奴もいる。
「ス、、、スイマセン!」
「・・・・。」
梨華にレビンを持ち出され、その事に恐れを感じて仕事を放置して逃げ出したBDは今、「テンパイ」の状況にある。彼は持ち前のオーバーリアクションで黒の前に土下座をして謝りだしたが、対する黒はただ黙ったまま椅子に座ってタバコをふかす・・・。
「こりゃぁ、彼も終わったでぇ・・・(合掌)」
「そうですね。かわいそうだけど、何か端から見ると笑えます。ま、どうせ人ごとだし 」
HSWのガレージから事務所でのBDのやり取りを見ている武蔵と朴は人ごとの様にしてのぞき見している。
「・・・・。」
「(や、やばい、これはマジで怒ってる・・・)」
黒はひたすら黙っている。それがまたBDにとっては威圧的で何とも言えない空気を作っていたのは言うまでも無い。そのまま重い時間だけが流れていってゆく。
ガチャッ
「あのぉ〜。」
そんな重苦しい空気が渦巻くHSWに亜依と、仕事を抜け出してきた梨華が申し訳無さそうにして中に入ってきた。気まずい空気の中で彼女たちはレビンを持ち出した訳を黒に説明しBDをとがめないように説得をするが、黒は椅子から立ち上がり亜依と梨華の横を通り過ぎてそのまま扉に手を掛ける。
「おい!」
「は、はひぃ〜。。(汗)」
「取りあえず、今回は彼女らに免じて許してやるよ・・・プルプル。」
「ま、まじっすか!でも、微妙に顔が引きつってませんか?(汗)」
黒は振り向きざまにBDに声を掛けるとそのまま外へと消えていった・・・。
「取りあえず、クビは無くなりましたね!」
「でも・・・ホントにすいませんでした!」
危機を回避したことに胸を撫で下ろした亜依と、自分がやった事の大きさに改めて驚きつつBDに深々と頭を下げた梨華を見てBDは土下座を解くと彼女らに一言こぼした。
「クビは繋がったけど、減給は確実だよぉ(涙)」
「そりゃぁ、しょうがないのでは?」と思いつつも梨華達はホッと胸を撫で下ろすと、そのままHSWを後にしてそれぞれの仕事に戻った。
ボァアアアアアン、キキッ!
バァン!
「や〜れ、やれ、全くアイツも飛んだ醜態を曝してくれたぜ!」
「おいおい、シュウ君。それは言い過ぎだよ。」
その頃、テンペスト陣営ではヒメヨの敗戦を受けていつものファミレスで打ち合わせを始めていたが、その事について早速シュウがヒメヨを責めた為にレンズは彼を止めるようにして話し出す。
「言っておくけど、あのゾロ目は本当に速いよ!」
「確かに、レンズの言うとおりでもある・・・」
「そうですよ、 浩史さ・・・じゃない、HITさんもそう思うでしょ?一概にヒメヨさんを責める訳にもいかないですよね。」
ミーティングに同席したHITこと浩史もヒメヨをフォローするようにシュウに言うが、彼には戯言にしか聞こえていないようだった。
「二人ともあの人の肩を持ち過ぎなんだよ。オレは別にアイツをリーダーとは認めちゃいねーしこっちから見てもアイツのピークは過ぎたかなって思ってるんでゾロ目に負けたのも当然っちゃ当然だよな。」
「おいおい、お前の下りの速さは認めるが、そこまでの自信ってのはゾロ目に勝てる公算があるのかよ?」
シュウは浩史に言われると、アイスコーヒーを飲み干して彼に言う。
ゴトッ
「ありますよ・・・確実に勝てる方法が!ま、見ていてくださいよHITさん。最高にテンペストが盛り上がる展開に持っていってやりますよっ。」
シュウが盛り上がっている客席を見つつも、あゆみはカウンターで待機していたが、彼らの話からヒメヨ敗戦の報を聞くと、彼女は少しヒメヨを気にしていた。
「あの時、バトルにいったんだ・・・。」
ガチャッ
と、その時。ヒメヨが店内に入ってくる!あゆみは慌てて接客をする。
「あ、いらっしゃい・・・。」
「・・・・。」
ヒメヨはいつもならばここで(萌)の状態になるのだが、今回ばかりは様子が違う。そのままあゆみには目も合わせないままズカズカとシュウの元に駆け寄る。
「って、事で、ゾロ目の野郎を摩耶に呼び出せば楽勝って段取りですわ!」
「そうは言ってもだねぇシュウ君、勝手にやられても・・・ゲッ!(汗)」
「ん?どうした??」
レンズが急に固まったのを見て、シュウは彼の目線を辿る。そして見上げた先にはヒメヨが立ちはだかる。
「シュウ・・・。」
「へっ、な〜んだ、ゾロ目に負けて無様な醜態を曝した摩耶の走り屋さんじゃねぇか。一体、何のようだい??」
シュウはヒメヨを見るなり、イキナリ毒舌を浴びせる。それを見たレンズは慌てて彼らの間に入っていく。
「ちょ、ちょっとそれはヤバイって(汗)」
「いや、こういう時だからはっきりと「格」の違いってのを教えとく必要があるんだよ。」
グワッ!
