ザ〜ッ

「おっす!みんな元気か〜っ!?好きな車は・・・六甲のゾロ目。な〜んってウッソ〜!注意一秒、怪我一生!今日も元気良く行くよ〜っ!マリンのメリケンベイFM!!」

さすがに夏真っ盛りの昼下がり。当然、K市の気温も今年最高ではないかというくらいにまで高まり、今日は海に繰り出そうと言う圭に意気投合した紗耶香は彼女と共に須磨区にある海水浴場にやって来て、さっそく適当な砂浜に大きめのビーチパラソルとリクライニング式の少し大きめのシートを設置し、海の家の更衣室で水着に着替えるとはしゃぎながら外に飛び出し、早速設置したシートに横になってFMラジオを聞きながら夏の風に吹かれていた。

「あ〜、何かこう最近は車とばっか向き合ってる事が多いからさぁ、こうやって人の集まるところに来るのも久しぶりだよっ。」

紗耶香は圭がそう言ったのを聞いて少し笑いながら答える。

「なんかさぁ〜圭ちゃん、ちょっとおばさん入ってるよ?」
「ちょっと、何言ってんのよ!」
「ほら、そんな事で怒ってるとしわが増えるよっ!」
「もう、からからないでよ〜ぉ。」

圭はふてくされながら少し体を起こして髪を束ねると、FMラジオのDJも触れたゾロ目の事を白々しいと思いつつ紗耶香に聞いた。

「やっぱ、これってさぁ?紗耶香の事よね?」
「え、六甲のゾロ目って言ったぶん?」
「そうそう、ナンダカンダ言ってあんたも有名人よねぇ・・・。」

紗耶香は立ち上がり海の方に向けて歩き出し、海に浸かると波と遊びながらそう言われた事に対して少し迷惑そうな顔をしつつ圭に言う。

「な〜んか嫌な感じぃ。」
「あ、ゴメン!気に障ったなら許して・・・。」
「いや、そうじゃなくてさあ。そうやって囃し立てる周りに嫌気を感じるって事っ。私ってさぁ・・・そんなに凄いの?」
「凄いも何も・・・紗耶香のこなしてきたバトルってのがそもそも凄すぎだって!大体、今まで相手をしてきたライバル達ってのが凄い面々だしね。」

プシュッ!

圭はそういいつつも「ま、そのライバルに自分も入るけどね。」と思いながら、クーラーボックスから冷やしたコーラを取り出すと早速それを開けて一口飲む。

「(何かウワサばかり先行されるのも恐い気がする。やっぱり、私って本格的に走っている人間から見れば嫌味な存在なのかも知れない・・・。)」

紗耶香の中ではヒメヨとのバトルを終えてもまだ、シカミに言われた事が心に深く残っているようだった。しばらく波の音を聞きつつも海の沖を眺めながら考えに浸った。

う、うわぁあああ!

そんな思いに浸る紗耶香と開放的な海水浴場の空気を楽しんでいた圭に、どこからとも無く聞いた様な声が遠くから叫びとして聞こえてきた。


「よっしゃ!もうちょい右だって!!」
「あ〜、これでBDくんも終わったな(合掌)」

紗耶香と圭は声のした方向をよく見ると、そこにはちょっと顔ぶれは違うがいつものメンバー達が西瓜割りならぬBD割りをやっているようだった。

「だめですよ、BDさ〜ん。梨華ちゃん達のおかげで黒さんの説教から逃げられたなんて調子に乗ったら!」
「そうそう、あかんでぇ!」
「見事にあのときは逃げましたからねぇ・・・。」

はーりー、のたく、武蔵は埋められているBDを見つつも、まるで悪魔の様にBDを弄っている。BDにしてみれば、今この状態にされて初めて彼らが何故に自分を海に連れだしたかが理解できた。しかし、時すでに遅しである・・・。

「ちょ、ちょっと、そんなん君らには関係ないやん(汗)」

BDはもはや完全に生けるネタだ・・・脱出もまず不可能な状態に置かれてしまっている。まぁ、見方によればこれは虐めにもなるかも知れないが。

「あ〜、どこらへんですかねぇ?」
「お、そうそうそのまま真っ直ぐ・・・。」

げぇっ!ちょ、ちょっとぉ(涙)

はーりーらは目隠しした状態で木刀を持ったRAMPに指示を送り、彼はそれに従って木刀を持ったままBDの前に迫ってゆく・・・ BDにとって、彼はまるで死刑執行人の様にも映る事は言うまでもない。

