照りつける日差しと耳に残って止まない蝉の鳴き声が聞こえ始めてきた朝のHSW・・・まぁ、この辺はいつもの出だしで特には変化はない。(笑)
ガラガラッ
黒はいつものように事務所のカギを開けると、続いてガレージのシャッターも開ける。
「ゲッ、なんじゃこれはぁあああああああああ!?」
彼が驚いたのも無理はない。そこには昨日のバトルで紗耶香がガードレールに当てまくりフェンダーがボコボコになった変わり果てたレビンの姿があったからだ。とにかく、彼は動揺した。そしてこの思いを怒りに変えて誰かにぶつけたいなどと思っている。
「おはようございま〜す!」
「ふぁ〜ぁあああ。」
そんな彼の元に亜依とBDが出勤してくる。亜依の威勢の良い挨拶に無理に作り笑いをして頬が「ひくひく」している黒を見て、亜依は何とも言えない殺気を感じた。
「あのぉ・・・早速伝票を見てきますね。」
そそくさとガレージを後にした亜依を見てBDは未だハッキリと目が覚めていないのか?生あくびをさせながら黒の横を素通りして事務所に向かい始めたその時・・・
「うぉ〜りゃぁ!」
ボコッ!
「い、痛い(涙) な、なにするんですか?何も怪しい事してませんよぉ〜。(汗)」
イキナリ黒はBDの頭を解体したエンジンから取ったオイルパンで思いっ切り叩いた。と言うかBDの返事を聞いて「普段は怪しいことをしているのかよ。」と突っ込みたくもなった。
「お前、これ何様のつもりだ!?」
「レビンには触ってませんよ・・・この間怒られたばっかりじゃないですか。」
完全な濡れ衣である・・・しかし、BDには今までの余罪があるために強気に濡れ衣を拭うことが出来ない。が、そんなオロオロしているBDと勝手に切れた黒の前に紗耶香がやってくる。
「おはようございます!」
紗耶香は黒達の有様を見て、いつものことだと思い半ば放置して止められているレビンの元に近寄る。
「わっ、何ですか?これ??誰がこんな酷い事したんですか???そりゃあんたです(笑)」
「市井ちゃぁ〜ん、助けてよ〜!何か知らないけど黒さんが・・・。」
BDはモロに「助けてください」という感じをさらけ出して紗耶香に話しかけるが、そんな彼にまたしても・・・。
ガコッ!
「い、いっっ・・・ちょ、ちょっと、黒さ〜ん、いくら何でもスパナは無いでしょう!?」
今度はスパナで思いっ切りBDを叩いた黒だった。BDは「この人、マジでオレを殺す気なんじゃ・・・。」と冷や汗をかいた。確かに、普通だったら死んでおかしくないやられ方である。(笑)
「そう言えば、昨日は市井さんがレビン持ち出しませんでしかたぁ〜?」
紗耶香の姿を見た亜依がガレージにやってくると、昨日の閉店間際に紗耶香がHSWに駆け込んでレビンを持ち出したと黒に伝える。
「それじゃこれは・・・・?」
「おかしいなぁ、別に当てた覚えはないんだけど・・・。」
黒はこの際、誰がレビンを凹まそうがもう構わなかった。彼の中にはBDをサンドバックにすることしか頭にない。耄碌している紗耶香を後目に、次は何でBDを叩こうか考えるようにガレージの周囲を見渡す。
「あ、思い出した!昨日の晩、凄くムカつく奴とバトルして・・・何か分からないけど、追い回してぇ・・・・。」
「バトル?昨日、やり合ったのか??」
紗耶香の口にしたバトルと言う言葉に、我に返った黒はその事を聞こうと彼女に話しかけた。
「そういや、昨日みちゅうさんが西でスカイラインが大破したって電話掛けてきたな・・・それに関係しているのか?」
「ええ、何でもベイウインズの人たちにぶつけようとしていたところに、ぴーさん達とは関係ない人が巻き込まれて・・・あ、そう言えばHSWにスカイライン運んだんじゃないんですか?」
紗耶香はガレージ内にあさ美のスカイラインが見あたらないことに気がつくと黒にその事を尋ねる。その質問に、HSWに33スカイラインを運び込んだBDはうつむいた。黒もしばらく返事が出来なかったが一息置いて紗耶香に答えた。
「あれは廃車だよ。フロントのメンバーが大きく凹み過ぎてる・・・持ち主には修復でどうにかなる次元じゃ無いって事を今日言うつもりだ。」
「そうなんですか・・・。」
紗耶香はあさ美のスカイラインが自分のせいで大破、そして廃車になったのではないかと自分を責める。たちすくんで考え込む紗耶香、そしてガレージで気の毒そうに突っ立っている他のHSWのメンバー達の前に聞き慣れたエキゾーストが聞こえてくる。
ボォアアアアアアアアアン、キキキッ!