「!?」
ヒメヨはシュウの胸ぐらを掴むと、そこから瞬き一つせずシュウを睨みつけて言う。
「何を企んでるかは知らんが、テンペストの名に泥を塗るような真似だけはするんじゃねぇぞ!」
パシッ!
シュウはヒメヨの手を払うと彼との間合いを少しあけてからヒメヨに言い返す。
「フッ、てめぇの方がテンペストを汚すような事をしたんじゃねぇのかい?」
「なに?」
「どー考えても性能差では勝ってる車を振り回してFFのゾロ目なんぞに負けを喰らってよぉ!お前さんの方が明らかにテンペストの恥さらしだぜ!!」
「貴様!!」
グワッ!!
「(うわっ、最悪な展開だ・・・。)」
二人の間に入ったレンズは何となくヒメヨがキレかかっているのを見て「マズイ展開になった」とオロオロしていたが、そんな事をしている間にもヒメヨはまたしてもシュウの胸ぐらを掴みかかると、そのまま彼を殴り付けようとしたその時!
「・・・二人とも、止めてぇ!」
ヒメヨとシュウを制するようにあゆみは一言声を上げると彼らの動きが止まる。正に、時間が止まった・・・そんな感じの止まり方だ。
パシッ!
「やれやれ、これだからテンペストが悪者呼ばわれされるんだよ。」
シュウはまたしてもヒメヨの手を振りほどくとすかさず毒を吐く。ヒメヨはあゆみの登場にしばし呆然としていたのか、シュウの毒舌を完全に無視したのかは定かでないが、しばらくそのままの状態で立ちすくんだ。
「ちょっと、シュウ君も言い過ぎよ。今は他のお客さんも居なかったから良いけどこれって警察沙汰よ!」
「あ〜悪い悪い・・・この単細胞が食ってかかってくるからしょうがねぇよ。」
「シュウ君」何でシュウの名をあゆみが知っているのか?ヒメヨは彼らのやり取りが普通の客とウエイトレスの会話でない事に気が付くと何やらジェラシーらしきもの・・・いやジェラシーそのものに駆られて再びシュウに喰って掛かった。
「おい、何でお前みたいなサル助が彼女になれなれしくしてんだ、あぁん!?」
「彼女とは幼なじみなんだって。ってか、それはこっちが言いたいことだ!何でお前のような単細胞があゆみの事を知ってる!?」
「あゆみだと!?てめぇ!気安くよぶんじゃねぇ!!」
グワァッ!
「なんで喧嘩ばっかりするの・・・。グスンッ。。うっうっ。。」
はっ?(汗)
あゆみの涙に焦り、我に返った争う野郎達は取りあえず、喧嘩の体勢を解くと、お互い少し弱めに睨み合いをしつつもあゆみに小声で謝った。
「なんなんだ、コイツらは・・・。」レンズとHITはあゆみの行為にそれまで感情むき出しにしていた争う男達の急変振りにただ呆れながらヒメヨ達を見ているだけだった。元々彼らがお互いに牽制し合う仲で気の合わない者同士と言うことはテンペストのメンバーであるならば誰でも知っている事であるが、それが今、こうして女性がらみになってしまった事に対してレンズ達は収集が着かなくなったと内心思いながらも今後のテンペストの行く末を少し憂いを感じざるを得なかった。
「と、いうか・・・何でお前が彼女にあやまるんだよ!お前は全くの他人だろ?」
シュウはヒメヨがあゆみに対して詫びるのを気に入らない様子で彼に喰って掛かる。当然の事ながらあゆみというリミッターが効いていたヒメヨの怒りが再びレッドゾーンに入る。
プチッ!
「てめぇ!何言っとんのじゃぁ!!」
取りあえず他の人間が少ない時間帯だったのでそれだけが救いだなと思いつつも、
「ああ、やっぱりこうなのかよ。」とあきれながらレンズ達は呆然としていた・・・。
そして、タダでさえ巡り合わせの悪い環境において、さらなる巡り合わせの悪さが起ころうとしていた。
ブゥ〜ン、キキキッ
「取りあえず、黒さんは石川の事については何も言わなかったね。」
「そうなんですけど・・・やっぱりスイマセンでした。」
「もう、良いんじゃないの?済んだことだしっ!」
ガチャッ!
紗耶香は梨華と共にたまには違う店に行こうと、たまたま「騒動」の真っ最中であるファミレスの扉を開けて中に入ったが・・・。
「てめぇ!このヤロ〜!!」
「な、なにしやがる!」
「も〜っ!何やってるのよ!!」
「やれやれ、どーにもならなくなってきた(汗)」
バタンッ!
店内で繰り広げられていた「戦慄」を目の当たりにすると、即、向きを変えて何事もなかったように店から出て扉を閉めた。
「市井さん?他の店に・・・行きません??」
「そ、そうねぇ・・・な、何か最近は食べ物の嗜好が変わってきたところだったのよ。」
二人とも(汗)な状態になりつつも、その場を後にして別の店へと向かっていった・・・。