松本左京
VS
王選手


―この対談は、先日某所で行われた、時代を象徴する2人の貴重な対談を誌上再現したものです。 王選手はこの日までに通算799本のホームランを記録、800号を目前にしています。 一方の松本左京も、あと一息で記録を更新しかねない勢いです。 お互い戦うフィールドこそ違えど流石はプロフェッショナル同士。 共感する部分も多かったようです。


王選手(以下、王):左京さん、初めまして。いつもテレビで見てました。

松本左京(以下、左):あ、おはようございます。

王:今日は左京さんのプロ意識を学ばさせていただきたいと思います。宜しくお願い致します。

左:そんな、いいっすよ。(笑)

王:左京さんは、どんなプレッシャーのかかる場面でも、いつも落ち着いてらっしゃいますが、 何か普段から心がけている事などありましたら、教えていた、、、、

左:(王選手の言葉をさえぎるように)そんなの、ないっすよ。

王:そうなんですか?いやぁ、勉強になります。

左:いやいや。(笑)

王:そういえば一度お会いしたら言いたかったことがあったんですが、 僕の一本足打法、実は左京さんのフォームをヒントに完成したんですよ。

左:え!?マジっすか!?

王:僕が荒川コーチに手取り足取りバッティングについて指導していただいた時、 偶然アークヒルズで、片足立ちしている左京さんを見かけたんです。 その時に「あっ!これだったのか!?」って。(笑)

左:そんな、そんな。(笑)

王:言わば僕のホームラン記録の歴史は、左京さんなくして考えられない。どうも、ありがとうございました。 (そう言うと王選手、左京の前で深々と土下座)

左:まあ、まあ。


*参考記録 ホームラン数歴代トップ3(1978年8月9日現在)
選手名 ホームラン数
松本左京
5903本
王選手
799本
ハンク・アーロン
755本


王:(土下座をしながら)今日は大変いい経験をさせていただきました。 またシーズンオフにご挨拶に伺わさせていただきます。

左:わざわざそんな、いいっすよ。(笑)


―それではファンの皆さんに一言お願い致します。

王:(最後まで土下座をしたままで)今日は本当にありがとうございました。 明日からもどんどんホームランを打ちつづけますので、 是非、後楽園球場に足をお運びください。

左:いや、俺はいいっすよ。

―最後に例の合言葉、お願いできますか?

王:左京さん、ご一緒にお願いします。

左:え?俺もっすか?

左・王:ナボナはお菓子のホームラン王です!!

―今日はお忙しい中、ありがとうございました。


―この翌日(8月10日)皆さんご存知のとおり、王選手は800号ホームランを達成しました。 さすがは左京パワーと言ったところでしょうか。 王選手自身も身近の関係者に「昨日左京さんに会えたおかげ」と口にしていたそうです。 これからも王選手、そして松本左京から目が離せませんね。


王選手(おうせんしゅ)
1940年5月20日生まれ(38歳)
早稲田実業時代は投手として、甲子園でノーヒットノーランを達成。 1959年に読売ジャイアンツに入団し、すぐに野手転向。 荒川コーチ、松本左京との出会いが長距離砲としての才能を開花させる。 62年から昨年までの間に15回ものホームラン王を獲得、 ハンクアーロンの持つ最多ホームラン記録(除く左京)を抜いたことからも、 「世界の王」としてファンに親しまれている。





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