ガチャッ
「どうしたのよ、浮かない顔してっ!」
S14をガレージ前の駐車場に止めると、圭は颯爽と車を降りてガレージの中に入ってきた。今の紗耶香のテンションとは正反対になにやら上機嫌の様だ。
「あ、圭ちゃん。」
「な〜にやってんのよっ!聞いたわよ〜っ、昨日の一件。って、今日はその話をしにわざわざ朝っぱらからここに来たんじゃなかった。」
圭はやけに機嫌良さそうにして紗耶香にそう言うと、彼女のテンションに違和感を感じながらも話しかけてみる。
「で、何なの?その話って??」
「まだ触りしか分かっていないんだけど。今日の晩、いつものガソリンスタンドに来れる?」
「うん。大丈夫だけど・・・。妙に勿体ぶるなぁ」
取りあえず、何かを匂わせながら圭はその場を去り、そして早くもその日の晩・・・。
ガチャッ
「こんにちわ〜。」
紗耶香は圭に言われたようにベイウインズの連中が集うみちゅうのガソリンスタンド事務所の扉を開けて中に入った。彼女が中に入ると向かいのカウンターでみちゅうは黙々と帳簿をつけている。そんな彼に紗耶香は話しかける。
「あ、みちゅうさん。昨日はスイマセンでした・・・。」
「いや、特には心配していなかったんだけどね。」
みちゅうはそう言いながら、伝票のチェックに一区切りつけると紗耶香に話す。
「摩耶山へ行ったって?」
「はい・・・。」
「勝ったのかい?」
紗耶香は黙って頷く。彼女の様子を見て、みちゅうは紗耶香があさ美の容体を気にしているのではないかと思うと紗耶香にそれを伝える。
「あの紺野って子は明日にも退院するらしい。まぁ、抜糸が済むまでは車には乗れないだろうけどね。」
「抜糸?一体、何針なんですか??」
抜糸と聞いて、余計にあさ美の怪我を気にした紗耶香にみちゅうは続けて話す。
「12針って。本人はそんなに思っているほど酷い状態じゃないよ。市井さんにヨロシクだってさっ。」
「そうですか・・・なら良いんですけど・・・。」
そう言うと、紗耶香は軽くみちゅうに頭を下げ、事務所の奥でざわついているぴー達を見た。彼らベイウインズのメンバーらはソファーに座り込んで話をしていた。どうやら話題は昨日の交流戦の事では無く、全く別件である事は聞こえてくる彼らの話の断片で紗耶香も分かったがどうやら話に夢中で紗耶香の登場にも気づかない様子である。
「やれやれ・・・どうも懸賞が当たったとか言って今朝からあんな感じで仕事中も外で時間を見つければその話題ばかりなんだよ。」
みちゅうは話し込んでいる、のたく、はーりー、梨華達を見ながら紗耶香にぼやいた。そして、それが今朝の圭の妙なテンションに関係していると判断すると、「やれやれ」と言う感じになりつつもみちゅうに言った。
「でも、石川までも話しているって事はどうやらかなりの代物みたいですね、その賞品は。武蔵君がいない?やっぱり残念な人だよねぇ、彼も(笑)」
「まあね、詳しくは知らないけどなにやら招待券がどうのとか言っているよ。どのみち店も来週から盆に入ることもあって少し手が空くからその期間を利用して行くらしいよ。」
「へ〜っ、そうなんですか。」
みちゅうと紗耶香がそう言いながら話し込むのたく達をみていると、ぴーのJZX100チェイク2が事務所の真ん前に止まった。
キキッ!
ガチャッ
「あっ、市井ちゃん!のたく君に聞いた?」
ぴーは急ぎ足で事務所の中に入ってくると、入り口近くに立っていた紗耶香にいきなり声を掛けた。
「やれやれ、君も彼らと行くのかい?」
「なっ、なんですか店長。その迷惑そうな言い方は・・・。」
「いやぁ、何か君が行くとねぇ。特に運転をすると何かが起こりそうな気がして、ちょっとねぇ・・・ってか、車は壊れたままの方が良いんじゃないの?どうせまた壊すんだし。」
みちゅうは何やら意味深な発言をぴーにすると、そのまま事務所のカウンターの後ろに回り今日の売り上げ伝票の整理を始めた。
グサッ!
