コラム「帰国子女の目」 |
昨年、フレンズ(帰国子女の会)主催のシンポジウムにパネリストとして参加しました。そのことがきっかけとなり、記事を書くことになりました。
朝日新聞の国際衛星版(アジア・アメリカ・ヨーロッパ向け)の「インターナショナルスクエア」という欄にある「帰国子女の目」というコラムです。(1月20日【木】) 残念ながら、海外向けなので、日本では読むことができません。 そこで、ホームページに掲載することにしました。
この記事は、私が海外生活(アメリカ・メリーランド州)を通じて感じたことを書いたものです。
〈コラム・帰国子女の目〉
自分だけの「個性」自由に表現を
私がアメリカ生活を通じて学んだことは、個性を尊重し、自己表現をすることである。これは、自分の特技や趣味、例えば音楽、スポーツ、勉強など、自分が誇りに思える何かを通じ、他の人にはない自分だけの「個性」を表現するということである。
アメリカの高校で接した友人達は、皆それぞれこの「個性」を持っていた。毎年テニスの試合で活躍する人、学校の代表として数学の大会に参加する人、小さな頃からピアノやサックスなどの楽器を続けている人など、自分の誇りとするものを持ち、存分に楽しんでいる姿がとても印象的あった。渡米する数ヶ月前まで受験勉強に追われ、塾通いの生活をしていた私にとって、彼らはとてもうらやましく思えた。
面白かったのは彼らは自分が得意とすること以外に関しては、たとえ結果が悪くてもあまり気にしないことであった。自分の不得意とすることは深く気にせず、その代わりに得意とすることに一層の磨きをかけることによって弱点をカバーしてしまおうという考え方を持つ人が多いように感じた。
私は一つのことを長く続け、誇りに思える何かを身につけることは、自分の持つ魅力を引き出す最もよい方法であると思う。何をするかは全くの自由であり、何でも構わない。言いかえれば、それぞれ何を選択するかは他人と違っていて当然であり、その違いこそが個性であり、すばらしいのだと思う。それぞれの強みを生かし、良いところを伸ばせばよいのである。
私達日本人は、自分の長所を伸ばすよりも、まず欠点を克服することが優先であると考える人が多いように思う。その姿勢も時には必要であるが、あまりに弱点ばかりを気にしていては、自分に秘められた魅力に気付かないのではないか。だれにでも他の人にはない自分だけが持つ個性があるはずである。その個性を自由に表現することが大切なのだ。
【朝日新聞国際衛星版・1月19日2000年(アジア(20日)・アメリカ・ヨーロッパ版)に掲載】