第4章 グラナダ GRANADA

「アルハンブラは入場人数の規制があって、週末は事前予約しないと入れないかもしれませんよ。」 同じバスに乗り合わせた日本人親子が教えてくれた。アルハンブラは世界遺産にも指定されている、グラナダ観光の目玉だ。

前日、初めてできたスペインの友達とのおしゃべりが朝の5時まで続いた。慣れないスペイン語で脳みそを酷使し、挙句に睡眠時間2時間でのグラナダでは、思考回路がほとんど飛んでいた。

めずらしく下調べをしないまま現地に赴き、いきなり問題に直面した。「どこで前売りチケットを購入できるんでしょうか」。一人でどこへでもいってしまいそうな、たくましいそうな母親に、自分との共通点を感じながら、グラナダ観光の情報をもらった。

運良く購入できたアルハンブラの入場は4:30と記されていた。現在1:00。4:30までにそのほか全ての観光地を周り終えなければならない。スペイン特有の大迷惑習慣、シエスタ(1:30−3:30まで飲食以外の全ての店や観光地が昼休みのため閉まる)の時間を考慮し、観光スケジュールを組み立てた。

最初の観光地、カテドラルに入る。25M以上もあると思われる天井を、首が痛くなるほど見入り、持参したガイドブックの説明を何度も読み返しながらカテドラル内を観光した。

先程大声でスペイン語を話していた男性が、30人ほどのグループを連れ、天井などを指差し、説明をしていた。少しは分かるだろうと思い、その説明を横で数分聞いていたが、何一つ理解できなかった。自分のスペイン語の能力のなさにがっくりとしながらも、そこを離れようとして気付いた。ドイツ語だった。

次にアルバイシンへ向かった。ニコラス展望台からのアルハンブラの眺望を見るため、睡眠2時間で膨れ上がった足を引きずりながらもたどり着いた。たいした感動も覚えず、仕事のように撮影を終了し、次の観光地、サクロモンテへ向かった。

サクロモンテへ向かうには一度アルバイシンの丘を降りてからさらに登る必要がある。高いところを見つけると登りたいという衝動を押さえきれず、さらに1時間、坂を登った。

ふと周りを見渡すと、菜の花が咲き乱れ、丘からはグラナダの町が一望にできた。

グラナダもいいところじゃないか、、、、。あまりの疲労に、グラナダの印象が悪くなっていた所でふと周りの景色の美しさに気付いた。

心に余裕ができてきたのか、鳥のさえずりや、葉擦れの音などが耳に飛び込んできた。が、それは1分と続かず、また、疲労の世界へと引き戻されていった。

アルバイシンへ着いたころには、言葉も出ないほど疲れ、世界遺産を観光する気持ちには到底なれなかった。

ふと前方を見ると、日本人が20人ほどカメラを持ち、添乗員の後ろをぞろぞろと歩いていた。さりげなく距離を置きながら後ろについてき、説明を聞こうとしたが長くは続かなかった。現地添乗員が建物の音響の良さを証明するために、さくらさくらを合唱することを提案したのだった。20数名の日本人観光客は、恥ずかしそうに歌っていた。

アルバイシン見学に2時間30分も費やし、やっと全ての観光が終了した。

グラナダはどうだった?月曜日には皆に聞かれるだろう。バスの待ち時間を利用し、デジタルカメラで撮影した観光地をプレビューしながら、「疲れた」以外のグラナダ観光の感想を探していた。

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