「・・・・。」
「やれやれ、何をやってるんだか?」

紗耶香達は、そんな彼らを見て正直呆れるしかなかった。

「ねぇ、こう言うときはどうしたほうが良いと思う?」
「そんな事をこっちに振られても・・・。」

圭は紗耶香に振られて答えに困ったが、サングラスを手に取ると、それを掛けてから紗耶香に返事をした。

「何かあまり気分的に関わりたくないって感じだし、状況だし・・・他人のフリするわ。気付かれないようにしてよっ!」
「ま、予想通りの答えだったけど・・・確かにあれには関わりたくないわ。。」

紗耶香は苦笑しつつ自分もパラソルの下にいる圭の元に戻ると、自分もサングラスを掛けて圭と同じように他人のフリをすることにした。

ボァアアアアン、キキッ!

バタッ

「あれ、何でみちゅうさんがHSWにいるんですか?」

ぴーはHSWの事務所でタバコを吸ってソファーにかけているみちゅうの姿に驚きつつ車をHSWの前に止めて中に入ってきた。

「ん?ああ、今は昼休みだからね・・・それで、来たんだけど、黒さんがちょい飯って言って出ていったんで留守番になっちまったんだよ。」

「何か、あの人は色々と人に任せてすぐ居なくなりますねぇ。」

みちゅうはこのような状況は日常茶飯事なので特には気にしていない様子だったが、ぴーは黒の行動に苦笑しつつもみちゅうの正面に座った。彼らがくつろいでいると亜依が事務所に入ってくる。

「あれぇ〜、二人ともどうしたんですかぁ?」
「どうしたもなにもなぁ・・・黒さん居ないし。留守番だよ、いつもの事ってやつさ。」

亜依にそう言うとみちゅうはタバコを灰皿で消して立ち上がり、ガレージの方に向かって歩きながら亜依に注文した車について尋ねる。亜依はそれを聞くと少し慌てながらみちゅうの後を追って返事をした。

「あれはもう完成してますよ。裏のガレージに止めてありますけどぉ、エンジンがまだイマイチって黒さん言っていたから、100点じゃないですよぉ。」

みちゅうはそれを聞くと、ガレージに入った所で亜依に詳しい状況を聞き出す。

「そう言うことか。じゃ、他は良いわけだね?」
「はいっ!市井さんの乗った梨華ちゃんのオプティーに負けたGTRって車あったでしょ?あれが廃車になったんで、そこから「あれ」を取りましたぁ!」
「それで、納期が短くなったのか?でも、あのGTRはまだ走りそうだったけど??」

確かに、みちゅうの指摘通り板金作業で修復されたGTRが未だ走れるようなオーラを放ちながらもひっそりと置かれている。亜依はそれを見ながらみちゅうに返事をした。

「あれは〜ですねぇ、持ち主が廃車にしたいって言ってきたのでぇ、取りあえずHSWの物にしちゃったんです。で、みちゅうさんの欲しがっていた「あれ」だけ今はずしちゃったんで、今度また買って付けたらHSWの車にするんですよっ!」

「そうなんだ。う〜ん、こいつはとんでもない営業車になるけど・・・。」

みちゅうはそう言いながらガレージの表にずっとシートに覆われているかつてのHSWの営業車を見ながら更に語った。

「BDの奴が壊したこれはもう廃車だなぁ・・・。」
「そうですねぇ(苦笑)」

取りあえず、亜依に今日か明日にでもシェイクダウン(初試走)するからその旨を黒に伝えるようにと話すと、みちゅうは事務所内に居たぴーに話しかける。

「悪いけど、明日か明後日のどちらかで西六甲を貸してほしい。」
「ん?それはそのどちらかでベイウインズに西を走るなって意味ですか?」
「そう言うことだ。」
「みちゅうさんが走るわけかぁ・・・何か想像がつかんけど、そら別に構いませんよ。でも何でベイウインズをのける訳ですか?」
「それは・・・。」

みちゅうはそう言ってタバコに火をつけると、大きく煙を吐き出してぴーに言う。

ぴー君に事故を貰いたくないからな(ばきゅ)

妙に変なところを強調されたぴーは苦笑しつつもみちゅうに言い訳をする。

「そ、そんな、いつも事故るわけやないですよぉ〜。」

「とにかく、貸し切りだ。良いな?」
「そら、別に構いませんよぉ〜。で、いつにするんですか?」
「いつでも良いならば・・・明日!」
「わ、分かりました。」

ぴーはそう言うと早速、他のベイウインズのメンバーにもその事を伝えるためその場で連絡を取り始める。そして、明日走れないならば、今夜にでも早速練習しないといけないなと思うと、その日の夜、一人で西六甲へ走りに行くのであった・・・。