「放っておいてくださいよっ。(汗)」
ぴーはみちゅうの発言に「それじゃいつも事故るみたいじゃないですか?」と不満に思いながらふてくされて返事をした。まぁ、みちゅうの言うことは一理ある。(笑)
「で、何かあったんですか?」
紗耶香はぴーに事の真相を聞くとぴーはすぐさま答えた。
「あれっ、まだ聞いていないの?何かのたく君がテレビ番組の懸賞に半年くらい前に応募したらしいんやけど、それが今になって届いたって事で今から参加メンバーを決めるところなんや。」
「なるほど、それで石川ものたくさん達の話に入っているんだ・・・。」
ぴーはそのままのたく達の話の輪に割って入るとすぐさま高速道路のマップをテーブルに広げて具体的な現地へ向けての進路を説明し始めた。そうしている間にぴーに続くように圭もGSにやって来た。彼女はぴーの車に横付けするように車を止めるとそのまま事務所にやって来た。
ボァアアアアアン、キキィ!
「あっ、紗耶香。」
「な〜るほど、のたくさんの懸賞に圭ちゃんは便乗したわけね?」
紗耶香はにやけながら圭にそう言うと、圭はそんな彼女に言った。
「ま、良いじゃないの?タダって所が良くない??ねぇ???」
「そりゃそうだけど・・・。」
圭の返事と彼女のそんな根性を垣間見て、紗耶香は「こりゃオバサン入りまくってるよ。。」という思いに駆られたが、すぐに素に戻ると圭に言った。
「ねぇ、ちょっと良いかな?」
紗耶香はそう言うと圭と共に事務所の外に出た。GS構内の照明はすでに落とされ周囲も暗くなっていた。紗耶香は構内の適当な場所まで歩いてくるとそこで立ち止まって圭に話し始めた。
「昨日、凄くムカついた奴とバトルしたんだけど何か不思議な感じだったのよね。別に怪我をしたサザンクロスのあさ美って子の為に走った訳じゃ無いんだけど、相手を追っているうちに妙に熱くなって負けたくないって思ったの。そのうち、相手のセコイやり方にキレて・・・そこから記憶が無いんだけどね。圭ちゃんとバトルした時は他に勝たなきゃいけない目的があったから勝ちと言うのに拘らざるを得なかったけど今回はちょっと違った・・・。なんだろう?上手く言えないけど、走っている中で絶対にコイツには負けたくないって気持ちが高ぶって、気がついたらどんどん前を行く車との距離が縮まっていった・・・。」
圭は紗耶香のが大体何を言いたいかが分かったが、つくづく不思議な子だと思いつつ話を聞き、そして笑みを浮かべながら紗耶香に言った。
「何かしばらくの間に紗耶香って走り屋になってきてるね。」
「えっ?そう・・・なのかなぁ?」
紗耶香はそう言われると、少し謙遜したのか、それとも嫌がったのかは定かでないが、なにやら照れているようにも圭には思えた。そして彼女は続けて話し出した。
「相手の卑劣な行為に対して切れてしまったのは紗耶香自身に走り屋のプライドとかが生まれているからじゃないの?そこに触れてしまったからコイツには絶対に負けたくはないって思いが紗耶香に生まれて・・・自分では気がついていないどこかにあった誇りがあったからこそ許せないとかって思いが生まれたんだよ。走り屋ってそんなものよ。相手が自分以上であったとしても常に勝ちにいこうって思うからね。意地を張ってる、ナルシストって言われればそうなのかも知れないけどね。」
「そうなのかなぁ・・・。」
圭は話を聞いて紗耶香がまた一つ壁を乗り越えたなと感じると、どこまで紗耶香は伸びるのだろうと疑問に思った。
「大したものよ紗耶香は。普通、何かしら感に触ると色々なものが乱れるからね。まぁ、言い訳になるけど私も紗耶香と初めてバトルしたときそうだったわ。何か一人で乱れて・・・。」
「そんな、まだまだ大したことないよ、私は。でも、こうして誰かと走るたびにレビンと一緒になっていくっていうか、何か自分の分身とまでは行かないけど生活必需品みたいな感じになってきちゃった。」
紗耶香は笑いながら少し謙遜した感じで圭に答えると、彼女も微笑みながら紗耶香に言った。
「まあ、いいんじゃない?そうやって楽しいって思えるんだったら。その方が紗耶香らしいじゃない。さて、私は中でその招待券ツアーの話でもしてくるよ。当然行くんでしょ?」
「う〜ん、多分学校も休みだし大丈夫と思うけど・・・。」
「じゃ、決まりね!」
ポンッ!
圭はそう言って紗耶香の肩を軽く叩くと、直後に事務所の中に駆け込んでいった。
「ちょっと、圭ちゃん!勝手に決めないでよ・・・!まぁ、良いか。どうせ大して用事も無いし。」
紗耶香はそう言いながら自分も事務所内で話し込んでいるぴー達の元へ向かっていった。
タイトル強引すぎ(苦笑)